良品計画は11月15日、一般消費者が同社のサイト上に仮想の棚を持てるソーシャルゲーム「MUJI LIFE」を開始した。既に約5000人が“棚”を作っている。毎日MUJI LIFEを訪れたくなる仕組みで顧客との接点を増やし、ファンとのつながりを強化する。集めた声のプラットフォームになる「my MUJI」を使ってクチコミ内容を分析することで、「欲しいけど買わない」理由まで予測できるようになってきた。

仮想の棚を持てるソーシャルゲーム「MUJI LIFE」

 ゲームのMUJI LIFEを利用するには、まず「Facebook」「mixi」「Twitter」といったソーシャルメディアのアカウントのいずれかと連携する必要がある。登録すると利用者1人ひとりに仮想の棚が与えられる。この棚に、デジタルアイテム化された「無印良品」の商品を並べたり、ゲームの中で取得できる「Amazonチケット」を使って「Amazon.co.jp」で販売されている本やCDのパッケージを並べたりできる。

 このデジタルアイテムやAmazonチケットが入った段ボールが毎日、朝昼晩の3回ゲーム上に届く。どんなアイテムが届くかはゲームにアクセスするまで分からない。定期的にMUJI LIFEを訪れて、アイテムを手に入れることが、棚を充実させるための手段となる。こうした仕組みで、MUJI LIFEへの毎日のアクセスを促す。デジタルアイテムはゲームの開始時点で50種類を用意した。

12月には店舗連携を開始予定

 また、棚の最上段の一番左にはゲームのメニューとなる3冊の本が並んでいる。デジタルアイテムを選んで棚に並べるための「ITEM LIST」、友人知人がコメントを残せる「COMMENT BOOK」、そして、MUJI LIFEと連携しているソーシャルメディア上の友人をMUJI LIFEに招待できる「ADDRESS BOOK」である。

 このリストの中に、既にMUJI LIFEを利用しているユーザーがいれば、その友人にデジタルアイテムを送ったり、その友人の棚を見たりできる。アイテムからは、自社ECサイト「無印良品ネットストア」の商品ページにもアクセスできるため、友人の棚を見て気になった商品があれば、それをクリックすることで、同社ECサイトで買うことも可能だ。

 ただ、数が限られる無印良品のデジタルアイテムだけでは、棚に個性が出しにくく、すぐに飽きられてしまう恐れがある。それを回避するために用意したのが、先述したAmazonチケットだ。Amazon.co.jpで販売されている中から自分の好きな本・CD・DVDを並べられるため、個性を出しやすい。

 このチケットの入手手段は限られており、毎日届く段ボールで、運良く手に入れるしかない。「Amazonチケットが容易に手に入ると、CDやDVDばかりが並んて、無印良品の商品を並べてくれなくなる恐れがあるためだ」(企画室環境広報担当の小塚文成氏)。

 デジタルアイテムも、実際に使っているような疑似体験ができるようなものもある。例えば、Facebookと連携してMUJI LIFEを利用していれば、MUJI LIFE上のデジタルフォトフレームを開くと、その利用者がFacebookに投稿した写真がランダムに表示される。CDプレーヤーでは曲を選んで再生できる。

 今後は、MUJI LIFEから店舗に誘導するためのO2O(オンライン to オフライン)マーケティングにも取り組んでいく。活用するのは「iPhone」だ。12月中旬に、MUJI LIFEのiPhoneアプリの提供開始を予定しており、これは位置情報を活用したものになる見通しだ。

 このアプリを使って、無印良品の店舗でチェックイン(登録)すると、限定のデジタルアイテムやMUJI LIFE上のCDプレーヤーで再生できる楽曲などをもらえるようにする。

「ほしい!」「持ってる」ボタン

 注目すべきはMUJI LIFEがソーシャルメディア上ではなく、自社サイトで展開されている点だ。ソーシャルメディア上のソーシャルゲームや、「Fコマース」と呼ばれるFacebook上のEC(電子商取引)が注目を集め始めているのに対して、良品計画ではその逆の発想で「自社ECサイトのソーシャル化」を進める。

 顧客の声や、MUJI LIFEのiPhoneアプリで登録した位置情報を収集する際に、ソーシャルメディアなどの外部サイトに出ていくのではなく、いったん自社のプラットフォームにそれらを集める。その上で、こうした声などを外部に広げていった方が効率的との考えだ。そんな戦略から、あえて自社が持つサイトというオウンドメディアにこだわっている。

「ほしい!」「持ってる」でつながる「my MUJI」

 ファンの声を集める、クチコミのプラットフォームとなるのがソーシャルコマースサイト「my MUJI」である。無印良品ネットストアと連携したサービスだ。今年8月末の開始から約2カ月で7500人が利用している。

 my MUJIを利用する場合にも、ユーザーはFacebookなどのソーシャルメディアのアカウントのいずれかを連携する必要がある。

 MUJIの開設に合わせ、無印ネットストアの商品ページでは、従来のクチコミ機能に加えて、クチコミ投稿時にmy MUJIで連携しているソーシャルメディアにも同時投稿できるようにした。多くのサイトが導入しているクチコミは、そのサイトに閉じた情報だったが、外部のサービスを通じて、そのユーザーの友人や知人にまで「声」が広がることになる。このクチコミの投稿数は、約2カ月で2000件超となっている。

 もう1つ、無印良品ネットストアに加えた新しい機能が、「ほしい!」「持ってる」ボタンだ。欲しい、あるいは自分が持っている商品について、ボタンを押せる。

 こうした情報はすべてmy MUJIのトップページなどに集約される。このトップページにはFacebookのような掲示板があり、クチコミや、ボタンを押した商品の情報がずらりと並ぶ。

 Twitterと似たフォロー・フォロワーの仕組みもある。自分と趣味の近いユーザーをフォローして、その人がどんな商品を欲しがっていて、どんな商品を買ったかを見ることもできる。

 これまで知らなかった無印良品の商品を知ってもらえる可能性が増えることは、同社にとって重要な意味を持つ。「当社の顧客は特定のカテゴリーが好きな人は、ほかのカテゴリーの商品を購入しない傾向にあるんです」と小塚氏は言う。例えば、インテリア用品をよく購入する人は、電化製品はあまり購入しないといった具合だ。友人知人のほしい!、持ってるを通じて、これまで知らなかった無印良品の商品との出会いが増えることが期待できる。

無印良品が敬遠される理由を把握

 「当社はもともと『モノづくりコミュニティー』といった、ユーザー参加型の商品開発にも取り組むなど、“モノ”を介して顧客と対話してきた」と奥谷孝司WEB事業部長は言う。商品をきっかけとしたコミュニケーションを、my MUJIを通じてCtoC(消費者間)まで広げてファンとファンの結びつきを強める。ひいては新しい商品の発見などの販促効果へとつなげる考えだ。

 同社が狙っているのは、CtoB(企業向け)の情報を集めること。つまり、消費者の率直な声を良品計画に吸い上げることだ。だから奥谷氏は、「必ずしも自社ECサイトでモノが売れなくてもいい」とまで言う。例えば、防災セットについて多くの人が欲しいと言っているにもかかわらず、それほど売れていないといった、消費者の気持ちと売れ行きのギャップが明らかになるといったデータも出てきている。

 同社の防災セットは1万2000円だが、他店では1万円を切る値付けをしていることが多い。欲しいとは思いつつも、良品計画の商品は敬遠されてしまっているのではないか、といった予測ができるようになった。

 今後は、my MUJIを通じてファンが投稿したクチコミを、本人のアカウントだけではなく、良品計画のFacebookページにも載せる仕組みを考えていくという。「Facebookは双方向と言われているが、結局は企業からファンに対して情報を伝えるBtoC(消費者向け)にとどまっているページが多い」と奥谷氏は指摘する。

 現在、クチコミを見られるのはmy MUJIユーザーか商品ページを訪れた人、あるいはその投稿者の友人だけだが、Facebookページとの連携が実現すれば、そのページに登録する30万人超のユーザーの目にも届くようになる。企業側からの情報発信だけではなく、ユーザーからの投稿を増やす。そうして双方向の情報発信という、奥谷氏の考えるFacebookページの本当の姿を目指していく考えだ。