女性に支持される商品、サービスを提供したい――。

 そんなことを考える、マーケティング関係者の参考になるのが、エムティーアイ(MTI)が運営するケータイサイト「ルナルナ」だ。女性の健康情報サービスで、月額約180円と有料ながら会員数は200万人を超え、F1層(20~34歳の女性)の10人に1人が利用しているという。女性を引きつける秘訣はサービス自体の魅力はもちろんのこと、綿密な効果測定に基づいた会員獲得プロモーションと継続率を高めるマーケティング策にある。

ケータイサイト「ルナルナ」のトップページ

 まずは、会員獲得に資する精緻な広告効果の測定について。

 2001年にKDDIのau公式サイトとしてサービスを開始したルナルナ。3つの携帯電話会社のサイトへの対応が完了した2007年に、それまでのモバイル広告に加えて大々的なプロモーションを開始した。避妊や妊娠にまつわる女性のプライベートな情報を扱うため、まずはF1層の女性に「信頼」「安心」して使えるサービスとして認識してもらうことが重要だった。女性に支持される有名人を起用したテレビCMや、彼女たちが普段から読む雑誌に広告を出稿した。

 ケータイコンテンツ業界でもマスメディアを活用したプロモーションは珍しくないが、ルナルナがこの方法で会員数の大幅な増加に成功したのには理由がある。それは、自社ハウスエージェンシーによる徹底的な効果測定だ。広告の出稿から効果測定、結果の分析までを一貫して行うことで自社にノウハウをため込み、スピーディーな意思判断を可能にしている。

今は地方のテレビCMが効果的

 テレビCMでは、入会数が多かった地域、時間帯、番組などをそれぞれ把握し、効率的にプロモーションを行っている。200万人の会員を有する現在では、以前のように首都圏に積極的に投下するよりも、各エリアの特性を考えた地方局でのCMにシフトしている。内容に関しても、まずは地方で試験的に放送して反響を見た上で全国に展開することもある。

 雑誌広告では、各雑誌からの入会数を把握できるようにジャンプ先URLに識別パラメーターを付けたQRコードを記載する。こうした効果測定の積み重ねの結果、例えば、旅行を控えた夏休み前には入会数が増えるなどの傾向を把握できた。

 徹底した効果測定を継続することで、プロモーションを厚くする時期を見極めている。最近では多額な広告費をかけなくても、ブランドの認知度の向上やクチコミ効果などでの入会が見込めるようになり、会員獲得コストは低下の傾向にある。

 様々な女性向けタイアップキャンペーンなどでルナルナを知った女性も多いだろう。これまでにワコール、花王、リクルートの「ゼクシィ」といった企業、メディアとキャンペーンを展開してきた。得意分野を生かしたキャンペーンサイトをそれぞれ作成し、相互のサイトに会員、顧客を誘導する。女性向けメディアとして評価を確立したことで、マス広告に頼らなくても新規会員を獲得する仕組みまで構築しつつある。

継続したくなるサービスに工夫

 多額の費用をかけて会員を獲得しても、短期間で解約されては元が取れない。ルナルナの場合、生理日と排卵日をきちんと入力すればするほど予測精度が増すなど、継続することでユーザーが受けるメリットが大きいことを打ち出している。その結果、既存会員の8割以上が継続的に利用しているという。

 ルナルナの人気コンテンツは「今日のお告げ」と「たまごメール」の2つ。今日のお告げで日々の自分の状況を把握する。また、たまごメールは生理日などの入力忘れをリマインドしてくれる。それでも会員がルナルナを離れるとき、それは妊娠したときだという。

 そこでこの3月、ルナルナで提供してきた妊娠関連情報を強化する形で、出産前後の女性をサポートする「hahaco(ハハコ)」(月額315円)という新たなケータイサービスを始めた。体重記録などのサービスや妊娠中や育児中の不安を払拭するコンテンツを提供している。

 他にも、妊娠を希望する女性のためのサービス「Umoo!(ウモー)」(月額315円)や、女性がパートナーと自分の体調を共有できるサービス「彼女の医学」(ルナルナ会員向けで月額105円)も提供している。

 こうしたサービスは自社メディア以外に広告を出さずとも順調に会員数を伸ばしているという。何らかの理由でルナルナを解約しても、姉妹サービスへの誘導に成功しているのだ。ルナルナに寄せられる毎月約3000件の問い合わせやグループヒアリングなどを通じて女性の本音を集めて、サービスの開発、運営に役立てている。

環境変化による解約者を姉妹サービスに誘導する

 開始当初と現在のルナルナのイメージは大きく異なっている。エムティーアイ広報室の丸山美弥子氏は、「新しいものに飛びつく傾向が強いケータイコンテンツ業界では、『維持するブランド力』と『変えていくブランド力』を兼ね備える必要がある」と言う。

 現在のルナルナのロゴは2010年の新CMのタイミングで一新させた。そのきっかけは、認知度が上がり様々なPRをしていく上でケータイ向けに作られた以前のロゴでは対応が難しくなったことだった。より信頼感・親しみやすさが感じられ、使うことで女性がハッピーになれるようなイメージを狙って現在のピンクと紺色でうさぎをモチーフにしたロゴに決めた。信頼をベースとした蓄積して作り上げたブランドイメージが土台にあったからこそ、それを壊して新たに生まれ変わることでより多くの女性の支持を集めることができた。そしてルナルナはさらなる変化を求められている。スマートフォンへの対応だ。

スマートフォン対応はアプリに注力

 ルナルナなどケータイコンテンツ会社の多くは、NTTドコモの「iメニュー」などから顧客を誘導し、月額課金で着実に稼いできた。しかし、有料・無料のアプリが山のように存在しウェブも閲覧できる「Android」や「iPhone」というスマートフォンの世界では、サービスの使われ方がガラリと変わる。

ルナルナは20代女性を中心に支持を集めてきた

 ルナルナを退会する理由としてスマートフォンへの機種変更が増えたことを受け、ルナルナは2010年7月にスマートフォン対応を開始。現在200万人の会員のうちスマートフォンユーザーは3割程度(無料アプリの会員含む)だが、これから3~5年でスマートフォン比率が確実に逆転すると考え先手を打った。

 スマートフォンに機種変更する際には、希望すれば携帯電話会社側で契約してきたケータイコンテンツを一括解約することも可能である。ルナルナにしてみれば解約率が高まる懸念があったため、ルナルナに登録したデータを簡単にスマートフォンへ引き継げるようにするなどの対策を打っている。

 機種変更した会員に継続してもらう “守り”だけでなく、新たなスマートフォンユーザーを会員に獲得すべく“攻め”の手も打っている。スマートフォン向けアプリの積極的な提供だ。

 無料iPhoneアプリ「ルナルナLite」は、生理日、排卵日予測が中心のシンプルなアプリだが、まずは利用者にアプリを見つけて試してもらうことが狙いだ。もっと様々な機能を利用したい場合はウェブ版を有料で使ってもらう戦略となる。その結果、スマートフォンに関してはウェブ版よりアプリ版のユーザーが多くなっており、今後はアプリの有料化など様々な手法での収益化を考えているという。

 スマートフォンへの移行という時代のすう勢は、ルナルナにとって国内市場だけみれば逆風かもしれないが、世界共通の携帯電話プラットフォームで戦う機会を得ると考えれば追い風にもなり得る。既にルナルナが中国語版、英語版のサービスを始めているのは、この追い風を受けたものといえる。ルナルナが日本国内のみならず、世界中の女性の信頼を得る日が来るか。今、重要な転換点を迎えている。

■修正履歴
記事掲載当初、図に掲載したアプリ版「ルナルナLite」、姉妹サービスの料金が間違っておりました。お詫びして訂正します。[2011/06/14 13:30]