ソーシャルメディアをマーケティングに活用する企業は増えているが、どの程度売り上げに貢献しているかを、いかに測定すべきかに悩む企業は多い。そもそも、売り上げに貢献しているかどうかも把握できていないケースも少なくない。

 良品計画はソーシャルメディアで紹介したことで、売れた商品、売れなかった商品の分析に取り組んでいる。メルマガ、チラシ、自社サイトなどで紹介もせず、雑誌やテレビへの広告出稿もしない。そんな商品をソーシャルメディアで紹介して、紹介前日との売り上げ比較をする。他のメディアに一切露出していない商品であれば、ソーシャルメディアでの商品紹介が売り上げに影響を与えた可能性は高いという理屈だ。この内容は、ソーシャルメディア関連イベント「Social Media Week TOKYO」で同社が明らかにしたもの。

 わずか40商品から始まった良品計画のブランド「無印良品」も、今では7000超まで商品点数は増えた。ジャンルは衣類、家電、インテリア、食品など多岐に渡る。それだけの商品に上れば、PRや自社サイトで紹介できる商品は自ずと限られてくる。

 紹介しきれない商品を消費者に認識してもらツールとして、2009年に「Twitter」の公式アカウントを開設してソーシャルメディアのマーケティング活用を始めた。「握手をするくらいの距離感」(WEB事業部コミュニティ担当の風間公太氏)を意識して、フォロワーからの問い合わせには返信をするなど、なるべく対話をするように心がけてきた。

 2010年に開始したFacebookでは、良品計画の企業理念や商品を友好的に使うためのコラムなどを掲載している「くらしの良品研究所」を、同社のファン以外の人にも紹介して、より活性化させることを目的に利用し始めた。サイト訪問者が感想を寄せるコメント欄を、Facebookと共通化させるなどして、Facebook上のライトなファンにもコメントを投稿してもらうことを目指した。

 確かに、くらしの良品研究所の活性化にはつながった。ただ一方で、Facebookの特徴である実名制を意識しすぎて「真面目になって、あまり面白くなくなってしまった」(風間氏)。無印良品の本当の強みは魅力的な商品と店舗のはず。ファンもそうした情報を望んでいる。

 そう考え、Facebookの運用方針を変えた。商品と店舗の情報という無印良品のコアなコンテンツをしっかり訴求していくことを決めた。これが奏功した。紹介する商品によっては、3000近い「いいね!」や100を超えるコメントが付く。

 商品紹介を中核に据えたことで、売り上げへの貢献度も、一部商品で測定できるようになってきた。それを可能にしたのが冒頭した手法である。

前日比で10~300%の売り上げ増のケースも

 その結果、「ソーシャルメディアで紹介すると、前日比で10~300%の売り上げ増につながるケースもある」(風間氏)ことが分かってきた。家電などの高額商品は、さすがにそこまで増加しないことも明らかになった。

「タッチパネル可能手袋」の売上推移。10月14日に紹介したところ、売り上げは前日比63%増に。(すべての数値は10月13日との比較)

 例えば「iPhone」などのタッチパネルを操作できる手袋(1980円)。昨年10月14日の午前中にFacebook、Twitter、mixiページで紹介したところ、この商品の全店の売り上げは、前日比で63%増になった。

 風間氏は、この日に紹介することにこだわった。最新機種として「iPhone 4S」が発売される日だったからだ。「話題と商品の親和性が合致することで、大きな話題になる」(風間氏)。こうした世の中の動きに“便乗”する、したたかな戦略も売り上げ貢献に一役買ったようだ。

 USBポートの付いた電源タップは、Facebookだけでの紹介だったが、前日比2.3倍の売り上げとなった。クリスマス限定商品として発売した、ペンギンの形をしたボーリングのピンのおもちゃは、同43%増となった。

 あらゆるメディアにおける紹介の“谷間”を狙って、ソーシャルメディアだけで紹介し、その効果を測定する。科学的なマーケティングを標榜する良品計画らしい取り組みと言えよう。