あなたも安室奈美恵になれる――。

iPhoneアプリ「Girls Make」では安室奈美恵さんのメークを疑似体験できる

 コーセーが2011年10月に配信を開始した、こんなキャッチコピーのiPhoneアプリ「Girls Make」が注目を集めている。同社のメーキャップブランド「エスプリーク」の製品を使った化粧を擬似体験できるアプリだ。

 コーセーはブランディングを主眼にスマートフォンを積極的に活用している。エスプリークは、2011年3月に立ち上がったばかりのメーキャップブランドで、「ファッション性と機能性を両立させた商品展開を目指している」と、コンシューマーブランド事業部企画部企画一課の光枝一充氏は説明する。

 例えばルージュは2500円前後(実売価格)の中価格帯化粧品で、化粧にもある程度お金をかけられる30代後半をコアなターゲット層とした。それなりの所得があるビジネスウーマンを狙うため、スマートフォン活用に目をつけたというわけだ。

疑似体験はPCよりスマホが簡単

 アプリのウリの1つが、安室奈美恵さんと同じメークを体験できる機能だ。まず、3つの安室奈美恵さんの写真の中から、好きな化粧が施された写真を選ぶ。次に、iPhoneのカメラ機能を使って自分の顔写真を正面から撮影する。すると、画面上に顔写真が表示されるので、タッチパネルの操作で顔や目、鼻の輪郭の位置を合わせていく。最後にOKボタンをタップすれば、最初に選んだ安室奈美恵さんと同じメークを合成した写真ができあがる仕組みだ。

好きな化粧品のジャンルや色を選んで顔写真にメークを施していく

 なお右図のように、「ファンデーション」「アイライナー」「マスカラ」といった化粧品のジャンルを選択し、自分の好きな色を選んで自由にメークを体験できるメニューも用意している。

 コーセーは以前、同様のサービスをパソコン向けに提供していた。年間10万人が利用するなど確かに人気はあった。しかしデジタルカメラや従来型の携帯電話のカメラ機能を使い、正面から顔を撮影して、それをパソコンに取り込んで…といったわずらわしさがあった。そのため疑似体験をしたいというニーズをすべて取り込めていたとは言いにくかった。

 その点、iPhoneアプリであれば、カメラ機能で撮影した写真がそのまま画面に表示されるため、誰でも気軽にシミュレーションを楽しめる。目や輪郭の位置を定めるのも、テンキーによる利用が大半の従来型の携帯電話に比べて、タッチパネルで直感的に操作できるiPhoneの方が楽だ。

 「こだわったのはリアルな質感」と、宣伝部宣伝企画・PR課の丸山悦史氏は言う。化粧のシミュレーションアプリは同社以外にも複数あるが、いずれも化粧品が持つ色をそのまま写真に載せているだけと丸山氏。それでは肌になじませた時の色合いとは異なるため、本当のイメージは伝わらない。より自然な色合いになるように作り込んで、実際の使用感に近づけた。

10~20万部雑誌への広告と同じ効果

 そうした工夫もあって、アプリの提供開始から1週間でダウンロードは3万件を超えた。同社では、同じエスプリークブランドで4月にiPhoneアプリを提供しているが、そちらのダウンロード数は約半年で2万5000件というから、Girls Makeの人気がうかがい知れる。

 好調の理由は、クチコミを促す機能にあるようだ。メークを施した画像を「Facebook」や「Twitter」といったソーシャルメディアに投稿できるのはもちろん、「女子会や合コンで友人同士、あるいは男女で楽しめる機能を盛り込むことでリアルのクチコミ醸成を目指した」と丸山氏。

 それが、通信技術を使って2台のiPhoneをつなげて、メークを楽しめる機能である。この機能を使って、iPhone同士を連携させると、1台のiPhoneにはメークのメニューと写真が表示されて、もう1台にはメークを施す様子が映しだされていく。

 例えば、女友達同士でそれぞれに似合うメークを提案するといった使い方が可能だ。例えば合コンなら、盛り上げ役を買った男性の顔写真を女性が撮影して、画面上の男性の顔に化粧を施してくといった使い方もできる。

 男性が実際の化粧をすることはあまりないだろうが、バーチャルならそれも簡単だ。その“ネタ画像”をソーシャルメディア上に投稿してもらえば、コーセーとしてはさらなる話題の波及が期待できる。

 「Facebookなどでは男女関係なく友人とつながっている」(丸山氏)からこそ、ソーシャルメディアで情報が広がれば、女性だけでなく男性もエスプリークブランドを目にする機会が増える。そうなれば、彼が恋人に「コーセーのエスプリークって化粧品ブランド知ってる?」と問いかけることで、その恋人へのブランド浸透が期待できよう。

 広告効果としてはどうか。丸山氏は「ダウンロードした3万人が全員女性だとすれば、10万~20万部の雑誌に広告を出稿するのと同等の効果と感じている」という。さらに、「雑誌とは異なり、ファンを作りながら継続した深いコミュニケーションも可能になる」と続けた。iPhoneアプリを開発することで、“自社のメディア化”を推進していく考えだ。

■修正履歴
「三枝一充氏」とあるのは「光枝一充氏」の誤りでした。本文は修正済みです。[2011/11/09 22:45]