資生堂が2012年4月に開設予定の美容の総合ポータルサイト「Beauty & Co.」(ビューティー・アンド・コー)。開設発表の当初から、他事業会社の参加を呼びかける方針を示しており、このほど同サイトに参加する企業が明らかになった。現時点で資生堂子会社を含む13社の参加が決まっている。
具体的にはJTB、パナソニック、キッチン用品のル・クルーゼ ジャポン、女性向けアパレルのサンエーインターナショナルなどが商品情報を提供する。これらを含めて、4月の開設時には20社が集う予定で、2012年12月末には50社の参加を目指す。

都内で開催された記者発表会で資生堂の高森竜臣常務は、「ネットの普及で情報が爆発的に増えた。しかし、クチコミサイトや情報サイトなどに情報が点在しており、本当に必要な情報を探せなくなっている」と指摘。各業界の有名企業から集めたコンテンツや美容専門家が編集した情報などを集約することで、より信頼のある情報が集まるサイトを目指すと、新ポータルサイト開設の背景を説明した。
また、同氏は「ブランド、機能、素材などで付加価値の持つ商品であれば、高額でも購入するという消費者が増えている。そして、その付加価値に対する期待は高度化している」と説明した。
その期待に応えるために、新ポータルサイトをプラットフォームとして、資生堂1社だけではなく、業種を越えた情報を提供していく。それが、新ポータルサイトの役割となる。
例えば、「美しい髪の毛」を目指したい女性に提案できることは、シャンプーやコンディショナーといった美容商品だけではなく、ドライヤー、髪の毛にいい影響を与えるとされる温泉なども対象になる。新ポータルサイトでは様々な業種の企業を集めることで、そうした切り口を基に、多面的に商品を訴求する。
新ポータルサイトでは「ビューティー」「ヘルスケア」など6つのカテゴリーの下に、先述したようなコラムが並ぶ。それぞれのコラムから、参加する企業が展開するEC(電子商取引)サイトに誘導して、紹介した商品の購入を促す。そのため、既にECサイトを展開している、あるいは2012年4月までに開設する予定であることが参加条件としている。
参加企業からは、購入金額に応じて利用料金を徴収する。ただし、「商品やサービスなど業種が異なるため、企業ごとに個別に条件を決めている」と、デジタルビジネス開発部の笹間靖彦部長は言う。
サイトの利用を促進するために、独自のポイントプログラムも提供する。新ポータルサイト経由で、参加企業のECサイトを訪問して購入につながった場合に、そのECサイトが提供しているポイントとは別に、購入金額に応じて新ポータルサイトで使えるポイントを付与する。このポイントは、プレゼント応募などに使えるようにする予定だ。
そのほか美容専門家のコラムや、商品に対する消費者のクチコミ情報などを掲載する。美容と健康に関連する情報を網羅的に掲載することで、資生堂の顧客以外の幅広い層からの集客を図る。
資生堂の商品、約3000点を販売するECサイト「Sweb」(仮称)については全容が明らかになっていないが、関係者によれば、「チャットを使って提供する、オンラインカウンセリングサービスの担当者向けの研修を11月から始めた」とのことで、着々と準備が進んでいるようだ。
また、Swebの開設を機に、資生堂は既存の流通企業でも同社商品をネット通販できるように、すべての取引先と契約を結び直している。従来の契約ではネット通販を禁じていたが、流通企業が自社でオンラインカウンセリングを提供することを条件に認める方針に切り替えた。
高森常務は「中立的なプラットフォーム」となることを強調。資生堂の競合となる化粧品メーカーも排除せず、サイト利用者にとっての利便性を優先していく方針を示した。ただ、“資生堂色”をいかに消して中立性を確保できるかは、今後の取り組み次第と言えよう。