ファンケルは1月18日、会社ロゴやスキンケア製品など全面的なブランド刷新を発表した。一般消費者への認知度を高めるため、同社にとってこれまでで最大規模の広告を投下し、またソーシャルメディアの活用によるブランドコミュニケーション戦略を打ち立てる。同時に、EC(電子商取引)サイト、直営店舗、カタログ通販をシームレスにつなぐ販売戦略も発表し、2012年度の売上高をスキンケア製品で前年度比20%増、化粧品全体では10%増を目指す。

 創業から30年以上がたつファンケル。同社にとって化粧品事業の最大の課題は、「ブランド価値の希薄化」(成松義文社長)だった。強みである無添加の価値が、消費者に正しく、深く認知されていないという。その要因を鶴崎亨取締役は「広告、カタログ、ネットなどの顧客接点ごとにブランドの見せ方を変えていたことで、ブランドの輪郭が曖昧になり、希薄化につながった」と説明する。

新しい会社ロゴを紹介する成松義文社長

 長期的に見た時に、この課題を解決しなければ、国内での販売強化と、グローバル市場でのシェア拡大を目指すことは難しいと判断。そこで、自社の原点である“無添加”を中核に据えた強いブランドを作ることを目指して、ブランド刷新に踏み切った。今後は広告やブランドメッセージをグローバルで統一することで「グローバル・プレミアム・ブランドを目指す」(成松社長)。

 新たなファンケルブランドの浸透を目指して、過去最大規模の広告投下によるブランディング施策や、「Facebook」ページなどのソーシャルメディアを活用した情報発信を積極的に展開する。

 ブランド刷新に合わせて、化粧品のうちスキンケア商品を刷新する。「エイジングケア」「アクネケア」といった6つのラインで展開して、3月20日から販売を始める。新製品の販売では、ECサイト、直営店舗、カタログ通販による電話窓口といった販売チャネルをシームレスにつなぐ販売戦略を推し進める。

 こうしたブランド刷新に先駆けて、同社は顧客の購買行動を徹底的に分析した。その結果、優良顧客ほど複数の販売チャネルを、時と場合に合わせて使い分けていることが分かったという。裏を返せば、複数の販売チャネルを有機的につなげるような環境を整えることができれば、優良顧客の増加が期待できるとも考えられる。

 ところが、ファンケルでは「マルチチャネルを持つ強みを生かせていなかった」(成松社長)。そこで、Webサイトを中心に据えながら、複数の販売チャネルの顧客情報を結びつける仕組み「ファンケル パーソナル カウンセリング プログラム」を導入する。

 この仕組みを導入して、直営店舗での肌のカウンセリング結果や過去の購入履歴などの顧客情報を、各販売チャネルで共有できるようにする。それによって、顧客ごとにパーソナライズしたCRM(顧客関係管理)を実現する。

 例えば、ファンケルの直営店舗で化粧液と乳液を購入した顧客がいるとする。その顧客の情報から、これら商品を使い切る直前にメールで再購入を促す。あるいは、その顧客が電話で別の商品の購入を申し込んできた時に、「以前、店舗でお買い求めになった乳液が、そろそろなくなるころではないですか」と提案することも可能になる。

 これらの情報は、顧客もファンケルのWebサイトのマイページで閲覧できる。自分がいつ、何を購入したのか。どのラインのどの商品を利用しているかが一目で分かる。

 また、過去に受けた肌のカウンセリング結果を、サイト上で確認することもできる。カウンセリングはWebサイトや電話窓口でも受けることができ、その結果はWebサイトのマイページにあるカウンセリング結果にも反映される。

 そうして、診断結果を更新することで、今の自分の肌に合った商品を選べるようにする。サイトはタブレット端末やスマートフォンなどのデバイスでの表示にも最適化させていく計画だ。

 ファンケルにとってもう1つの中核事業、健康食品事業についてにも来年1月に刷新を計画している。また、化粧品においてもメーク商品、ボディケア商品などを順次刷新していく予定だ。