ソーシャルコマースに取り組むのは何も大手企業ばかりではない。庫や(栃木県那須塩原市)は、チーズケーキを主力商品とするECサイト「チーズガーデン」とFacebookを連携する仕組みを導入し、実績を残しつつある。

チーズガーデンのトップページ。Facebook連携で誕生日が近い知人が表示され、お誕生日プレゼントにチーズケーキを贈ることを促す

 那須で観光客相手の商売をしてきた同社がEC(電子商取引)に乗り出したのは、リピート購入をしたいからネット販売をしてほしいという顧客の声が相次いだことを受けてのことだ。ネット経由の年間売り上げは約3500万円で、まだ会社の売り上げの2%にすぎないが、今後3~5年で会社の柱の1つとする考えだ。

 ネット戦略の中心となるのが、ファン作りである。同社のネット販売は、リピート購入が多くを占める。チーズケーキという激戦区で広告投下などによる体力勝負をするのではなく、気に入って購入してくれた人とのキズナを作り、購入頻度を高めていく考えだ。

 新たに取り入れたのがFacebook上のつながりをECに取り入れられる「Facebookコネクト」という仕組みだ。Facebook利用者が、チーズガーデンのサイト上にある「Facebookコネクトする」というボタンをクリックすると、このサイトとFacebookの個人アカウントの連携を許可するかどうかを尋ねられる。

 「承認する」ボタンを押せば、チーズガーデンのトップページが利用者ごとにカスタマイズされて、「お誕生日プレゼントにもチーズガーデンは最適です」という文言とともに、誕生日が近い友人の名前とFacebookのアイコンが表示される。

 もともと、ECサイトでの購入において、中元や歳暮の時期などでは購入者と送り先が異なるケースも多く、ギフト需要が高いことは分かっていた。そうした、大きなイベントだけではなく、誕生日や昇進といった、個人のイベントに対するギフト需要を喚起することで、売り上げ拡大を狙う。普通に生活していると、友達の誕生日は意外と知らないものだが、こうした仕組みで誕生日ケーキ需要を後押しする。

 導入後、「少しずつ誕生日ケーキを目的に購入する人も現れてきている」と、新規事業開発部の安田準次長は効果を語る。誕生日プレゼントとして利用者により魅力的に感じてもらえるように、特別なパッケージの商品の準備も始めている。今後、友人のアイコンをクリックするだけで、贈りたいケーキと贈り先の入力画面が表示されるように改修していく計画だ。

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