・・・ネスカフェ ゴールドブレンド100gを安くしたい!理由は「会社に『これじゃなきゃ嫌』というわがままな人がいるから」。【サゲリク】で西友に値下げをリクエスト中。http://www.sageriku.com/ #サゲリク・・・

 ・・・明治 きのこの山 82gを安くしたい!理由は「たけのこに負けるなんて許さーん!!!き・の・こ!!」。【サゲリク】で西友に値下げをリクエスト中。http://www.sageriku.com/ #サゲリク・・・

 今年9月、Twitter上にこんな値下げリクエストと「西友」の文字が数多く飛び交った。その数、1万数千件。「みんなの声で値下げ中!」をキャッチフレーズに西友が実施した、Twitter連動の値下げリクエスト企画「サゲリク」だ。要望のあった商品を値下げしたことで、西友の10月の売上高は前年比大幅増収となった。

西友が実施した「サゲリク」キャンペーン

 キャンペーンの概要は次のとおり。

 9月1日から21日まで、「サゲリク」キャンペーンサイト上で商品データベースの中から値下げしてほしい商品を検索し、値下げリクエストを出してもらう。対象商品は、生鮮・酒・ベビーフード・健康食品などを除く食料品1万点以上。

 リクエストにはTwitterアカウントが必要で、商品を選ぶと冒頭のような商品名入りのリクエスト文が投稿フォームに自動的に表れる。そして、値下げしてほしい理由を追記して投稿してもらう。投票は1アカウントにつき1日10票が上限だ。

 値下げリクエストが100票に達した商品はリクエストが締め切られ、西友側で値下げの検討に入る。その中から値下げ商品100品目を決定し、随時発表。10月13日から11月9日までの4週間にわたって、西友の全店舗で値下げ販売した。

「EDLP」は理解されにくい

 なぜこのようなキャンペーンを実施したのか。その背景には、西友の「EDLP(エブリデイ ロープライス)」戦略が深く関係している。まずEDLPについて簡単に説明しよう。

 「毎週水曜日は冷凍食品がお買い得」という具合に、特売日を設けて集客する一般のスーパーと違って、西友は、株主でもある米ウォルマート流のEDLPを掲げている。毎日が安いという意味だ。特売は、チラシの印刷やPOPの作成、掲載商品の大量陳列、発注を増やす、POSの価格データを修正、特売期間が終わったらすぐに元に戻す…といった手間とコストがかかる。

 特売をしないEDLPでは、こうしたオペレーションコストをかけない分、他店よりプライスダウンが可能だ。魅力的な値づけで販売量、ひいては仕入れ量を増やし、サプライヤーとの交渉力を高めてより安い値づけをしていく。この好循環をつくるのがEDLPの考え方だ。

 だが、そんなEDLPにも弱点はある。西友マーケティング本部の富永朋信本部長は、次のように説明する。

 「いつも安い『EDLP』は、特売と比べると目立ちにくいい、分かりにくいというマイナス面を持っています。そこでこれまで『KY(カカクヤスク)や『バスプラ(バスケットプライス)』といったキャッチフレーズを提唱して、安かろう悪かろうではない、いいものが安いことを訴求してきました。こうした取り組みは一定の成果を得たと思います。ここから、さらに安さを訴求しつつ、いかにして西友を好きになっていただくか。そこで、値下げ商品の決定と価格交渉という、これまで小売とメーカー間で行われてきた閉じた世界に、消費者に参加してもらったら面白いのではないかと考えました」

 店頭に値下げリクエスト用紙と投票箱を置くやり方もあったが、「迷わずTwitterを選んだ」(富永氏)。リアル投票の場合、全店舗に投票のスペースを確保して設置する必要があるほか、そもそも対象商品1万点を候補として掲示できず、また手書きの用紙を集計するのにも負荷と時間がかかる。

 その点、Twitterならばリクエスト投稿が他ユーザーから見えるので、キャンペーンの存在を知って、参加するきっかけになる。自分がリクエストした商品の票数の行方を把握でき、票が伸び悩んでいる場合は自分のフォロワーに向けて投票協力を呼びかける「ヘルプ機能」も用意した。

 牛乳や卵、パンといった必需品へのリクエストはもちろん多かったものの、それにも増して票を伸ばしたのが、「レッドブル」「ハーゲンダッツ」「キリ クリームチーズ」といった、価格がやや高めの飲料・食品だった。また、明治のお菓子「きのこの山」と「たけのこの里」が、抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り広げた。

 飲料・食品メーカーにとっては、「おいしいから」といった理由付きで自社商品の名前がTwitter上でツイートされるため、「『面白い企画ですね』と感謝の声もいただいた」(富永氏)という。

投票で「自分ごと」にして購入意欲を増す

 こうして投票した商品が票を伸ばして値下げが確定すると、「自分が値下げに関与した商品」として店頭に足を運びたくなるもの。値下げ要望という、ある意味わがままなリクエストをすることで、投票者にとって西友が「自分ごと」になるのだ。

 日本チェーンストア協会が発表する月次販売統計では震災以後、特に食料品で前年比マイナスが続いている。そんな中、値下げリクエストに基づいて100品目を値下げ販売した西友は、10月の売上高が前年比2ケタ%増となった模様だ。

 11月9日を持って値下げ販売は一旦終了した。これからTwitterで寄せられた値下げ要望が多かった商品の傾向や、値下げによる売れ行きの変化について分析に入る。

 例えば、レッドブルなどスポーツ飲料としては高額に属する商品は、値下げによって売り上げが大きく伸びることが分かるかもしれない。また、クリームチーズを値下げすることで、値下げしていない食パンが通常より売れるという具合に、関係性の深い商品の組み合わせを新たに発見できる可能性もある。こうした消費者ニーズと実売データを突き合わせることで、より効率的な値下げ戦略が可能になるだろう。

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