4月18日にオープンし、賑わいを見せる東京・原宿の商業施設「東急プラザ 表参道原宿」。この施設内に、米マイクロソフトの体感型ゲームシステム「Kinect(キネクト)」を使った来店促進策に取り組むショップがお目見えした。アパレルショップ「HUMOR SHOP by A-net(ユーモアショップ バイ エイ・ネット)」だ。
「ZUCCa」や「TSUMORI CHISATO」といった女性に人気のアパレルブランドを展開するエイ・ネット(東京都江東区)と、その子会社でカフェなど新規事業を開発するウィット(東京都江東区)の2社が共同で運営している。ウィットは、親会社が展開するすべてのブランドを扱うEC(電子商取引)サイト「HUMOR(ユーモア)」を運営してきた。このECサイト生まれの初のリアル店舗、それがユーモアショップだ。
Kinectは、マイクロソフトの家庭用ゲーム機「Xbox360」向けに開発されたシステムである。人の動きを感知するセンサーを内蔵しており、体を使った動作でゲームを進めていくことができる。2月1日にマイクロソフトが、第三者もKinectを使えるように開発キットの提供を始めた。それを使ったのがユーモアショップで、マーケティングに利用する。洋服の疑似試着サービスができるようにして、来店を促すのが狙いだ。
店内で写真を撮ってソーシャルへ投稿
疑似試着サービスは、店の入り口付近に設置した大型デジタルサイネージで利用できる。このデジタルサイネージにはカメラが設置されており、その前に立つと、自分の姿が映し出される。床に描かれた立ち位置のすぐ横には、「iPad」が置いてあり、それを操作して商品を選ぶと、デジタルサイネージに映し出された自分に“試着”させてくれる。疑似試着できる商品は約40点を用意している。

デジタルサイネージのすぐ横にあるKinectのセンサーが、人の動きを感知すれば、試着した後ろ姿まで見ることができる。
ただこれだけだと、来店して楽しい程度だと思われる読者もいるだろう。実は、ソーシャルメディアと連携させることで擬似試着の様子を投稿できるようにしてあり、これによって来店を促す効果も期待する。
利用者は商品を“試着”した状態で、iPadのメニューから「写真撮影」を選ぶと写真が撮れ、そのデータは、本人しか見られない形でユーモアショップのサイトに上がる。そのサイトに自分のケータイからアクセスすれば、写真をダウンロードしたり「Facebook」や「Twitter」に投稿したりできる。写真には店のロゴが合成されるほか、ユーモアショップで撮影したことも合わせて投稿される。
ECサイトへの誘導も検討中

投稿写真を見た友人などが、「何これ、面白い!」「使ってみたい!」とソーシャルメディア上で話題にしてくれれば、さらなる来店が期待できるというわけだ。
開発を担当したウィットの新規事業開発室の城口圭氏はこのサービスに様々な可能性を感じている。例えば、利用者に許諾を得た上で、この疑似試着サービスで撮影した写真を店内の別のデジタルサイネージに表示したり、HUMORのFacebookページで紹介したりする企画を始める。顧客と一緒に店を作り上げていくことで、ファンとの関係の深化を狙う。また投稿写真に、自社ECサイトの商品ページへのリンク情報を付加して、ソーシャルメディア上のユーザーをECサイトへ誘導する手法も検討中だ。
疑似試着サービスの企画はもともと、東急の施設内を見て回っている人の興味を引いて、店に入ってもらう狙いから始まった。ただ、「単にデジタルサイネージで映像を流すだけでは難しい。インタラクティブな要素を取り入れて、顧客自身が楽しんでいる様子を周囲にアピールする方が、多くの人の目を引くことができるはず」(城口氏)。Kinect活用は、そんな考えから生まれた。
オープン初日、「(疑似試着サービスには)人だかりができるほどの反響だった」とウィットの大森恵取締役。少なくとも、狙いの1つはクリアする手応えを感じ始めている。