デジタルマーケティングに本腰を入れるために、Webサイトの全面刷新をやめる。そんな決断を下したBtoB(企業間)系の企業を紹介したい。
岩崎電気をご存知だろうか。道路や公園、商業施設、学校などに設置する照明器具のメーカーだ。光を応用した殺菌システムや植物の育成システムなども開発している。取引先は照明器具の問屋だけで、そこを通して、建設業者や工務店が製品を仕入れる。典型的なBtoB系の会社である。
製品単価が高く、営業担当者による人的な販売手法が色濃く残るBtoB企業は、デジタルマーケティングへの対応が遅れているといわれる。しかし、岩崎電気は徐々に自社サイトを中心としたデジタルマーケティングに本腰を入れつつある。
とはいえ、サイトを思い切って全面刷新したわけではない。今回の変更では、そうしなかったところに同社の新しい戦略が見て取れる。

「これまではまず予算ありきで、なんとなくサイトが古くなったから刷新するという考えだった」(広報宣伝室の新井隆之主査)。刷新前のサイトを完全になくして、新たにサイトを開設するスクラップ・アンド・ビルド方式でのサイト刷新を繰り返してきた。しかし、これでは刷新前のサイトの良し悪しが全く分からず、効果を高めるためのPDCA(計画、実行、評価、改善)も回せない。
そこで、毎回サイトを全面的に刷新するのではなく、アクセス解析を通じて少しずつ最適な形に変えていくことに変更した。その中で、どうしても必要な場合にだけ、全面刷新する。より戦略的にWebサイトを活用する方向へと方針を改めた。
ナビ改善で問い合わせ22%増
今回の刷新では、まずサイトのデザインと、サイト内の導線設計を改善した。以前のサイトでは、訪問者をまずサイト上部にあるグローバルナビゲーションから、「照明分野」「光応用分野」といった大カテゴリーのページへと誘導する。次に、その大カテゴリーページに並ぶ中カテゴリーのページへと誘導して、製品一覧ページから必要な製品を選んでもらう。こんな設計だった。

新しいサイトでは、サイト上部のグローバルナビゲーションにマウスカーソルを合わせると、ボタンの領域が広がり、中カテゴリーの一覧が表示される方式に変えた。これにより、トップページから、中カテゴリーページへと直接アクセスできるようになった。
その結果として4月は前年同月比で、照明分野という大カテゴリーページのアクセス数は半減して、中カテゴリーページのアクセス数は55%増加した。実に、カタログ請求数は46%増、問い合わせ数も22%増加した。
「当社の顧客は目的の製品を決めた上でサイトを訪れることが多く、欲しい情報に少しでも早くたどり着きたい傾向にある」と新井氏は言う。サイト刷新によって、余計なページを経由せずに、目的のカテゴリーへすぐに進めるようになったことから、問い合わせの増加につながったと分析している。今後も、利用者目線でのアクセス解析で、小さな改善を繰り返していく考えだ。