住宅情報誌「CHINTAI」を発行するCHINTAIは7月に、同名のiPhone向けアプリの提供を始めた。同社は消費者が閲覧するメディアが多様化するのに合わせ、テレビCMや屋外広告といった以前からの広告活動に加えて、デジタル領域でのブランディングにも取り組んでいる。スマートフォンでのアプリ提供はそうしたブランディング活動の一環となる。

 賃貸物件の情報探しは従来、駅やコンビニエンスストアなどで無料配布されている冊子を片手に仲介会社へ電話などで連絡することが多かった。ただ、インターネットの利用が広がったことで、ネットで情報を探して問い合わせをして実際の物件を見に行くケースが主流になっている。そのため、ネット専業の賃貸情報サービス会社も台頭し、競争が激しくなっている。

 こうした状況下、消費者は何を基準に物件探しのサービスを選ぶだろうか。情報量は各社しのぎを削る。多少の好みの差はあるかもしれないが、どこもほぼ十分な量の物件情報を確保しているだろう。たまたま検索サイトで引っかかった、それも考えられる。しかし、いずれも顧客になってくれるかどうかの決定打に欠ける。

 そのためCHINTAIはブランディングに注力することを決めた。サービスの決定的な違いによる差異化が難しいからこそ、「よく見聞きしたことのあるサービス名」は重要になる。

 ブランディングといえばテレビCMや屋外広告などの展開が考えられるが、とりわけ若年層は利用するメディアやデバイスの多様化が進んでいる。だから、「あらゆる機会をとらえてブランディングしていく必要がある」とコンシューマービジネスグループの齋藤敦グループリーダーは見る。だから、デジタル領域でのブランディングにも力が入る。

 その中で、スマートフォン向けのアプリには継続的なブランディングへの貢献に期待を込める。ユニークな機能のアプリを提供することで、今の住宅にぼんやりと不満を持っている、いつか引っ越そうと思っているような潜在的な顧客層にCHINTAIブランドに接してもらう。そして、いざ一人暮らし、あるいは引っ越しを決めた時には、真っ先にCHINTAIブランドを想起してもらい、利用につなげる。そんなイメージだ。

今年1月にスマートフォン専用サイトを開設

 同社がスマートフォンへの対応に取り組みを始めたのは今年の1月。徐々にスマートフォンからのアクセスが増えてきたことを受けて、スマートフォンでの表示に最適化した専用サイトを開設した。

 アプリに先駆けてサイトを開設したのは、テストマーケティングとしての意味合いが強い。アプリの場合、Android向けとiPhone向けにそれぞれ開発や配信の申請をする必要があるが、サイトであれば、開設さえすれば両方のユーザーの動向を分析できる。

 「アプリを作るよりも、専用サイトを開設する方がコストがかからない」(齋藤氏)こともその理由の1つだった。

 ただし、従来型のケータイサイトを自動変換する簡便なツールを利用するのではなく、専用サイトを最初から開発した。「自動変換したサイトでは、正確にユーザーの動向の検証はできない」(齋藤氏)と考えたからだ。コストは抑えながらも、検証は抜かりなく。そんな同社の戦略が見え隠れする。齋藤氏の見込み通り、「アクセス総数に対する問い合わせの比率は、従来型のケータイサイトと比較して2~3割高い」との結果が出ている。

 スマートフォンからのアクセス数は、まだまだパソコンサイトや従来型のケータイサイトには劣るが、投資に対する効果は十分と、同社は認識している。そこで次の段階として、アプリによるブランディングへとフェーズは移っていく。

先発組が有効利用していなかった「マップ機能」に着目

 しかし、先述したように、賃貸物件の情報サービスは激戦区。他社に先駆けアプリを提供することで、いち早くスマートフォンユーザーにアプローチしようという企業は多い。

 NEXTの運営する「HOME'S」やリクルートの「SUUMO」などは既にアプリを提供して、一定のユーザーを集めている。現時点で賃貸物件情報サービス事業者のスマートフォンアプリでは、CHINTAIは後発組に位置する。

 スマートフォンのタッチパネルと相性がいいのが地図機能。意外なことだが、先発数社はこの機能を前面に押し出したアプリの作り方をしていなかった。そこで後発CHINTAIは、地図を中心にアプリを作った。親指と人差し指の間を閉じたり開いたりする動作で地図を広域・詳細に変えれば、道などの詳細情報と、駅と自宅の位置などを俯瞰して見た場合の情報とを簡単に見比べられる。この地図で物件を探す機能を、アプリの目玉にしたのである。

 例えば、あるユーザーが東京都世田谷区の池尻大橋駅周辺で物件を探そうと思った時。沿線から探してはみたものの、好みの物件が見つからず、住みたい街の選定に逆戻りした。でも実は池尻大橋駅から徒歩圏内ではあるものの、異なる路線の中目黒駅周辺なら、そのユーザー好みの物件があったのに…。

 沿線別の検索では分からない、意外な気付きを与えることで、新しい価値を提供できると考えた。さらに、周辺情報設定で「スーパー・デパート等」「コンビニ」「レンタルショップ」といった15の項目から、好きな情報にチェックを入れれば、周辺情報も地図上に表示できる。周辺にどんな施設があり、想定している駅のほかにどんな最寄りの駅があるかまで一目で分かる。

物件以外にも周辺情報を俯瞰して見られる

 地図上にある駅のアイコンをクリックすれば、平均相場やクチコミ、人気の飲食店ランキングなども見られる。物件情報だけではなく、多角的な情報で物件を比較できるのが特長だ。

 また、地図上に表示された物件情報のアイコンを指でタップすると、地図の下部に外観、駅から徒歩でかかる時間、家賃、間取りといった概要が表示される。「次へ」を押していけば、ページ遷移しなくても次々に物件情報を見られるため、何度も地図と物件情報を行き来するといったストレスもかからない。好みの 物件を見つけた時には、詳細ページに遷移すれば、部屋の作りや内観などの情報も取得できる。

 今後はスマートフォンアプリの使い勝手をさらに高めていく。例えばお気に入りに登録した物件をプッシュで通知するといったリマインド機能も実装する予定だ。ユーザーが気持ち良く使えるサービスをスマートフォンで提供する。即座に成約に結びつけばそれに越したことはないが、いつも使っているうちに「何となくCHINTAI」というイメージが頭の片隅に残るブランディングを実現する狙いが込められている。

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