オンワード樫山は、直営のECサイト「ONWARD CROSSET」で約20ブランドの商品を販売

 アパレル大手のオンワード樫山がEC(電子商取引)事業を拡大している。開始は2009年12月と出遅れたが、2010年度に10億円超を売り上げ、2011年度は目標の20億円を着実に達成しそうな勢いだ。直営ECサイトにこだわり、来年には中国ECサイトの開設を目指す。

 オンワードはECサイト「ONWARD CROSSET(オンワード・クローゼット)」を運営し、同社のレディース、メンズ約20ブランドが4000~5000アイテムの商品を販売する。自社直営ECサイトだが、運営を担当するのは集客と商品仕入れを担当するEビジネス部の10人と少数精鋭だ。

 少人数の運営が可能なのは、システム構築やサイトデザインから、基本的な顧客サポート、そして商品の撮影から発送、課金・決済までをアウトソースしているからだ。スタートトゥデイのECサイト運営支援サービスを活用している。

 オンワードのEビジネス部担当の保元道宣常務執行役員は、「初期投資が軽く、売り上げ連動型で経費を払うのは画期的」と採用の理由を語る。後発だからこそ、インフラ部分はその分野に長けたパートナーと組む必要があった。

直営で商品力、販促力を磨く

 売り上げ、販売効率を追求するなら、他社のモールへ出店するのも有力な手段だ。しかし同社は、あえて出店しない。「顧客の声を(直接)集めることで、(自社の)企画力や商品力の向上に役立てる」(保元氏)のが、オンワードにとってのEC事業の目的だからだ。

 リアル店舗では顧客管理は店舗単位で、しかもその手法は店長の裁量、スキル次第だ。直営ECサイトを運営することで、顧客データベースを整備して顧客の声を体系的に集め、開発、販促に役立てたい、という考えがある。

 顧客の声はEビジネス部で月1回整理して、重要な意見は各ブランド担当者、商品企画チームと共有し、今後の商品開発への活用を始めたところだ。また、購買状況を分析して、相性がよいブランド同士で共同の販促を実施している。リピーター獲得も重要な課題である。メルマガ会員数は現在15万人で、向こう1年で10万人増やすイメージを描いている。

 実のところ保元氏は、アパレル企業、商社、NTTグループなど12社が出資し、アパレル業界のIT活用を推進するために設立されたコロモ・ドット・コムの社長を務めた経験もある。この分野のエキスパートだ。しかし、オンワードとしてはEC初参入で、Eビジネス部は「店頭経験がある販売、営業の若手20代中心に人材を集めて、OJTで勉強している」(保元氏)のが実情だ。

 “よちよち歩き”でスタートしたEC事業は、当初から独立採算性をとり収益を上げることが求められた。開発段階と考えれば、「東京の販売部の一店舗にする可能性もあったかもしれない」と保元氏も悩んだ。この追い込まれた環境が、成長への知恵を生み出しているようだ。当初はリアル店舗と同じ方針で仕入れていたが、収益を追求した結果、雑貨などの方がネットで売れやすいといった傾向が分かってきた。「定価での販売消化率が上がっている」(保元氏)という。

 2013年度のECの売り上げ目標は40億円で、グループ全体では早期に100億円の大台に乗せる計画。グループの売上高に占めるECの比率を、業界平均の3%に到達させることが目標だ。そして、保元氏の目線その先を見据えている。

 オンワード樫山はアジアに250店舗、中国だけでも150店舗を抱える。今後4~5年で数倍に増やす計画だ。リアル店舗の拡大を踏み台にして、中国向けECサイトを来年に開設する予定である。

 「日本では後発だがアジアECで先陣を切りたい」と保元氏。その地固めは日本のEC市場で着々と進んでいる。

■修正履歴
記事掲載当初、2013年度のECの売り上げ目標が間違っておりました。お詫びして訂正します。 本文は修正済みです。[2011/08/23 11:00]
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