
丸ノ内線や銀座線などの東京メトロを運営する東京地下鉄(東京都台東区)は2011年5月から、車両内の広告などを使い、同社が提供するスマートフォン向けアプリの告知に力を入れている。
「ある広告代理店が独自に実施した調査によれば、東京メトロ利用者の約4割がスマートフォンユーザーだった」と、広報部宣伝課の南雲俊通課長補佐は言う。だからこそ、スマートフォン向けのアプリ開発にも力が入る。
同社の広告宣伝の狙いは企業イメージ向上であり、スマートフォンアプリもそこに位置付けられる。例えば、「東京メトロ」というアプリは利便性向上を念頭に開発された。9つの路線すべての運行情報、路線図、各駅の時刻表や構内図、周辺地図などを確認できる。ダウンロード数は40万を超えている。
同社Webサイトのアクセス具合から、とりわけ運行情報のニーズが高いことが分かっていた。そこで、アプリとして提供することで、利用者はわざわざ検索してサイトを訪れる煩わしさが軽減される。「東京メトロ Listen!WONDERGROUND」というアプリは、東京メトロ周辺情報などをラジオ番組として配信する。「雑誌などでは知ることができない東京メトロ周辺の名店などを紹介することで愛着を持ってもらう」(南雲氏)のが狙いだ。
番組は毎日2回更新される。平日の午前には、東京メトロの路線周辺にある隠れた名店などを紹介する。午後には東京メトロ利用者へのインタビューを基に、シナリオライターが物語を制作して、1話完結のドラマのような形で配信している。週末には、ユーザーがアプリ上から回答してプレゼントが当たるクイズを盛り込んだ番組を配信している。コンテンツはエフエム東京と共同で制作している。現在はイメージ向上にとどまるスマートフォンアプリだが、今後は東京地下鉄が運営する商業施設「Echika」などに誘導するO2O(オンラインtoオフライン)を目的とした機能が搭載される可能性もある。
降車から出口までスムーズに誘導
その前段階として、2011年秋からヤフーの地域情報サービス「Yahoo!ロコ」と協力し同サービスのAndroid端末向けアプリ「Y!ロコ 地図」で実験的な取り組みを開始。銀座駅と表参道駅の構内のルート案内サービスで、2012年3月31日までの試験提供となる。
Y!ロコ 地図の利用者は、例えば乗車中の電車の中で、降車する駅名を検索した上で「駅構内図表示」のメニューをタップする。路線名や車両番号、駅の出口番号を入力すれば、構内地図上にルートが示され案内が始まる。
位置情報を利用した機能も提供しているため、自分が駅構内のどこにいるかが画面の地図上に示される。階段を昇り降りして階層が変わった時には、地図が自動的に切り替わる。
また、構内の地図上には同社が運営する商業施設も表示される。店舗名を指でタップすることで、店舗の外観写真や、飲食店であればメニューを表示するといった詳細情報を得られるように、試験提供中に機能拡張する考えだ。こうして情報を取得した人に、割引クーポンを配布する施策も視野に入っており、アプリ更新時の機能拡張を図っていく。