第1回 ファン減少の企業もあるってホント? これがFacebookページの立て直し方
第2回 「エンゲージメント率向上」は中間目標…、分かっちゃいるが最終目標
第3回 「顔出し写真」でファンと親近感…、そう思ってたら、ファンが減った
第4回 ついやってしまう「ソーシャルメディア専門家」の登用

 前回でみたKPIの1つとしてエンゲージメント率を据える企業は少なくない。投稿へのいいね!数とコメント数を合計してファン数で割った指標のことである。しかし、Webサイト制作・運用のメンバーズのエンゲージメントラボ所長の植木耕太氏は問題点も指摘する。

 「KPIにエンゲージメント率を設定するのは正しいが、それを高めることばかりに注力するあまり、企業の最終目的とは関係ない、(あいさつなど)一般的な投稿ばかり増えることがある」

 目的と手段のはき違えとはまさにこのこと。KPIはあくまで中間指標と再認識した方がよさそうだ。

【東急ハンズ】いいね!が多い商品と売れる商品をバランスよく

 Facebook活用の先進企業として知られる東急ハンズは今春、注視すべき指標を見直した。契機となったのは、特集冒頭で触れたファン減少だった。

 「何もしなくても、毎日約1700人のファンが増える。それは、ボーナスみたいなものだった」。ITコマース部EC企画課ディレクターの緒方恵氏は、推薦枠の効果をこう振り返る。枠から外れた瞬間は、社内に危機感が漂った。

 だが、すぐに頭を切り替えた。東急ハンズのソーシャルメディア運用の理念は、「ファンに対して愚直にインタレスト(興味関心を引く商品情報など)を届けること」(緒方氏)。そうした活動を通じて既存ファンとの信頼感を醸成すれば新規ファンがつく。その原点を改めて見つめ直す時と切り替えた。

 幸い、投稿が届いた人の数を示す「リーチ数」は増加傾向にあった。ファンとのキズナが、徐々に深まりつつあることにほかならない。

 以前はファン数をFacebookページのKPIに据えていた。が、推薦枠を外れてからは、リーチ数をより重視するようになった。エンゲージメント率はリーチ数増加のためと位置づけた。ファンにいいね!やコメントをつけてもらい、投稿内容の質を向上させることがリーチ数の上昇につながるからだ。

 Facebookでは、友達や登録したFacebookページ発の情報を集約した画面である「ニュースフィード」に流れてくる投稿に対して、利用者がいいね!やコメントなどを頻繁につける友人は関係が深いと判断して、投稿が優先的に表示される。裏を返せば、いいね!やコメントが少ないと関係が薄いと判断され、情報が届かなくなる。

エンゲージメント率を高めるべき理由

いいね!は多いが購入にはつながらない投稿例

 そこで、重視するリーチ数、そしてサイト誘導数を高める秘訣が、話題になりやすい商品と、東急ハンズの熱烈ファンに響きやすい商品をバランス良く投稿することだった。例えばドアノブカバーの紹介では商品写真を載せるだけではなく、子供がドアノブに頭をぶつけても安心との様子を「before」「after」2点の写真で紹介した。この投稿は、商品自体よりも「子供の表情がかわいい」「演技がうまい」など、モデルが話題を呼んで1000を超えるいいね!、100件を超えるシェアがついた。

 話題になり、エンゲージメント率が高くても売り上げに結びつくわけではない。むしろ、いいね!の数は300件程度の商品であっても、コアなファンに響くような商品の方が、通販サイトでの販売という最終成果につながる件数も多いという。見極めが重要だ。

【楽天】サイト流入と売上高を注視、ペルソナ描き、投稿を最適化

 29万人超のファンを持つ楽天市場のFacebookページも推薦枠からの除外でファン数が減少。ただ楽天は、大型キャンペーン「スーパーSALE」のFacebook連動や、複数の指標を注視しながらの投稿内容改善によって、6月にはファン数を増加に転じさせた。

 同社が着目する指標は「サイト流入数」と最終的な「売り上げ」。このサイト流入数を増やすためのKPIに「ファン数」と「エンゲージメント率」を設定し、5月から投稿を改善している。そのポイントは2つある。1つが投稿頻度の調整だ。投稿内容はキャンペーンや商品紹介で変わりないが、1日4~5回だったものを2回程度に減らした。

 実は3月のFacebookページのデザイン変更で、ファン登録の解除が容易になった。投稿は売り上げを増やす「好機」になるが、受け手の興味関心に沿わないとファン解除の「危機」にもなる。そこで重要になるのが投稿内容の最適化だ。同社はFacebookと楽天市場会員IDを連携させており、Facebookから流入してきた人が何を見て、何を買ったかを子細に分析している。「そこから、こういう人が多いだろうというペルソナをFacebook、Twitter、mixi、Google+で複数作り、好みそうな情報を投稿していく」(楽天市場事業企画部メディア戦略グループリーダー山岡まどか氏)のだ。

 Facebookでは30代~40代の男性を中心にしつつ、時折女性に向けた投稿も交える。mixiユーザーには、ランキングに登場する話題の商品がウケるのに対して、Facebookでは流行を先取りした商品がウケる傾向にあるという。こうした投稿改善で、いいね!、コメント、シェアなどの反応数を従来の1.5倍以上に増やした。

 この2社のようにネット通販を展開する企業なら、売り上げという最終成果を指標に置くので成果は分かりやすい。一方、ブランディングを目指す企業では、KPIとしてエンゲージメント率を使うのは正しいことだ。

 前出のメンバーズ植木所長は投稿戦術を定める上では、エンゲージメント率向上の投稿と、最終目標に沿った投稿のバランスが大切と説く。メーカーなどの場合、新商品情報は企業本来の目的に沿うが、エンゲージメント率が低くなりがち。そこで、反応がいい時事ネタなどを織り交ぜつつも、新商品情報の投稿の反響を高めるよう改善していく必要がある。次のパートではメーカー、金融、教育といった企業の投稿内容の改善策を掘り下げていく。

投稿のエンゲージメント率が高く、企業に関係が深い投稿が理想

第1回 ファン減少の企業もあるってホント? これがFacebookページの立て直し方
第2回 「エンゲージメント率向上」は中間目標…、分かっちゃいるが最終目標
第3回 「顔出し写真」でファンと親近感…、そう思ってたら、ファンが減った
第4回 ついやってしまう「ソーシャルメディア専門家」の登用