リコーは10月1日、全額出資子会社としてペンタックスリコーイメージングを設立した。リコーのデジタルカメラ事業と、HOYAから買収した「ペンタックス」ブランドのデジタルカメラ事業などを継承する会社だ。

デジタルカメラ日本向け総出荷数(1-8月、カメラ映像機器工業会調べ)

 デジカメ市場、特にリコーが得意とするコンパクトデジカメの国内市場は今、“逆風”下にある。1~8月の国内出荷台数は前年比で12.1%減、さらに出荷金額となると21.6%減という状況だ(カメラ映像機器工業界調べ)。メーカー間で製品の差異化が難しく値崩れが激しいのだ。シェア下位に甘んじるリコーにとって事業環境は厳しい。今年はテレビCMも出稿しておらず、上位メーカーとの差も開きかねない。

 そこに1つの光明が見えた。今夏開催したソーシャルメディア連動型の「みんなのマクロフォトコンテスト」がそれ。コンテストサイトへの集客にTwitterが大きく貢献し、応募件数は同社の通常のコンテストの2倍以上となった。ソーシャルメディアを活用した認知向上策としての可能性を見いだしたといえよう。

 このコンテストは、ソーシャルメディア活用支援のアジャイルメディア・ネットワーク(AMN、東京都渋谷区)が主催し、リコーがスポンサーとなる形で実施した。接写用の「マクロ写真」をテーマに7月25日から8月31日まで投稿を募った。応募作品はAMNが予備審査をした後に、サイトへ毎日掲載していった。

 画期的な点は、ソーシャルメディア連携の投票機能を設けたことだ。応募写真を見た人がTwitterもしくはFacebookにログインした状態で投票ボタンを押すと、作品に一票を投じることができる。リコー賞、審査員賞と並んで投票数で決めるユーザー投稿賞を設け、さらに投票者にも抽選でプレゼントを用意して投票を促進した。

 投票をするとその情報が、投票者のTwitterのフォロワーやFacebookの友達に広がる。会期の後半には、リコーの自社経由でコンテストサイトにアクセスする数より、Twitter経由の方が多くなったという。集客の火付け役はリコーの自社サイトやニュースサイトだが、その後の集客はソーシャルメディアにシフトした格好だ。

応募件数は6500件と通常の2倍以上

 「写真を撮る人は、人からいいね!と言ってもらえるのはうれしいもの」

「みんなのマクロフォトコンテスト」のサイト

 このコンテストを企画したリコーのイメージング・システム事業本部パーソナルマルチメディアカンパニー企画室マーケティンググループシニアスペシャリストの竹内茂樹氏は自身の経験からそう感じていた。ソーシャルメディア連携フォトコンテストなら、審査員に見てもらうだけではなく、多数の人に見て、評価してもらえる。それが積極的な応募を促して応募数は6583件に達した。これは、ほぼ同時期に実施した「第11回リコーフォトコンテスト」(2401件)の2倍以上となる。

 応募数が多かった要因はもう1つある。作品を撮影したカメラをリコー製に限定しなかったのだ。企業の文化事業として開催するフォトコンテストなら当然かもしれないが、プロモーションの一環としてのコンテストでは自社製品に限定して、直接的な製品売り上げを狙うことも少なくない。

 しかし、このコンテストはプロモーション目的ではあるが、他社製品のユーザーも巻き込むことが大切だった。

 「リコーのデジカメは昔から、マクロはすごいと評価をもらっている」

 竹内氏はこう自負する。得意なマクロ写真なら他社メーカーの作品にコンテストサイトが席巻されることはなく、さらに他社メーカーのユーザーにリコーの良さを認識してもらえるはず。そうした目論見があったのだ。

 参加条件をオープンにしてソーシャルメディア通じて広く巻き込む。その結果、応募数だけでなく、PV(ページビュー)は約19万、投票数は7649件と上々の結果を残すことができた。

 この反響を受けて、10月4日には新製品「GR DIGITAL IV」のプロモーションとして、ソーシャルメディア連携型フォトコンテストを開始した。「GR DIGITALは、『最強のストリートスナップカメラ』とも称されるので、ストリートスナップをテーマにする」(竹内氏)。テーマを意識して地図連携機能を加えたり、投票を促進するために写真を鑑賞しやすくサイトデザインを改善したりしている。

短期の認知向上より長期的関係

 今後の課題はソーシャルメディアを通じた長期的な関係構築だ。同社のTwitter活用は、東京・銀座の「フォトギャラリーRING CUBE」(@RINGCUBEgallery、フォロワー数2000人強)、「株式会社リコー PMMC」(@RICOH_Camera、フォロワー数約600人)など一部にとどまる。Facebook活用はまだ検討中だ。

 一方で、今回のコンテストでは受賞連絡のため、「みんなのマクロフォトコンテスト運営事務局」のTwitterアカウントをフォローすることを応募条件にしており(Twitterアカウントを持たない場合は不要)、1800人以上のフォロワーが集まった。

 デジカメのマーケティングにおいては、「単純にマスで広告を打ってもすぐ忘れられてしまう。購入サイクルは3~4年といわれるので、一時的に名前を知られるより、『リコーっていいね』と思ってもらうことが重要」と竹内氏は語る。確かにフォトコンテストのように、深く関わってもらうことでリコーへの好意度向上に大きな効果が期待できる。さらに、フォトコンテストを通じて生まれたつながりをうまく生かせば、買い換え時期まで継続的な関係を築けるだろう。