※本記事は【前編】の続きです。

 ビックカメラ、大丸、ユナイテッドアローズ、エイチ・アイ・エス…。今年9月からわずか2カ月ほどで、こうした大手店舗が相次ぎ導入したサービスがある。スマートフォン共通ポイントサービス「スマポ」だ。サービスを運営するのは社員10人の小さなベンチャー、スポットライト(東京都港区)である。

 サービスの特長は「位置情報」の活用による店舗集客だ。利用者にとっては来店するだけで共通ポイントがもらえるメリットがある。大手店舗にとってはECサイトなどでしか計れなかったコンバージョン(CV)率が、リアル店舗でも分かる利点がある。O2Oのキラーともなりそうなサービスだ。

 「まず新規顧客の開拓です。スマポに参加する他店のお客様でユナイテッドアローズになじみの薄かった方に来店してもらいたい」

 導入企業の1社、ユナイテッドアローズの経営企画室広報CSRチームの前田由香里マネジャーはスマポ導入の狙いをこう語る。導入企業は各社とも、新たな集客手法として期待をかける。ビックカメラもまず東京都内の4店舗に導入し店内各所にスマポのPOP(店頭販促)広告を掲示して利用を促す。

来店ポイントで確実な集客

 スマポの特長のうち、利用者にとってのメリットである「来店ポイント」から見ていこう。使い方はまず、街中でスマポのiPhoneアプリを起動すると、そこにスマポ対応の店舗が、距離の近い順に一覧表示される。そして、近くの対応店舗に入るとアプリ画面に「Tap」ボタンが自動的に表示される。そのボタンを押せばスマポのポイントがもらえる。店によって異なるが10~30ポイント(1ポイントは1円相当)が一般的だ。2011年内にはAndroid用のアプリも提供される予定だ。

 ユーザーにとって魅力的なのは、店を訪れただけでポイントをもらえることである。ポイント獲得は1店舗では1日1回に制限されるものの、大丸東京店とビックカメラ有楽町店など異なる店舗であればポイント取得できる。ウインドーショッピングするだけでポイントがたまるわけだ。

 一定ポイントをためると、スマポ対応店の独自のポイントと交換できる。例えばビックカメラの場合は100ポイントから同額のビックポイントと交換できる。

スマートフォン共通ポイント「スマポ」を使うと、ECサイト同様コンバージョン(CV)率を把握できる

 導入企業のスマポ利用料は原則、成果報酬型で、固定費や多額の初期導入費はかからない。決められた額を払って何人の集客に結びつくか分からないチラシやフリーペーパーとは異なる。

 しかし、スマポ利用者がポイント取得を目当てに来店しても、何も買わなければ導入企業にとって意味がない。スマポを提供するスポットライトの柴田陽社長は、「目的なく来店した人に商品を買わせる力、それこそが小売企業の実力だと思う」と断言する。ふらりと立ち寄った客を買う気にさせる。そうした売り場づくりが勝負になる。

 売り場づくりの参考になるよう、柴田氏はスマポの開発に当たって、店の中の特定の場所だけでポイントを付与する、という技術開発に腐心した。GPS(全地球測位システム)や基地局情報だけでなくWi-Fiで売り場固有のシグナルを発信する装置を置き、入店したことを特定できるようにした。例えば、家電量販店でテレビを売りたければ3階のテレビ売り場でポイントを付与する、といったことが可能になる。

消費者の動向把握し売り場改善

 次に、店舗側のコンバージョン率を見ていくと、売り場の改善支援ツールとしても機能することが分かってくる。

 ECサイトの分析では、サイトへの来訪者数や来訪頻度、購入数や購入者属性、来訪者に対する購入者の比率といった指標を基にサイトを改善し、売り上げを増やしていくのが一般的だ。例えば、来訪者に対する購入者の比率、いわゆるコンバージョン率が1%であれば、それを2%に上げることで顧客獲得単価は2分の1に下がる。

 しかし、リアルの店舗ではこうした改善への取り組みは難しい。そもそも来店者数が精緻に把握できなかったからだ。スマポの利用者が今後増えれば、来店者数の増減傾向が分かる。また性別・年代比、来店頻度といった指標も把握できるだろう。

 消費者がポイント交換のためにスマポと自社のポイントカードを連携させれば、来店時にスマポのポイントを取得した人のコンバージョン率なども分かるようになる。複数の店舗別、キャンペーン別にコンバージョン率を比較して、その値が平均より低ければ、店舗内の導線、品ぞろえ、接客など、何らかの要因が悪かったと推測できる。ECサイト同様の改善手法が可能になるのだ。

 スポットライトの柴田氏は、「2012年3月までに全国展開したい。そのため大手企業と交渉をしている」と明かす。導入店舗の広がり、ユーザー数の増加の両輪が回り始めれば、増加ペースは一気に加速し、O2Oマーケティングの有力手法として注目を集める可能性がある。

米国版スマポは250万人が利用

 スマートフォンを使った来店共通ポイントの“先輩格”ともいえるのが、米ショップキックだ。店舗内に入ったり、指定商品のバーコードをスキャンしたりすればポイントがたまる。来店検知の技術がスマポと異なり、専用機器を店頭に設置して人には聞こえない音を発信し、それをスマートフォンのアプリが検知すれば来店と認める。

 サービス開始は2010年8月で、米ディスカウントストア大手のターゲット、家電量販大手のベストバイ、百貨店大手のメーシーズなどが導入済み。今年3月にアクティブユーザーは100万人に到達し、11月には250万人以上と急拡大している。こうした位置情報を使いO2Oマーケティングに活用できるネットサービス、スマートフォンアプリは多数登場している(下表)。

位置情報を使い店舗集客に活用できるスマートフォンアプリ

 また、商品名で検索すると近くに在庫を持つ店舗をリストアップする「Google ローカルショッピング」も位置情報を活用したサービスの一例。欲しい品物が今日確実に手に入ると分かれば、店舗に足を運ぶ人も多いだろう。東急ハンズ、ブックファースト、マツモトキヨシ、ヨドバシカメラ、無印良品などの店舗が対応しており、今後ローソンの在庫も検索可能になる予定。

 米国では、オークションサイト大手のイーベイが在庫検索サービスの「Milo」を買収し、「eBay」のサイトで商品を検索するとネット販売の新品と中古品に加え、店頭販売商品の価格も比較できるようにした。日本でもこうしたサービスが広がる可能性がある。

【後編】に続きます。