FacebookページやTwitterの公式アカウントを活用したマーケティング手法は、国内でも根付き始め、数十万人を超えるファンを集める企業も増えてきた。この集まったファンをどう顧客化、あるいは優良顧客化していくか。多くの企業が、ソーシャルメディア活用を次の段階へと進めたいと思っているのではなかろうか。

 「手間をかけてFacebookページでファンと交流している、その意味を社内に示すため、ビジネスとしての結果がほしかった」

 こう語るのは、アパレルブランド「GAP」の製造・販売を手がけるギャップジャパンのデジタルマーケティング&CRMブランドクリエイティブの永田龍太郎マネージャーだ。

 同社のFacebookページには約14万人のファンが登録している。そのファンに、いかにして来店してもらうか。そんな問題意識を持っていた。

 確かにFacebookページで対話を続ければ、ブランドに対して、より親近感を持ってもらうことは期待できる。ただ、「当社の強みである接客力、スタッフの笑顔を体験してもらえれば、もっとブランドへの好感度は高まるはず」。永田氏はそう考えた。

Facebookページの「ハイタッチ!でいいね!」

 Facebook上のファンに、実際に来店してもらうためのきっかけを作る。そんな狙いから生まれたO2O(オフライン・トゥ・オンライン)企画が、実店舗で販売スタッフのコーディネートに「いいね!」をできる「ハイタッチ!でいいね!」だ。

 実験的な取り組みのため、まずは旗艦店である原宿店と銀座店の2店舗で、5月31日から6月4日にかけて実施した。

 店舗でのいいね!の総数は892と、期間中の目標とした1000には到達しなかった。が、コーディネートを通じて、Facebook上のファンにギャップジャパンが強みとする接客を体験してもらう、という目的は一定の成果を収めたと同社は感じている。

商品のクチコミが少なかった

 ハイタッチ!でいいね!では、服などのコーディネートに重きを置いている。それはギャップジャパンがアパレルメーカーだからという短絡的な理由ではない。

 永田氏は取材中、「ストーリー」という言葉を幾度も口にした。単に「お店にきてください」ではなく、交流の場がFacebookページから実店舗へと自然とつながるストーリー作りを、最も大切に考えていることの現れなのだろう。

 同社ではFacebookページで、どういった情報を投稿すべきかを探るために、GAPに関するソーシャルメディア上のクチコミ分析に取り組んだことがある。すると、「商品に関するクチコミが圧倒的に欠けていた」と永田氏。店頭でどんな商品を見かけたのか。どの商品が気になっているのか。そうしたことが、ほとんど語られていなかった。

 どうすれば、商品に興味を持ってクチコミを投稿してもらえるのか。様々な内容の投稿を投げかけ、それを分析した結果、「顔の見えるコンテンツがFacebookでは好まれる」(永田氏)ことが分かってきた。ギャップジャパンにおいて、人の顔が見えて、かつ商品情報も伝わるコンテンツ。それがコーディネートというわけだ。

 Facebookではいいね!をクリックしたコンテンツが、その友人にも伝わる。魅力的なコーディネートの写真を投稿して、いいね!の数を増やしていけば、GAPの商品に関するクチコミが広がるとにらんだ。

 永田氏は、原宿店と銀座店のスタッフの協力を得て、コーディネート写真を送ってもらい、Facebookページで投稿している。それが、ニュースなどの投稿に比べて2倍以上のいいね!がつく人気コンテンツとなっていった。約2年間かけて培ったコーディネートを通じたファンとのつながり。ハイタッチ!でいいね!はその延長線上にある施策というわけだ。

 Facebookページ上でいつも見ていたコーディネートを作っているスタッフに会うため、来店してもらう。そんなストーリーから、ハイタッチ!でいいね!は生まれた。

話題度はキャンペーン前の4倍に

 ハイタッチ!でいいね!は、原宿店と銀座店のスタッフが考えた、男女それぞれ3種類ずつ、計12種類のコーディネートの人気度をFacebookのいいね!で競い合う企画だ。ただし、ここで言ういいね!は、Facebookページでのいいね!ではなく、実店舗でのいいね!の数である。店舗でのいいね!の数を基にコーディネートのランキングが作成される。

店頭で店員にハイタッチ

 その仕組みはこんな感じだ。利用者はギャップジャパンのFacebookページで公開された両店舗のコーディネートを見比べて、好みのコーディネートを見つける。次にキャンペーンの参加を事前登録して、対象店舗の店頭でキャンペーンに参加するためのリストバンドを受け取る。

 店舗内で好みのコーディネートを身につけたスタッフに声をかけて、装着したリストバンドとスタッフが持つスマートフォンで“ハイタッチ”をすれば、そのコーディネートにいいね!がつく。

 店舗でのいいね!は、Facebookページ上のコーディネート写真についたいいね!とは、独立してカウントされる。こうしてカウントされた店舗でのいいね!の数で、コーディネートのランキングが決定される。このランキングを、2つの店舗の店頭に設置したデジタルサイネージに表示して、来店者にもアピールした。

 店舗でのいいね!はそのまま、参加者のFacebookを通じて、友人にも伝わる。キャンペーン期間中は、コーディネートの写真を積極的にFacebookページにも投稿した。その結果、Facebook上での話題度という面でも効果が表れた。

キャンペーン開始をきっかけに「話題にしている人」(縦軸)が急増

 Facebookページでは、効果指標の1つとして「話題にしている人」という数値を見ることができる。この数値は、当該のFaecbookページに関してFacebook上に投稿した人の数を示す。この数にはいいね!も含まれる。

 キャンペーン期間中のギャップジャパンのFacebookページを「話題にしている人」の数は、毎日、6000人以上となった。この数は、期間の前週より4倍以上に増えた。恐らく、話題になったことでキャンペーンを知って、店舗に足を運んだ人もいただろう。

 Facebook上でのファンを実店舗への来店につなげたい。そう考える企業に、ギャップジャパンの取り組みは参考になろう。