「若年層に強い(SNSの)『mixi』は当社にとって重要な存在。この層へのアプローチに際して、『mixiページ』は有力なツールとなるはず」

 こう語るのはサントリーホールディングス広報部Eコミュニケーショングループ課長の坂井康文氏。
 
 mixiを運営するミクシィはこれまで、企業が販促活動を目的に消費者と対話をするための「コミュニティ」をmixi上に開設することを原則禁止してきた。だが、昨日ついに企業の情報発信の場として利用できるmixiページを開始し、マーケティング活用への門戸が開いた。発表当日から大手企業によるmixiページが相次ぐなど、早くも盛り上がりを見せている。サントリーも、そこに期待を寄せる1社だ。

30~40代がWebサイト利用の中心層

サントリーのmixiページ

 サントリーのmixiページのフォロワー数は、開始から2日間で約400人だが、「フォロワー数と比較して『イイネ!』やコメントが多く付くなど、反応が高い」(坂井氏)と今後の広がりに期待を抱く。早期に十数万の規模まで拡大したい考えだ。

 同社のWebサイトには月間400万人以上が訪れるが、若年層があまり多くないという課題がある。それは、メルマガへの登録情報などから明らかで、サイトへの来訪者は30~40代が最も多いとの分析結果が出ている。サントリーは酒類から清涼飲料水まで幅広く飲料を扱うだけに、商品情報に接触する年齢層もまんべんなく広げてたいところ。その際の問題点が若年層への接点強化だった。

 それにはmixiの活用が打ってつけ。1535万人のアクティブユーザーのうち、半数以上を20代が占めているからだ。だから、サントリーにとって重要なマーケティングの場としてmixiが浮上しているというわけだ。

 これまでもサントリーは、mixiの利用者層への接点を強化してきたが、ある課題を抱えていた。

 同社の広報部は昨年11月から、mixi上でアプリ「サントリーみんなのまち」を提供している。架空の街の中でゲームなどを楽しんでコインをためて、アイテム購入やプレゼント応募などができるものだ。街では、サントリーの商品をテーマにしたゲームなどが展開されており、イベントを体験することで商品情報などが伝わる作りとなっている。

 今年の5月にモバイル版を提供したところ、一気にユーザーが増え、10万人を超えるユーザーのうち7割がモバイルからの利用となった。アプリの利用属性は20~30代の女性が多く、「狙った通りのユーザー層を獲得できている」(坂井氏)。

アプリは対話に不向き

 「ある課題」とは、アプリは基本的にユーザーに利用してもらうものであり、サントリー側から情報をプッシュすることは難しいことである。ゲームやイベントを基にコミュニケーションをするため、その度に開発が必要になり、スピード感のある情報発信にアプリは向かない。

 例えばサントリーではウイスキーの樽材を使った家具の生産・販売をしているが、あまり認知度は高くない。そのため、「Facebookページ」でサントリー製の家具を紹介したところ、その意外性から200件近い「いいね!」が付いたという。こうした本業以外の情報も、mixiユーザーに伝えていくのがサントリーの戦略だ。

 新商品、イベント、社会活動。こうした情報を織り混ぜながら、企業活動を包括的に伝えられる場をmixi上に設ける。そのためまずは広報部が社内の先陣を切って、mixi上にサントリーの公式ページを開設した。

 当面は、Facebookと同じ情報をそれぞれ個別に文面などを変えて投稿していく。例えば、mixiでは投稿に絵文字を使って彩ることで、親しみを持ってもらえるような文面にしている。ゆくゆくは、それぞれのユーザーに最適な情報を発信できるようにしていく考えだ。

 mixi独自の情報としては、サントリーみんなのまちに関する情報の告知が挙げられる。「従来はアプリにアイテムを追加した場合など、ちょっとした更新を伝える場がなかった」と、広報部Eコミュニケーショングループの桜井弓子氏は言う。

 こうした情報を投稿してお知らせしたり、mixiページのナビゲーションにサントリーみんなのまちを作ったりして、アプリへと誘導していく計画だ。今後、ユーザーからの反応を見ながら、ブランド価値の向上や売り上げに対して有益であると判断すれば、商品やブランドごとのmixiページを開設していく。

 広報部発のmixiページの運営は、当面のところ粛々とやっていく。ユーザー数を一気に増やす段階になったら、ユーザーの属性などを基にして、その人からの質問に答えながら、商品を勧めるといった診断コンテンツなどを提供していくことを視野に入れている。

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