ヤフーとローソンは6月9日、両社サービスと店舗を連携させた新サービスを提供することで合意したと発表した。ローソンはEC(電子商取引)サイト「Loppi(ロッピー)」を8月に開設して、「Yahoo!ショッピング」出店者の商品などを販売する。ヤフーは地域生活圏情報サイト「Yahoo!ロコ」にローソン店舗の情報を掲載して、来店促進を支援する。ローソンの狙いは、リアルとネットの合計で延べ6000万人近くとなる巨大な会員基盤、膨大な購買情報を活用した「ローソン型CRM」の推進だ。
Yahoo!ロコでは6月から順次、全国のローソン店舗のキャンペーン情報などを配信して、来店促進に役立てる。ヤフーは、Yahoo!ロコを今後の成長を担う戦略サービスと位置づけており、ローソンとの連携で情報を充実させてユーザー数を拡大させる。さらに、マーケティング活用のモデルケースとして展開し、他の全国チェーンとの提携や、全国各地の店舗による情報提供に結びつけたい考え。
また、Yahoo!ショッピングで扱うお取り寄せグルメ商品をローソン店舗で販売し、Yahoo!ショッピングのサイトで告知する共同販促も実施する。
12月にはスマートフォン向けアプリを共同開発して、両社のサービスや店舗利用促進に結びつける。
注目されるのはヤフーと連携したローソンのECサイト事業の開始だ。8月にLoppiの名称でECサイトをパソコン、スマートフォン向けに開設する。Loppiは本来店舗内のマルチメディア端末の名称だが、これを機にブランド領域を拡大させる。
自社でシステム開発するのではなく、Yahoo!ショッピングと連携してサイトを運営し、Yahoo!ショッピング出店者の2万店舗、5000万点の商品を中心に販売する。ヤフーは、Loppiの開設でYahoo!ショッピングの売り上げ拡大を期待できる。

サービス連携の発表会には、ローソンの新浪剛史社長CEO(最高経営責任者)と、ヤフーの井上雅博社長が登壇。新浪社長は、「ローソンの強みは目利き。この商品は大丈夫という安心を提供している。今のECはその部分が弱い。我々はその(安心の)ために全国に多数の社員がおり、ブランドとして評価されている。ECと安心を組み合わせることが付加価値となる」と語った。具体的には、Loppiにローソンお薦め商品の紹介コーナーを設けたり、独自の返品制度を用意したりして、競合との差異化を図っていく。
ローソンが独自に調達した商品も扱う。ローソン各支社のマーチャンダイザーが発掘したが、数がそろわず全国の約1万店舗では展開できないような商品は、Yahoo!ショッピング、Loppiを通じて販売していく予定だ。
なぜローソンがECに力を入れるのか。新浪社長は、「お客様はフレッシュさを求めすぐ食べたい物は近いところで買い、それ以外の買い物はECになるだろう。物流も進化しており(注文から)数時間で届く」と今後の消費行動の変化を見越しているためだ。「10年後の売上高のうち2割、3割、または4割ぐらいを(ECが)占めるようにしたい」と、ECを事業の柱の1つに育てていく意気込みを見せた。
POSからの脱却が必要
今回の連携は、ローソンの新ECサイト事業に目が行くが、同社のもう1つの大きな狙いは、ヤフーとローソンの会員情報、購買情報を合わせることで、商品開発や品ぞろえの精度を高めることだ。
新浪社長は、「お客様により近づくためにはPOS(販売時点情報管理)を脱却する必要がある」と現在のマーケティングが限界点に来ていると指摘する。POSではある顧客がどれぐらいの頻度で来店しているか分からず、その年齢も正確に把握できない。
一方、今回のサービス連携でローソンは、約2500万人のYahoo! JAPAN ID利用者のページ閲覧、検索、商品購入などのデータを入手する。ローソンなどが推進する共通ポイントプログラム「Ponta」の約3200万会員の購買履歴とあわせて、顧客の許諾を受けた上で、最適な情報、キャンペーン案内をスマートフォンなどへ送るサービスを来年春から開始する。
膨大なネット上の行動、購買データからは、ローソンでは扱わない商品の販売傾向、地域別の売れ筋情報などを把握できる。それらを基に、自社商品の企画・開発、大手メーカーと共同の商品開発、地域別の品ぞろえ対策に役立てる。ローソンは、「会員データの分析でお客様の満足度を追求するCRM企業」(新浪社長)を目指す。ヤフーは「その最重要戦略パートナーになる」(新浪社長)と言う。