好きなスニーカーや服を選び、つま先などの各パーツの色を自分好みにカスタマイズして注文できるサービス「NIKEiD」。ナイキジャパンは、その認知向上と販促のキャンペーン「NIKEiD FRIEND STUDIO」を国内大手SNS「mixi」上でこのほど実施した。キャンペーン期間は5月31日~6月20日までの21日間。「キャンペーン対象となったモデルの1つは、(21日間という)期間中にNIKEiDで売った販売額としては世界トップクラスの成果を上げることができた」と、同社リテール本部の西村真治NIKEiDマネージャーは言う。

mixi上でスニーカーをカスタマイズ

 mixi上に設けたキャンペーンページでは、NIKEiDを体験できるようになっている。3つあるモデルから自分で好きなものを選んで、各パーツの色をカスタマイズして自分好みのスニーカーを作る。ナイキのサイトで展開しているNIKEiDと同様の機能をmixi上で体験できるようにした。

mixi上にNIKEiDを体験できるキャンペーンページを開設

 mixiユーザーは、基本的には友人の日記を読むなど、mixiの機能を利用するためにサイトを訪れている。だから、mixi上に興味のある広告があり、そこをクリックして企業サイトに移ったとしても、そのサイトからすぐに離脱してしまうケースが少なくない。せっかく使っていたmixiから完全に離れてしまうことを嫌がるからだ。

 ナイキはそこで、広告から自社サイトへ誘導するのではなく、mixi上でいくつかのモデルを体験できるようにした。これにより、「mixiを見ていたのに、気がつけば別のサイトに移動してしまった」という印象の低減を狙ったものと見られる。

 カスタマイズして作ったスニーカーは、キャンペーンページ上にある仮想の“スタジオ”に飾ることができる。上限は5つまで。そのスニーカーを、マイミク(mixi上の友達)同士で、「COOL!」というボタンを押して評価し合えるようにした。

 評価しあって楽しむだけではなく、COOL!の数の多い友人のスニーカーを見て、「あいつより、もっとカッコイイ色の組み合わせを作りたい」、そんな競争心を煽ることで何度も利用するユーザーが出てくることをナイキは期待したのだろう。

 mixi上のNIKEiDの利用促進に効果的だったのが、カスタマイズしたスニーカーを使ったバナー広告を、ユーザー自身が作ることができる仕組みだ。作ったスニーカーの中からユーザーが一番気に入ったモデルを選んで、バナー広告を作成できる。バナー広告は、ユーザーが選んだスニーカーとともにそのユーザーのmixiのプロフィール画像も表示するようになっている。

ユーザーが作るバナー広告

 ユーザーが作ったバナー広告は、そのユーザーのマイミクに対して表示する。掲載場所はマイページの右上にある広告枠で、かなり目立つ位置となる。友人のマイページの“特等席”で、自分の作ったスニーカーをアピールできるため、作った本人が告知する動機付けになる。

ユーザーが自分でバナー広告を制作できる

 一方、広告を目にしたユーザーは、そこに友人のプロフィール画像も表示されるため、あの人が作ったスニーカーだ、とひと目で分かる。単にナイキのスニーカーが表示されるよりも、“知り合い”が作ったスニーカーの方が関心を持ってもらえる可能性が高くなるというわけだ。

 実際、このバナー広告のCTR(クリック率)はパソコン向けの通常のバナー広告の約11倍、ケータイでは約16倍となった。

 ユーザーがユーザーを呼びこみ、最終的には213万人がこのキャンペーンに参加する成果となった。「想像を上回る結果だった」と、西村氏はいう。

 普段からmixiをよく利用するユーザーに、mixi上でNIKEiDを体験してもらいながら、告知もユーザー自身にしてもらう。そうして利用者を増やしながら、作ったスニーカーをそのままNIKEiDのサイトで購入できるようにした。その結果、期間中の一部モデルの販売額は世界でトップクラスにまでなったという。

 消費者との直接の対話ばかりが取り沙汰されるソーシャルメディア。だが、ユーザー同士のコミュニケーションを活発化させる“ネタ”を提供することで、売り上げ増加につなげる。そうした手法はこれから増えていきそうだ。