スタートトゥデイが提供するiPhone向けアプリ「ZOZOTOWN」のダウンロード数が70万超に達し、会社の業績ともども順調に推移している。同社が運営するファッション専門EC(電子商取引)モールと同名のアプリで、iPhoneの国内累積販売台数とされる数字を考えれば、10人に1人ほどがダウンロードした計算となる。スマートフォン経由の売り上げは、アプリ提供前の昨年10月と比べて既に3倍を上回る状況だという。

より多くの商品を見てもらえるようなカテゴリー検索に特化した、ZOZOTOWNのiPhoneアプリ

 昨年12月にアプリの提供を始め、その直後に米アップルのアプリ配信サービス「App Store」の無料アプリランキングで最高2位となった。ランクインしていたときは1日平均で2万件ほどのダウンロードがあり、現在でも同約5000件を維持しているという。

 目立ったプロモーションなどしていないにもかかわらず、ダウンロード件数が伸びる理由は、既に構築したZOZOTOWNというブランドの強さが1つ。もう1つは、同社会員の属性の変化を捉え、それに即応した戦略を取る上で、スマートフォンというプラットフォームが極めて相性がいいことだ。

 会員属性について、同社の鳥山大地マーケティング本部長はこんな解説をする。

 「ZOZOTOWNはその会員数が増加したことで、利用者が“マス化”しているんですね。かつては、ブランドを指名買いする人が多かったけど、最近は色んなカテゴリーの中からたくさんの商品写真を見て、直感的に気に入った商品をピックアップして購入していく人が増えているのです」

ブランド名も値段も付けない、けど売れる

 だから、iPhoneアプリ版のZOZOTOWNで最も重視したのは、カテゴリー検索だ。トップページには男性服、女性服、子供服という3つのメニューがある。いずれかを選んで、「トップス」「アウター」などのカテゴリーを選べば、そのカテゴリーの商品一覧が画面いっぱいに広がる仕組みだ。

 左右に3段で、商品写真がズラリ並ぶ。それを下方にスクロールしていけば、次々と新しい商品が出てくる。その途中で、なんとなく気に入ったものがあれば、それを買う。こうしたシンプルな作りにするため、「特集コンテンツや複数のバナー広告といった余計な情報を極力省いた」(同社の創造開発本部WEBクリエイション部の是井美咲ディレクター)。

 この商品一覧ページには、ブランド名の記述もない。おまけに値段もない。「当社の会員は、まずデザインを見て、それから価格を見る」と鳥山氏。

 余計な情報を省き、とにかくたくさんの商品を見てもらう。それには、従来型のケータイよりスマートフォンの方が適当だ。ストレス少なく、高画質で商品を見てもらうことができるからだ。

 そうして本当に気に入った商品を見つけた段階で、商品画像のところをタップすれば、そこで初めて価格や在庫といった詳細な情報が浮き出るようにした。

 これなら、多少高額でも購入してもらえるはず。同社の読みは確かに当たった。スマートフォン経由の1回当たりの購入金額は、従来型のケータイサイトと比べて高い。パソコン経由とほぼ肩を並べるくらいだという。マス化する会員属性を追い求めた結果。それがスマートフォンに行き着くのはある意味で必然だった。

前のめり過ぎないスマホ戦略

 スタートトゥデイは、会員属性のデータにアクセス状況の分析を重ねることで、もう1つの答えを導いている。前のめり過ぎないスマートフォン戦略だ。

 同社会員の平均年齢は29.8歳で、M1・F1層(20~34歳の男女)が中心だ。これなら、グーグルなどが取り入れている“モバイルファースト”という路線を今すぐにでも取れそうな気もする。これは、モバイルを起点にWebサイト、サービスを構築していく考え方である。

 ところが同社によれば、「当社のマーケティングはパソコンありきで、モバイルは補完的ツールなんです」と前出の鳥山氏は言う。

ZOZOTOWNのパソコンとモバイルのPVの推移

 上図は、従来型のケータイとスマートフォンを加えたモバイル経由、それとパソコン経由でのページビューの推移だ。通常時はモバイルとパソコンそれぞれからのアクセス数はほぼ同じ。しかし、1月と7月のセール時期になると、パソコンからのアクセス数が大きく伸びているのが分かる。

 このデータからも、パソコンからアクセスする人の方が、より多くの商品を目にしていると推測できる。その結果、モバイル全体と比較すれば、パソコン経由の方が購入金額が高くなるという結果になっている。だから、戦略の軸足を一気にモバイルにシフトすることは考えてはいない。
 
 とはいえ、「いずれパソコン、スマートフォン、従来型のケータイサイトの売り上げはそれぞれ均等になっていく」(鳥山氏)と見るが故に、スマートフォン向けサイトの対応やアプリの改善などに粛々と取り組んでいるわけだ。