ウェスティンやシェラトン、メリディアン、セントレジスなどのブランドを展開するホテル運営会社の世界大手、スターウッドホテル&リゾートワールドワイドがこの3月、自社の顧客優遇プログラム「スターウッド・プリファード・ゲスト(SPG)」の会員向けにiPhoneアプリの提供を始めた。アプリから宿泊ホテルの検索・予約ができるのはもちろんのこと、ユーザーのホテル滞在予約日が迫っているか、あるいは滞在中かといった状態に応じて表示する内容を最適化し、利便性を高めているのが特徴だ。

プッシュ型サービスで事前告知

滞在前、滞在中など顧客の状態に合わせ情報提供するスターウッドホテルのiPhoneアプリ

 例えば、あるSPG会員がこのゴールデンウイーク、5月3日から6日にかけて東京・白金台のシェラトン都ホテル東京に滞在予約を入れたとしよう。すると滞在2日前の5月1日、プッシュ型通知サービスを送信してSPGアプリを起動させ、画面には都ホテルの概観や客室の画像を表示する。

 メニュー項目には都ホテルの住所、電話番号、現地の天気、ホテルのアメニティなどを配置している。ホテル住所をタップすると、GPS(全地球測位システム)機能で現在地からホテルまでの道順を表示してくれる。

 こうした滞在前に求められる情報を集約した画面が、午後4時チェックイン予定であれば、2日前の午後4時に画面が切り替わり、お出迎え準備モードに入る。ちなみに1ホテルあたり40枚の画像をアプリ用に用意しているという。

 チェックインを終えてホテルに滞在中の会員には、引き続き滞在先ホテルを反映した画面デザイン上に、部屋番号やホテル内外のお薦めレストラン、ホテル周辺情報のほか周辺のイベント、美術館をはじめとする文化施設などのアクティビティ情報を用意。Facebookやfoursquareなどチェックイン機能を持つソーシャルメディアにアプリ内から簡単にアクセスできるようにもなっている。

 チェックイン後、これは通常時の画面ということになるが、SPGのマイページで予約済みの滞在や過去の宿泊履歴の一覧、獲得ポイントや「ゴールド」「プラチナ」といった会員レベルの照会ができる。滞在前・滞在中・滞在後を通して個別にカスタマイズした情報を提供し、ポイントプログラムと一体化することで、顧客とのつながりをより強化し、SPG会員のリピート滞在頻度を高めるのが狙いだ。

 iPhoneアプリをリリースした背景には、モバイル機器からのアクセス増加という事情がある。同社では2011年のモバイル機器からの宿泊予約売り上げが前年比で4倍以上に伸びていた。また、モバイル予約の3分の2は、滞在まで24時間を切ってから予約が入る直前予約客で、この件数は24時間以内のパソコン予約客の3倍に当たるという。つまり旅行先・出張先で近場の宿泊先を探す行動が急増していることがうかがえる。

 スターウッドは、ホテルブランドの買収と新設で2006年以降、セントレジスなどの高級ホテルから、国内未上陸のアロフト、エレメントといった手頃な価格帯のホテルまで、9つのホテルブランドを展開する。その数は世界100カ国、1090ホテルに上る。

 出先で宿泊先を探すSPG会員を他のホテルチェーンにさらわれないように、また自社ホテルチェーンが近場にあるのに見落とされないように、アプリでは検索機能を充実させた。検索ボタンを押すだけで、現在地から近い自社ブランドホテルをリストアップし、地図上に表示する。そのほか、空港コード(例えば成田ならNRT)や地図上からの検索機能も盛り込んだ。

顧客上位2%が収益30%を稼ぐ現実

 アプリのリリースに先立って、同社は特に富裕層向けのSPGプログラムの拡充にも力を入れている。現在、年間50泊以上のプラチナ会員、同25泊以上のゴールド会員が増えており、同75泊以上の優良会員向けに、24時間いつでもチェックインできて24時間客室を使用できる新特典「Your24」を用意した。これにより、プラチナ会員のさらなる利用を促している。

 「優良顧客の上位2%が収益の30%をもたらしている」(日本スターウッド・ホテルの矢島隆彦営業・マーケティング本部長)ため、“上得意客”への優遇強化は同社にとって実利につながる。SPG会員向け特典の強化とiPhoneの利便性の両輪で、会員のリピート滞在を高めていきたい考えだ。

 滞在前から滞在中を経て滞在後までを考慮したアプリの設計は、例えばイベントやテーマパークなどホテル業界以外でも応用が可能な発想と言える。顧客の状況に応じて求められる情報を出しわけ、再来店・来場の動機付けとなるポイント制度を上手に組み合わせることで、顧客のロイヤルティをさらに高めることができそうだ。