KDDIと楽天は6月29日、電子マネーを中心としたサービスの業務提携に向けた基本合意書を締結したと発表した。楽天の電子マネー「Edy」や、KDDIの料金決済システム「auかんたん決済」の普及で相互に協力するほか、auとEdy双方の顧客の行動履歴を使ったマーケティングビジネスの検討を始める。9日にはローソンとヤフーが合計延べ6000万人の会員基盤を生かしたCRM(顧客情報管理)の推進で合意したばかり。膨大な顧客の行動履歴を抱える大手企業同士の連携は、CRMマーケティングが新たな局面を迎えたことを示している。

 両社が「スマートフォン時代のマーケティングビジネス」として掲げるのが、3300万人のau会員と月間決済数約3000万件のEdy会員の顧客プロフィル、購買情報、購買時の位置情報などを、顧客の了解を得た上で結びつけ、スマートフォンへ個々の会員に最適なクーポンやタイムセール、商品レコメンドを配信するマーケティング活動だ。27万店以上におよぶEdy加盟店へ送客し、Edy決済を増やすことを狙うものだ。

 現在のEdyの仕組みでは会員の購買情報の履歴を残していないが、Edy事業を担当する楽天の山田善久常務執行役員は、記者会見において「技術的には可能なので、店舗と共同でやっていく」と仕組みを変更する考えを示した。

KDDIの田中孝司社長(左)と楽天の三木谷浩史社長

 楽天の三木谷浩史社長は、「創業してほぼ15年の今、新しい経済圏ができようとしている。FacebookなどのSNSが広がり、グルーポンなどのオンラインtoオフライン(O2O)マーケティングが消費を大きく変えている」と、ネットがリアル店舗の消費を促進する流れが来ていると現状を説明。「Edyなどの電子マネーとKDDIが持つ資産で、世界で最も進んだO2Oマーケットを作る」(三木谷氏)と意欲を見せた。

 両社は業務提携の第1弾として8月2日に、auかんたん決済でEdyへのチャージを可能にする。また、秋にはauかんたん決済で楽天市場での商品購入もできるようにする。

ローソンやCCCもネットデータ活用

 楽天とEC(電子商取引)市場で競うヤフーは6月9日にローソンとの提携を発表。約2500万人のYahoo! JAPAN ID利用者のページ閲覧、検索、商品購入などのデータをローソンなどが推進する共通ポイントプログラム「Ponta」の約3200万会員の購買履歴とあわせて、顧客の許諾を受けた上で、最適な情報、キャンペーン案内をスマートフォンなどへ送るサービスを来年春から開始する

 また、ネット広告会社のオプトとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は7月6日、両社が持つ技術、資産を生かした広告商品、システムを開発するPlatform ID(東京都千代田区)を共同出資で設立する運びになっている。様々なサイトと提携してユーザーの行動履歴を集約して、CCCのT会員(3763万人)のデータを連係させた広告やマーケティングを展開する予定だ。

 ネットとリアルの消費者の行動を結びつけ、精密に分析して効果の高いマーケティングを実施するため、それぞれの世界で膨大な会員基盤や購買データを持つ企業の連携が進んでいる。もっとも、情報が多ければそれでマーケティング効果を高められるわけではない。膨大なデータを処理するシステムと分析ロジックが必要だ。また、データ連携において消費者の許諾をどう取るべきかも確立していない。デジタルマーケティングを大きく進化させる可能性を秘めるが、課題も山積しているのが現状だ。