※本記事は、「見込み客へ効果的にアプローチ、村田製作所、日本マイクロソフトの例 [検証2]BtoB企業こそソーシャルメディア」の続きです。
最後に、既存顧客との関係維持・強化になりうるソーシャルメディアの使い方を考えてみたい。その可能性を感じさせてくれるのが、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの取り組みだ。
昨年10月、同社は2つのコミュニティサイトをオープンした。ルネサスの顧客企業の担当者同士の技術的な交流のための掲示板サイト「かふぇルネ」が、その1つ。もう1つが、定期的にマイコンセミナーなどの講座を開講する「ルネサス半導体トレーニングセンター」のFacebookページである。
“半導体版・教えて! goo”を展開

「かふぇルネ」は、言うなれば半導体にテーマを特化した「教えて! goo」。つまりQ&Aサイトだ。マイコンをはじめとするルネサス製品について分からない点があった際、逐一カスタマーセンターにアクセスするのも気が引けるし、面倒でもある。運営に携わる同社研修センターの藤澤幸穂主管技師は言う。
「顧客同士で解決できる質問はかなりあるので、手軽に相談できる場として便利に使っていただけると思う。回答がなかなか出てこなかったり、誤った方向に話が進みそうなときは、ルネサス側にいる10人のスタッフから回答します」
書き込むには登録が必要だが閲覧は誰でも可能。Q&Aが蓄積されていくことで、マイコン技術者にとって有用なFAQサイトに発展していきそうだ。

トレーニングセンターのFacebookページは、受講者および受講を検討中の人とセンターをつなぐ橋渡しの役割を担う。Facebookページで管理人を務める同社研修センター営業教育課の齋藤昭博課長は、こう語る。
「半導体の用途が広がったことで、幅広い業種で半導体の知識が求められるようになっている。そこで、勉強の意欲はあっても、セミナー受講には敷居の高さを感じて一歩踏み出せない方に向けて、不安を拭う入り口の役目を果たしたい」
セミナー受講後の質問受け付けや、受講生同士の交流の場としても活用が広がりそうだ。
自社製品ユーザーやセミナー受講者が安心感を持つようなつながりを、ソーシャルメディアで提供することは、顧客の定着、ロイヤルティ向上という面でも力になりうるだろう。
ここまで、認知向上、新規顧客開拓、既存顧客関係強化という3つのテーマでソーシャルメディアが有効に機能することを検証してきた。もうお分かりだろうが、BtoB企業であっても中にいるのは日頃、BtoC的な消費活動をしている一人の人間であり、共感や意思決定のメカニズムに大差はない。
むしろ事業内容に分かりにくさや取っ付きにくさのあるBtoB企業の方が、ソーシャルメディアを活用することで距離が縮まったり理解が進んだりと、得られる実利は大きいだろう。
まずは社内に眠っている営業資料やプロモーション映像を公開して拡散させるところから始めてみてはどうか。市場がグローバル化し、異業種からの参入が相次ぐ昨今、意外なところから引き合いがあるかもしれない。
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