味の素は7月11日、レシピサイト「レシピ大百科」にコミュニティ機能などを新たに加えて「AJINOMOTO PARK」に刷新する。味の素が、商品ブランドごとに持っているファンを1カ所に集めることで、ほかの商品にも関心を持ってもらうのが狙い。レシピを軸に、コメント投稿といったコミュニティ機能を添えることで、同社全体のマーケティングプラットフォームを構築する。
「商品ブランドには自信があるが、企業としてのブランドが弱い」
食品事業本部家庭用事業部の津布久孝子品質・広報グループ長は、新サイト開発の背景をこう語る。調味料の「味の素」のほか「ほんだし」「クノール」「Cook Do」など様々なブランドを同社は展開している。が、「各ブランドと味の素がイコールで結びつく人は残念ながら少ない」(津布久氏)のが課題だ。

現状、ブランドごとに点在しているファンを新サイトに集める。このサイトの会員として、向こう5年で300万人の獲得を目指す。その際にベースとするのが、現在約50万人が登録している「Club AJINOMOTO」だ。これを新サイトに統合する。また、クノールにも会員組織があるが、こちらは存続させつつ、登録済みのメールアドレスなどの情報で、新サイトを利用できるようにする。
11日には、これら既存の味の素の会員組織の登録者向けに新サイトからの情報提供を始める。新規会員受け付けは、25日以降となる。
今晩のメニューをレコメンド
新サイトの会員になると、レシピへのコメントや評価などができるようになる。そうしたサイト上の行動を繰り返すことでレコメンド機能が洗練され、より自分好みのレシピをお薦めしてもらう確率を自身で高めることができる。今日の夕飯に迷った時、このお薦めレシピを見れば、恐らく自分が好きな料理ができ上がる。味の素としては、ブランド横断型の商品提案ができるメリットがある。
また、会員同士が食やレシピをテーマに交流する掲示板や、味の素が投票を呼びかけるページ、味の素の開催するイベント参加者にレポートを書いてもらうページなどを用意する。非会員は閲覧ならできるが、参加はできない。これらのサービスで、味の素と会員、または会員同士、それぞれの方向で対話の活性化を狙う。
さらなる利用促進のため、ポイントシステムも用意する。レシピにコメントしたり、他の会員のコメントを評価したりすることでたまっていく。ためたポイントは会員限定のプレゼントキャンペーンなどに使えるようにする。
集客にはサイトで応募できるキャンペーンを活用する。味の素では、1年に約300件のキャンペーンを実施している。多いときは1万人を超える応募が寄せられるという。「平均して5000人とすれば、強力な集客手段になる」と津布久氏はみる。
新サイトの開設後は会員登録を条件としたキャンペーンも展開する。また、会員登録をしていれば、個人情報を入力しなくても、簡単に応募できる仕組みも用意するなど、次第に利便性を高めていくことで、会員登録のメリットを打ち出す。
ただし、こうしたメーカー系コミュニティサイトは成功のハードルが高いのも事実。例えばヤマサ醤油はかつて、レシピを軸としたコミュニティアプリを提供したが、会話が盛り上がらず閉鎖に至ったことがある。対話を、利用者同士に任せてしまったことが敗因だった。その後、自社もコミュニティに参加することで事態を打開した。果たして味の素は、メーカー系コミュニティサイトの“正解”を導き出すことができるだろうか。
津布久孝子氏の肩書きは正しくは、味の素の食品事業本部家庭用事業部の品質・広報グループ長でした。本文は修正済みです。[2012/7/11 16:15]