長期間の検討が前提となる住宅購入。不動産仲介各社は、見込み客が検討中の物件を自分で管理できるマイページサービスを提供している。機能はどこも似たり寄ったりだが、東急リバブルは昨年12月に「Myリバブル」機能を刷新して、新規会員登録の増加ペースを倍増させた。カギは、見込み客視点に基づいて改善したことだった。

Myリバブルは、利用者が売買物件の希望条件を設定すれば、それに合った物件情報のメール配信を受けられるサービスだ。
東急リバブルのサイトでは常に全国で2万5000件以上の売買・賃貸情報を掲載している。その中から最寄り駅、駅からのアクセス、建物・土地面積、間取り、建築年数といった項目で検索できる。
気になる物件は、問い合わせフォームや電話を通じて担当者に問い合わせでき、これが東急リバブルにとっては見込み客の獲得となる。
同社は全国に売買仲介ネットワークとして119営業所を構えているが、実は、物件に関する問い合わせの6割弱はネット経由となっている。そのサイト経由の問い合わせを獲得する上で強力なツールとなっているのが、MYリバブルの活用だ。これなら利用者に、物件を比較してもらいやすく、新着情報をメールでプッシュすることもできる。
「Myリバブル」からの問い合わせ比率は、サイト全体の5倍
Myリバブルの会員が問い合わせをしてくる確率は、サイト利用者全体の5倍に上るという。ただし、Myリバブル会員はサイト利用者全体の1~2割にとどまっているため、便利な機能を訴求することで会員数を増やすことが課題となっていた。会員増は、問い合わせ件数や、ひいては住宅購入などの成約件数が大きく増加することにつながる。
そこで同社は昨年12月にMyリバブルをリニューアルした。従来の売買物件に加えて、賃貸物件の新着情報のメール配信も開始した。そして、競合の不動産仲介会社にはあまりない、独自の新機能を追加した。それが、「Myレビュー」だ。
物件を独自採点して並び替え
見込み客は、気になる物件を「クリップリスト」として登録しておき、「価格」「間取り(広さ)」「交通・利便性」「設備(道路)」「周辺環境」の5項目について、自分で5段階の評価をして総合評価を算出できる。さらに、物件の印象などについて自由にメモを残せる。

東急リバブルのIT推進課課長兼広報IR課ネット戦略推進P.T.リーダーである島村誠一氏は言う。
「たくさん物件を見ていると、なぜその物件が気に入ったのかが自分でも分からなくなってくるもの。候補物件の並び順も、単に広さや値段ではなく、お客様の基準で変えられるようにすべきと考えた」
長期にわたって物件選びに迷う顧客像の心理を捉えて、評判は上々だという。このMyレビュー機能を自社サイトで強く訴求して、登録キャンペーンを展開した結果、2011年1月の会員登録数は、リニューアル前に当たる2010年11月と比べて2倍に増えている。Myレビューをはじめとするメール配信以外の付加機能の利用率は、「約10%と想定の5%の倍に達している」と島村氏は手応えを感じている。
この5月にはケータイでの利用に対応した。通勤途中に検索した物件をクリップリストに登録して、帰宅後にじっくりとチェックするような用途を想定したものだ。これにより、さらなる会員拡大を狙う。
今後はスマートフォンへの対応も検討する。「ケータイ版の開発途中でスマートフォンへの対応も急ぐべきと意見が出ており、システムの裏側は既にそれへの対応を想定した作りになっている」と島村氏。スマートフォンならではのサービスの価値を探りつつ、対応時期を見極める考えだ。東急リバブルの顧客は東京都と神奈川県に在住する高収入のファミリー層が中心で、これはスマートフォン利用者層と重なるところがあるだけに、早急な対応が必要となりそうだ。