Facebookでファン数を増やし、自社サイトのアクセスを増やしたい――。

nanapiのWebサイト

 そんなマーケッターの参考になるのが、生活や仕事に役立つ情報「ライフレシピ」を提供するサイト「nanapi(ナナピ)」だ。創業4年足らずのベンチャー企業、ロケットスタート(東京都新宿区)が運営する同サイトは、Facebookとの連携を強化することでトラフィックを着々と伸ばしている。6月のFacebook経由のサイトアクセス数は前月比で88%増加し、Facebookページにつけられたいいね!の数(ファン数)は開設から9カ月で3万人を超えた。コンテンツを豊富に持つというnanapi独自の強みはあるものの、そのFacebook活用術は多くの企業に参考になるはずだ。

 nanapiの記事は、ロケットスタートに登録する一般消費者が1記事200~500円で執筆するものだ。具体的で丁寧な内容が人気を呼び、節電への関心が高い今年の夏ならではの「エアコン・扇風機を使わずに暑い夏を乗り切る方法」や、「超初心者でもわかるYahoo!メールを使う方法」など幅広いジャンルのレシピが並ぶ。

●nanapiで人気の記事の例
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 パソコンとスマートフォンの共用サイトと携帯電話用サイトを提供し、6月のページビューは2000万強、ユニークユーザーは330万人に達している。スマートフォンでは試験的に一部のレシピを有料化しているが、主な収益源は企業のタイアップ広告だ。広告主の商品の使い方を紹介するライフレシピ特集を組んでいる。

Facebookの魅力はクチコミ

 nanapiがFacebookページを開設したのは昨年10月のこと。そもそも、なぜFacebookなのか。ロケットスタートの古川健介社長はこう語る。

 「Facebookは、ユーザーの行動がクチコミとして自然と広がる仕組みになっている。自社サイトのコメント欄をFacebook(連携)にして、『いいね!』の評価を積極的に取り入れることで、他のユーザーの目にも留まるようになるのです」

 Facebookページだけでなく、サイトと連携したときの情報波及力まで見据えていち早くFacebookページを開設したわけだ。Facebookページ開設以降、日本でのFacebookの広がりに着目していた古川社長は今年4月、Facebook機能を統合する形でnanapiのサイトを全面的にリニューアルした。

 実はその先例となったのが、ブログ記事を中核にした米新興ネットメディア「Huffington Post」だ。2009年8月、FacebookのIDでログインして記事へコメントを残せる機能「Facebookコネクト」をサイトに導入してから、Facebook経由のアクセスは約1カ月で48%増加し、FacebookのIDでログインしたコメントは全体の15%を占めたという。アクセス数全体も大きく伸びた。そのHuffington Postは今年2月、米AOLに3億1500万ドルで買収されることになった。古川社長は、Huffington Postにネットメディアの新たな活路を見いだしたのではなかろうか。

 nanapiのリニューアルでも、Facebook IDを使って各ライフレシピにコメントを残せるようにした。そのコメントは投稿者のFacebookページにも投稿されて、話題は友達にも広がっていく。nanapiのサイトを訪問していない人にも、友達のコメントを通じてレシピの存在を知ってもらうことができる。

 また、ページ右側のサイトバー領域も、Facebookの「ソーシャルプラグイン」と呼ばれる連携機能で埋め尽くした。nanapi利用者は、nanapiのFacebookページのファンになっている友達や、彼らが最近シェアしたライフレシピが一目で分かる。初めてnanapiを訪問したユーザーでも、友達の顔写真が表示されれば好奇心が湧き、サイト内のコンテンツをもっと閲覧してくれる可能性が高まるだろう。

 サイトリニューアルの結果、リニューアル直後はTwitter経由のアクセス数を2とするとFacebook経由は1だった比率は、6月最終週にはTwitterが1に対してFacebookが6と大きく逆転している。Facebookがサイトのアクセス数増加を支える流入源の柱となっている。

nanapiのサイトへのTwitterとFacebook経由のアクセス数の推移

Facebookページ運営の7つの技

 Facebook経由のアクセスを増やす基礎となるのが、Facebookページのファン獲得、活性化である。ファン数3万6000人を超えるnanapiのFacebookページを見ると、常に多数のコメント、いいね!が寄せられている。そこにはnanapi流のFacebookページ運営の7つの技がある。それぞれ紹介していこう。

【1】ユーザーの声を直接拾う
nanapiのFacebookページでは最新記事をピックアップして紹介する他に、ユーザーに質問を投げかけることもある。そこで得たフィードバックはライフレシピ作成などに反映している。希望する投稿頻度から内容までユーザーに直接聞けるのだ。nanapiではFacebookの独自機能である「Questions」を使っている。

【2】投稿しすぎない
投稿間隔は1時間ほど空けるように心がけている。現在のFacebook利用者は初心者が比較的多いため、まだFacebook上の友達の数が少ない。あまり頻繁に投稿するとユーザーのニュースフィードを埋め尽くしてしまい、迷惑がられる可能性があるのだ。好きなブランドのメールマガジンなら何通でもほしいことにはならないのと同じで、nanapiの投稿を自分のニュースフィードで読むのはファンだけとはいえ、適切な投稿頻度を保つ必要がある。

【3】編集者の観点を持つ
Facebookページへの投稿には、雑誌やウェブサイトと同じ編集観点が必要だという。土曜の夜ならバーに関するライフレシピ、昼休み前なら食事系、集中力が切れる時間なら“ゆるいネタ”といった具合に紹介する。リアルタイムにコミュニケーションがとれるFacebookページで、ユーザーが「いま」どういったコンテンツを有益に感じるかを意識する。

【4】人気(ひとけ)をだす
機械的に更新されているFacebookページよりも、普段から人気が感じられる方がユーザーはいいね!やコメント、シェアするといったアクションを起こしやすいという。具体的には投稿の最後に、カッコで投稿者の名前を記載すること。ユーザーのコメントをすべてチェックして、必要に応じて返答したり会話したりすることも忘れない。

【5】疑問形でユーザーのアクションを促す
ユーザーがコメントしやすい聞き方を意識した投稿も重要だ。例えば、結婚式の2次会幹事を選ぶ際のポイントをまとめたライフレシピを紹介する場合。ただタイトルを紹介するのではなく、最後に「みなさんの2次会に比べて、どうでしたか?」と質問を投げかけてみる。意見を聞かれているためユーザーも反応しやすく、自らの体験を共有したくなる。投稿のタイミングからその内容まで、編集観点はFacebookページの運用に不可欠だといえそうだ。

問いかけで終わっている投稿例。最後に投稿者名も入っている

【6】ターゲットを絞った広告でファンを獲得
Facebook独自の広告システムは、配信ターゲットを細かく設定できる。年齢や性別などはもちろんのこと、好きなものと趣味・関心、友達が既に広告対象のFacebookページのファンになっている人などに絞り込める。友達の行動をベースにした広告にもできるため、広告の受け手のクリック率も高い。まだFacebook上の競合が少ない現在は費用対効果が比較的高いといえる。

【7】ファン獲得の加速には懸賞アプリ
Facebookには幅広いジャンルのアプリが用意されており、懸賞アプリを使うとFacebookで簡単に懸賞キャンペーンを実施できる。有名な懸賞アプリは「monopo」や「Crocos懸賞」などだ。企業は自社のFacebookページのファンの中から抽選で景品をプレゼントできる。nanapiでは過去にゲーム機「Nintendo 3DS」を1台プレゼントする懸賞キャンペーンを行ったところ、2週間ほどで500人の新規ファンを獲得できたという。Facebookの懸賞アプリは無料で使えるものも多くあるため、ファン獲得を加速させたいときに有効な手段といえそうだ。

 ここまで、nanapiのFacebookページを活性化させる運営の7つの技を見てきた。基本は、ユーザーが思わず友達に共有(Facebookのシェア機能)したくなる投稿が重要だということだ。Facebookでは友達とつながり、その中であらゆる情報を分かちし合う。ユーザーがnanapiの投稿をシェアすると、それはユーザーの友達のニュースフィードに流れ、それを見た友達もサイトに訪れる、もしくはさらにシェアするといった連鎖反応が起こるからだ。

Facebookページ運営にテクニックは存在しない

 ここまで配慮するとなると、Facebookページを運用するには十分な人員や体制を構える必要がありそうだが、nanapiではこれをほぼ1人で担当している。ライフレシピの担当者が中心になり、たまにその他のメンバーも投稿する。運用会議などは設けておらず、投稿する内容やユーザーとのやり取りはすべて担当者の裁量に任せている。システマチックに管理するよりも、編集観点を重要視して運用した方がコストは少なく済むという。

 最後に、古川社長にFacebook活用の本質について聞いた。

 「Facebookページでは検索エンジンのような機械ではなく、画面の向こうにいる人と直接やり取りをする。検索エンジンが相手なら、ページ内の主要キーワードの出現頻度を上げるといったテクニックがある程度まで通用する。テクニックに汎用性があるからこそ、SEO(検索エンジン最適化)対策という言葉があるわけだ。Facebookページでは常に人を相手にするため、決まったテクニックは存在しない。いい情報を適切なタイミングで提供するという、情報サービスとしての当たり前の勝負をするしかない」

 人を相手にしている以上、決まったレシピは存在しない。運用をしながらユーザの声に耳を傾け、改善を続ける。料理と同じように丁寧にコツコツと仕上げていくしかないのである。