「10年後の売上高の2割、3割、または4割ぐらいを占めるようにしたい」
ローソンの新浪剛史社長が今年6月の記者会見でこうぶち上げたEC(電子商取引)サイト「ロッピー」が、急ピッチの拡充を続けている。
9月13日にオープンしたロッピーは、ローソンが独自に販売する商品と、ヤフーの「Yahoo!ショッピング」出店者の販売商品を一括検索が可能で、購入者に「Ponta」ポイントを付与するECサイトだ。Pontaは三菱商事系のロイヤリティマーケティングが運営するポイントサービスであり、ローソン店頭でも利用できる。
ECに注力するローソンの狙いは、事業の柱に育てるだけでなく、幅広い商品を提供して、その購買履歴や閲覧動向を把握することで顧客ニーズを精緻に捉えることにある。そのニーズを、店頭での販促、品ぞろえや商品開発にフィードバックすることを目指す。
新浪社長も、購入者の趣味嗜好どころか、年齢さえ正確に把握できないPOS(販売時点情報管理)頼りを脱却して、Ponta会員やYahoo! JAPAN会員の会員属性や利用動向を基にしたマーケティングへ進化させることに期待をかける。ロッピーの利用傾向もその重要なデータとなるわけだ。
「1~2年は我慢の時期」
とはいえ、そもそもロッピーでの物販が軌道に乗らなければ、構想は画餅に帰す。ロッピーには「楽天市場」「Amazon.co.jp」「セブンネットショッピング」など、並み居る強豪に伍して戦い、勝ち抜くことが求められる。決して楽な戦いではない。
運営部門であるエンタテイメント・ECグループiビジネス部の吉田泰治マネジャーも、「この1~2年は我慢の時期だと思う」と覚悟する。商品開発などへの貢献より、まずは顧客の獲得に力を注いでいく。手本となるのがアマゾンだ。「食品、日用品のアマゾンを目指す」(吉田氏)
まず倣い、そして超えるべきは、アマゾンの「品ぞろえ」と「安心感」、「配送」といったサービス面だ。年末商戦を迎える11月、そして年明けにかけてこれらを強化していく。

10月初め時点の品ぞろえは、Yahoo!ショッピング出店者の一部に当たる3000万商品が中心だ。ローソン独自の商品は300~400種類程度にとどまる。米やミネラルウォーターのセットなど、持ち帰るのが面倒で、繰り返し購入する食品が売れ筋だ。
ローソングループとしては10月11日、子会社のらでぃっしゅローソンスーパーマーケットがECサイトをオープンした。生鮮食品、加工品、飲料、菓子、日用品など、らでぃっしゅぼーやとローソンの商品を合計で1000点をそろえる。野菜は注文後に収穫して配送するという新鮮さ、安心さで総合スーパー(GMS)のネットスーパー事業に対抗していく。
11月中には、ロッピーにおけるローソン独自の取扱商品を5万点まで拡大する予定だ。約1万店舗を抱えるローソンの強力な購買力を生かして、プライベートブランド(PB)、ナショナルブランド(NB)の日用品や食品を中心にそろえる。12月には、Yahoo!ショッピングで未取扱の商品を追加して、5000万点の商品規模へ拡大する。
安心面では返品制度を開始する。吉田氏は「食品で返品を受けるサービスは、ほかにはないと思う」と独自性を強調する。11月の開始時点で返品受付は、ローソンが直接扱う商品など一部に限られるが、来年前半にもYahoo!ショッピング出店者の中で一定のサービスレベルを持つとローソンが認定した店舗にも返品保証をつけていく。
次いで配送面。現在は注文の翌日に発送する体制だが、11月には都心部で当日発送、翌日到着の体制を整える準備を進めている。ローソンでは店舗への配送拠点を全国に70以上抱え、毎日3回のチルド便が店舗へ商品を届けている。この資産を生かして個別宅配網を構築できれば、競合を上回るサービスを提供できると見込む。
サービス向上の次にローソンが目指すのは集客力の強化だ。ローソン店頭と連携した集客策を展開していく。吉田氏は「おにぎりを買ったお客様へ、ロッピーのお米割引券を渡すことなどを考えている」と、販促例を挙げる。1日900万人が店頭で商品を購入しており、そのポテンシャルは大きい。
Ponta会員への商品レコメンド
サービス向上、集客の次の段階として狙うのが客単価の向上だ。来年2月にもPonta会員の会員属性、ローソンでの購買情報を基にした「商品レコメンド」をロッピー上で始める予定にしている。Ponta会員数は約3200万人、その半分がローソンを利用しているという。適切な商品を勧めることで購入頻度、単価を上げて、売り上げの拡大を目指す。
これら矢継ぎ早の拡充をローソン社内で司るのがローソンのiビジネス部。現在25人体制だが毎月、数人の増員を続けているという。まさに、「仕入れ、サイト制作、販促、物流・決済、サポートまで、小さなローソンがあるようなもの」(吉田氏)。

10月11日、らでぃっしゅローソンスーパーマーケットのサービス開始の記者会見に登壇したローソンの加茂正治常務執行役員はローソンのEC事業全体について、「2011年度に500億円のEC取扱高を、2015年度には3000億円にすることを目指す」と語った。大手メーカー、流通によるEC事業参入の動きが活発だが、その中でもローソンの掲げる目標はなかなか壮大でもあり、達成に向けたスピード感も感じられる。向こう4年で、大手ECの一角として名を連ねる可能性もある。