「アマゾン対抗であれば、どんなことでもやってもいいと、社内で檄(げき)を飛ばしている」

 6月7日、ヤマダ電機が「Facebook」と連携した独自のSNS「ヤマダ電機マルチSNS」を始めることを発表した記者会見で、本誌質問に対して、飯塚裕恭副社長CIO(最高情報責任者)はこう語った。

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 新しい独自のSNSを軸に様々なサービスを提供して、顧客を活性化させ、優良顧客を増やし売り上げにつなげていく考え。運営開始から1年間で、現在300億円ほどにとどまっているネット関連事業の売上を1000億円まで引き上げる計画だ。

 ビックカメラによるコジマ買収劇を見るまでもなく、家電量販業界は今、岐路に立っている。家電のエコポイント制度の終了と、地上デジタル放送への移行によるテレビ販売の反動。業界トップのヤマダも、2012年3月期の売上高は前年同期比で14.8%減の1兆8354億円となった。

 そこに加えて、ネット販売の躍進である。ネットで製品情報を調べ、店舗で実機を確認、そして自宅からネット通販で注文する。消費者の間には、こんな消費行動が広がっているといわれる。こうした消費行動が広がれば、アマゾンの存在感はますます大きくなる。業界トップの危機感も道理だろう。

 ヤマダが打ち出した対抗策が、新しい独自のSNSを軸とした顧客の囲い込みだ。このSNSはFacebookと連携することで利用できる。Facebookへの投稿機能のほか、ヤマダのポイントで利用できるソーシャルゲームや写真投稿共有サービスなど、様々なコンテンツを用意する。それらのコンテンツを利用するたびにスコアがたまる。独自のSNSを通じてFacebookに投稿した場合には、その投稿に対する「いいね!」やコメントの数によってもスコアが加わる仕組みだ。

 今年7月からはスコアがたまっていけば、ヤマダの顧客としてのランクが上がる仕組みを取り入れる。それにより、店頭で商品を買った時にも優遇されるようになる。SNSを使えばそれだけ得になる仕組みを提供することで、ヤマダが抱える2350万人の会員に占める優良顧客の比率を高める考えだ。

 顧客は、年間購入額に応じて6つのランクに分けられるという。各ランクに位置する顧客のうちそれぞれ5%ずつを、1つ上のランクに引き上げられれば、「500億超の売り上げを創出できる」と飯塚氏はそろばんを弾く。

7月から店舗連携を本格化

 「ヤマダだからこそできるネットとリアルの融合となる」

ヤマダ電機の一宮忠男社長

 同社の一宮忠男社長は、独自のSNSに対し、こう言って自信をのぞかせた。同社は今後、ネットと店舗の連携を一層強化していく方針だ。

 その1つが、独自のSNS上で提供するソーシャルゲームと、来店ごとにポイントが取得できるスロットとの連携だ。7月から、このスロットでソーシャルゲームのアイテムを取得したり、ゲーム上で使えるポイントを取得したりできるようにする。

 SNSの普及策にも取り組む。今年の年末に、それらのサービスの利用に適したヤマダ独自のアプリをプリインストールしたタブレット端末を投入する。現在、日本マイクロソフトと共同でアプリを開発中だという。「ヤマダは年間で250万台のパソコンを販売している」(一宮氏)。この販売力を生かしてSNSの利用拡大を狙う。

 一方、アマゾンも今年中にはタブレット端末「Kindle」を国内に投入する予定。また、楽天も「Kobo」でタブレット端末競争に名乗りを上げる。タブレット端末を複数台所有するような人は多くないことが予想されるため、既存顧客に独自のSNSを使うメリット、そしてタブレット端末そのものに魅力を感じてもらえるかどうかが、ヤマダの戦略の成否を左右しそうだ。