ぐるなびは11月21日、当日限定のクーポンを配信するサービス「ワケあり『得・ぐ』クーポン」を、スマートフォンと従来型の携帯電話向けサイトで、ぐるなびの会員向けに開始する。東京と大阪エリアから始めて、来年3月には全国展開を目指す。開始当初は約800店舗の飲食店が参加する。

 新サービス提供の背景には、共同購入型のクーポンサービスの運営から浮き彫りになった課題がある。同社は、昨年に始めたクーポン共同購入サービスを今年9月30日に終了した。「1年間運営した結果、成果を感じてくれる飲食店は少なかった」と総合政策室広報担当の栗田朋一コミュニケーション・マネージャーは振り返る。

飲食店は、ワケあり「得・ぐ」クーポンを使って当日限定のクーポンを配信できる

 新規開店時や店舗の刷新時などでは、短期的には来店客数を増やせるがリピーターにつながらない。クーポン共同購入サービスが指摘されがちな課題を、ぐるなび自身も痛感していた。

 さらに、「夕食時など、割り引きしなくても来店につながるような時間帯に、席がクーポン利用客で埋まってしまうことがあれば、収益性の低下につながる」と、新クーポンサービスの責任者である企画開発本部新戦略実行局3室の山崎繁幸室長は指摘する。

 クーポン共同購入サービス業界は、老舗が事業見直しを迫られるなど、岐路に立たされている。ぐるなびでは、売り上げを圧迫せずに、より飲食店に効果を実感してもらえるクーポンサービスでなければ、利用してもらえないと判断して、ワケあり「得・ぐ」クーポンを開発した。

大幅値引きできるワケを明示

 新クーポンサービスは、例えば予約がキャンセルになった場合や、突然の大雨で客足が遠のいたといった“ワケあり”の場合に、当日限定でクーポンを配信できる。コースの予約を受けていたのにキャンセルになってしまったので、せめて仕入れた食材分のコストだけでも回収したい。そんな飲食店の悩みを解決できる可能性がある。また、午後9時から予約が入っている席を7~9時の時間限定で大幅値引きするといった使い方もできる。

 21日からクーポンを配布する店舗の中には、「冬のテラス席だから、手洗いの前の席だから、といった条件を工夫してクーポンを作ってもらえている」(山崎氏)など、店舗特有の課題の解決にも役立ちそうだ。

 飲食店はぐるなびの管理画面から、「早めの時間だから」「雨の日だから」「お席を選べないから」といった12のワケを選び、「お会計より50%OFF」「コース料理が50%OFF」「生ビール何杯飲んでも1杯100円」といった22のクーポンメニューを選ぶ。配布枚数、利用可能時間帯などを設定すれば、すぐにクーポンの配布が始まる。ぐるなび加盟店であれば、無料で利用できる。

 また、従来のクーポン共同購入サービスでは、半額など大幅値引きをするにも関わらず、その理由が明示されていないため、ただ安売りしているお店、と思われて店の価値を毀損する恐れもあった。ぐるなびのサービスでは、大幅値引きする理由を提示できるため、「店の価値を守れるし、信憑性も担保できる」と山崎氏は言う。

 クーポンを取得するにはスマートフォンか従来型の携帯電話で、ぐるなびのWebサイトにアクセスする。トップページ張られたバナー広告から、ワケありクーポンを配布している店舗一覧に移動して探したり、GPS(全地球測位システム)の位置情報を利用して、今いる場所の近くで配布している店舗を探したりして、ぐるなび上の店舗ページからクーポンをダウンロードする。店舗で見せれば割引サービスを受けられる。ただし、クーポンを取得するにはぐるなび会員である必要がある。ぐるなびには868万人の会員が登録している。

 現在はスマートフォンと従来型の携帯電話向けのWebサイトのみでの配信だが、来年3月の全国展開をめどにぐるなびのiPhoneアプリなどの対応も進めていく。

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