セブン&アイ・ホールディングス(セブン&アイ)と東日本電信電話(NTT東日本)は7月6日、店舗と光ブロードバンドサービスを活用した包括的な協業を行うことで合意したと発表した。セブン&アイは、グループの約1万4000店舗で無線ネット接続サービスを提供し、ネットとリアルの融合による新しい小売業の創造を目指す。

セブン&アイは10月、セブン-イレブンなどの店舗で無料の無線LANスポットサービス「7SPOT(セブンスポット)」の提供を開始する。2012年2月末までに東京23区内のセブン-イレブンの約1200店舗と東京23区内の全イトーヨーカドー、そごう・西武、デニーズなど約100店舗で提供。
それ以降、NTT東日本がサービス提供するエリアの8700店舗、さらに西日本電信電話(NTT西日本)とも連携して全国1万4000店舗での展開を目指す。利用者は会員登録の後、有害サイトなど一部を除いてインターネットを無料で利用できる。ただし、1回当たりの利用時間などを制限する可能性もある。
セブン&アイは7SPOTの提供によって3つの効果を期待する。まず、店舗で無料ネット接続サービスを提供することによる集客効果。セブン&アイグループでは、1日平均1500万人が来店しているが、顧客の高齢化が進んでいるという。7SPOTで若年層を中心とした新たな顧客層の獲得を狙う。
次に、ネットと連携した新サービスの提供。例えば、スマートフォン向けにクーポンを配信したり、グループの複数の業態を横断した利用を促すスタンプラリーなどのキャンペーンを実施したりする。また、食品の生産者や成分など商品の詳細情報やフロアガイドやレストランの空席状況など店舗施設情報の提供、書籍や音楽、映像などデジタルコンテンツの販売などを想定している。
そして、将来的にはネットとリアルを融合させた小売業の推進を目指す。セブン&アイグループのEC(電子商取引)サイト「セブンネットショッピング」とリアルの店舗で得られた情報を相互に提供してマーケティングに生かす。セブンネットショッピングの鈴木康弘社長は、「会員情報の共有も1つの方法で、例えばリアル店舗で採寸してシャツを買ったら、2回目は(同じサイズを)ネットで買う。また、新商品をまずネットで売って、そのデータを基に地域別の商品配布数を決める」などを融合の具体例として示した。
セブン&アイの村田紀敏社長は、「モノと情報が一体化した経営が流通業にとって重要になっている」とした上で、「無線LANスポットがリアルとネットの融合への第一歩になる」と、NTT東日本との協業への期待を示した。
コンビニ業界では6月9日、ローソンがヤフーとの協業を発表した。両社の会員基盤、購買情報を連携させて新たなマーケティングに取り組む内容だ。セブン&アイグループの取り組みで、「オンラインtoオフライン(OtoO)」マーケティングへの注目が高まりそうだ。
なお、今回の協業では、非常時に備えたセブン-イレブン店舗の「情報ステーション化」に関する取り組みも発表された。東京23区内のセブン-イレブン全店舗にNTT東日本の非常用電話機を設置し、災害時には無料で安否確認などの緊急連絡を利用できるようにする。また、被災地の仮設住宅に無線ネット接続環境と家庭用端末「光iフレーム」を無償貸与し、セブンネットショッピングやイトーヨーカドーネットスーパーを簡単に利用できるようにする買い物支援も実施する。