チロルチョコと言えば駄菓子屋で売られていた一口サイズの10円チョコを思い出す人も多いだろう。現在はコンビニエンスストアを主戦場とし、3cm四方・1個21円のお買い得感から「ついで買い」を誘発。同社の年商は85億円に達している。
そんなチロルチョコが最近、ソーシャルネットワーク上においても存在感を高めている。2011年7月にTwitterアカウントを開設、8月にFacebook、9月にmixiページ、11月にはGoogle+ページも立ち上げた。

新商品の写真を公開すると、「いいね!」はもちろんのこと、「パッケージが可愛い~♪ヽ(´▽`)/」「買わなくちゃ!!!」といったコメントが多数付いて盛り上がる。
一連のSNSフルラインナップ運営を指揮するのは、同社取締役でSNSグループリーダーの松尾裕二氏。創業家の“御曹司”である。大学卒業後、他社で2年間の“修業”を経て2011年4月に入社したばかり。やがて次代を担うことになるだろう松尾氏が入社早々に取り組んだのがソーシャルメディア運営だったのは実に興味深い。

「当社はマーケティングやお客様とのコミュニケーションで他社に後れを取っている面があると感じていました。個人的にmixi、Twitter、Facebookを使う中で、ソーシャルメディアは後れを補うのに有効ではないかと考えたのです」と松尾氏は開設の経緯を説明する。
同社は綿密な市場調査よりも、開発陣が「面白い」と思う直感的なセンスを重視して開発・販売し、実際それが支持されてきた。だが中長期で考えれば実力派クリエイターもやがて退社する。継承しづらい、感性に頼った開発が当たり続ける保証はない。
一方、従来型のアンケートやインタビュー調査ではなかなか本音を探れなかった消費者心理は、SNS上でかなり可視化されつつある。そうしたソーシャルメディアが持つ可能性に魅力を感じた松尾氏は、「ゆくゆくはお客様と直接的なコミュニケーションを通じて商品開発ができたら」と顧客に向き合っていく考えを示す。
各メディアで、投稿へのいいね!やコメントなどのレスポンスが高いのは意外にもmixiページだという。25~44歳の女性がターゲットの大衆向け商品においてmixiの底力は侮れない。
そのmixiページにおいて11月17日、Aさん「チロルチョコで何味が好き?」、Bさん「え~、しいて言うなら○○○かなぁ。だって△△だからね~」というお題を出して回答を募ったところ、110件を超える回答が寄せられた。消費者を突き動かすインサイトがどこにあるのかを探る設問でもある。いきなり言語化は難しいが、コミュニケーションを重ねていく中で、徐々にそれも浮き彫りになろう。老舗駄菓子メーカーの若き次世代リーダーが担うチロルSNSにしばし注目だ。