読者無料セミナー「スマートフォンが拓く次世代マーケティング」報告

【第1部】クルマ離れと家具販売、若年層にスマートフォンでリーチ―トヨタマーケティングジャパン、ニッセンが登壇

 昨日に続いて、日経デジタルマーケティングが10月14日に開催したセミナー「スマートフォンが拓く次世代マーケティング」の模様をリポートする。

Jストリーム配信事業統括本部企画室の竹見嘉洋室長

 第2部最初に登壇したのは、動画配信サービスやリッチコンテンツを使ったソリューションを提供するJストリームの配信事業統括本部企画室長、竹見嘉洋氏。パソコン、従来型の携帯電話、それに加えてiPhoneにAndroid端末と、Web閲覧ツールが多様化する「クロスデバイス時代」におけるコンテンツ設計の重要性を中心に語った。

高まるスマホ対応の重要性

 竹見氏はまず、10月上旬にスマートフォン利用者1200人を対象に実施したスマートフォンに関するアンケート調査の結果を公表した。

 それによると、メールを含めて、スマートフォンでのネット利用時間は1日当たり1~3時間だったのが10代で40%、20代で35%、30代で31%と、若いほど長い。スマートフォンになって変わったこととしては、「気になったことはすぐ調べるようになった」「SNSの閲覧・投稿が増えた」といった回答が多く、操作性の向上や、欲しい情報に容易にアクセスできる利便性が、利用時間の増加をもたらしている様子がうかがえる。

 また、スマートフォンでたびたびアクセスする特定の企業・商品サイトが「ある」人が42%。うち、そのサイトがスマートフォン向けサイトであると回答した人は45%。企業が提供するスマートフォンアプリのダウンロード経験について、「あり」は69%に上った。

 この調査結果から「スマートフォン対応の重要性が高まっている」とした上で竹見氏は、企業がスマートフォンに対応するの際の課題として、OS(基本ソフト)のバージョンが端末によって異なることを挙げた。特にAndroidはバージョンアップが頻繁で、同時期に発売されている端末のOSが機種によって異なっていたりする。一方のiPhoneは、標準ではFlash動画の再生に対応していない。すべての機種で動画を再生できるようにしようとすると、複数の配信フォーマットを用意する必要がある。だからとても手間がかかる。

ASP利用でスマホサイト立ち上げの手間を軽減

 また、コンテンツについても、スマートフォンに最適化したWebサイトを作るか、専用アプリを作るかの選択を迫られる。アプリは操作性の自由度が高く、課金も容易だが、制作コストが高くつき、構築に時間がかかる。

 こうした煩雑さを解消する方法として、竹見氏は同社が用意するASPサービスのいくつかを紹介した。

 まず、携帯電話向けモバイルサイトをスマートフォン向けに変換する「モバイルコンバート for スマートフォン」。既存の携帯サイトの情報をスマートフォン向けに自動変換し、タッチパネル操作などスマートフォンのインターフェースに合わせたサイトを素早く公開できるのが利点だ。

 続いて、パソコン向けに用意した動画コンテンツを、従来型の携帯電話あるいはAndroid、iPhoneといったスマートフォンいずれの端末でも再生可能にする「MobaVio(モバビオ)」。ユーザーの端末からの動画再生のリクエストに合わせて、その端末に合った動画形式に自動変換して再生できるようにする。

 3つ目に、企業が自社サイト上で動画配信サイトを構築できる、米ブライトコーブが開発した動画プラットフォーム「ビデオクラウド」。動画コンテンツの管理・配信からユーザーの視聴動向の分析までを備え、企業動画サイトを手軽に立ち上げることができる。竹見氏は、「サッポロビールなどもこのビデオクラウドを利用している」と語り、その動画コンテンツを実例として紹介した。

 最後に竹見氏はスマートフォン対応を検討中の企業に対し、「既存のモバイルサイトの資産を生かしながら、こうしたASPサービスを有効活用して手間を省き、まずはスマホサイトを立ち上げることを優先するのがよいのではないか」との考え方を示した。

セブン流ECと実店舗の融合を目指す

 このセミナーを締めくくる特別講演に登壇したのは、セブンネットショッピングの鈴木康弘社長。「セブン&アイホールディングスのネット戦略」と題し、同社が描くEC(電子商取引)と実店舗の融合について、現状と今後の展開を語った。

セブンネットショッピングの鈴木康弘社長

 まず流通業の現状について。スーパーと百貨店は90年代後半をピークに売り上げ規模が縮小し、コンビニも頭打ちが続く。一方、BtoC(一般消費者向け)分野のECは急拡大しており、2009年に百貨店を追い抜き、2010年にはコンビニに並ぶ一歩手前まできた。この勢いで2014年にはスーパーを抜いて、小売業におけるナンバーワン業態になる見込みが高いという。

 世界に目を転じると、米ウォルマートは既に自社サイト上で売り手と買い手を結ぶマーケットプレイスを立ち上げ済み。英テスコは今春、動画配信サービス企業を買収し、デジタルコンテンツビジネスに力を入れている最中である。「アマゾンに対抗するべく、世界の大手小売業が積極的にネットを活用したビジネスに本格参戦している」(鈴木氏)。

ネットの売れ筋をすぐさまリアルで展開

 こうした変化を踏まえて鈴木氏は、ネット時代の小売業モデルとして、セブンネットショピングが中核となって、メーカー・卸からの商品の品ぞろえを充実させ、その売れ筋動向をリアルタイムに実店舗にも反映して売り場価値を高める、といった構図を描く。「店頭マーケティングからネットマーケティングへのシフト」(鈴木氏)を重視する考えだ。

 既にこの取り組みは一部で実験的に始めている。コーヒーメーカーの「ネスカフェバリスタ」や、だしの素「千代の一番」など、ECで人気の売れ筋商品をイトーヨーカ堂大森店で展開したところ、通常売り場と比べて20~30%高い販売効率だったという。

 同じくネットでよく売れたみそ煮込みうどんのインスタント食品。こちらは、実店舗では名古屋限定だったが、これを東京の実店舗にも展開したところ売れ行きは好調に推移したという。

 こうして融合するECと実店舗において、消費者のクチコミや、メーカー・専門店のアイデアが飛び交うことで実現する新たな買い物体験を「ソーシャルコマース」として推進していきたいとの考えを示した。

 さらに鈴木氏は、東京都23区内において今年度、1300店舗で設置を予定している店内の無線LANサービス「7SPOT」を、2013年度までに国内のグループ店舗約1万5000店の全店舗で設置することを明言した。スマートフォンなどのモバイル端末を対象にクーポンの配信やスタンプラリーなどの企画で来店を促すことが目的だ。

 7SPOTを設置することで、商品の生産者情報や、カロリー、アレルギー情報の表示、また売り場面積の広い店舗ではモバイル端末にフロアガイドを表示したり、レストランの空席を案内したりといった、店内コンシェルジュ機能も想定しているという。

 鈴木氏は「店舗とネットがつながることで、新しいサービスを提供し、新しい小売業を目指す」と意気込みを語り、講演を締めくくった。

この記事をいいね!する