資生堂子会社のイプサ(東京都港区)は5月16日から22日まで、「Twitter」でつながっている友人に、イプサのクーポンをプレゼントできるキャンペーンを実施した。「お気に入りのイプサをお友達に贈ろう」というキャンペーンで、このクーポンを使えば化粧品のギフトセットをイプサの店舗でもらうことができる。ソーシャルメディアを使って、実際の店舗に誘導するのが狙いだ。

 ネットから店舗へ。その導線を作るには、フラッシュマーケティングなども有効な手段だが、安売りのイメージがつけばブランド価値を毀損する。
 
 イプサは資生堂の子会社だけに、ブランド管理にとりわけ気を配る。そこで、Twitterのクチコミ効果でクーポンを配りながら、店舗への集客を狙うことにした。

キャンペーンの流れ

 まず利用者は、スマートフォン向けTwitter連携のギフトサービスのサイトにアクセスする。そこにイプサのクーポンが表示されるので、Twitterの友人の中から、クーポンを送ってあげたい人を選んでメッセージを入力する。

1/10以下の顧客獲得コスト

 すると、Twitterのタイムライン上にメッセージとクーポンへのURLがツイートされて相手に届く。送り手のツイートがフォロワーの目に入ることで、企画の露出が期待できる。なお、このギフトサービスは、Web制作会社のネットイヤーグループが提供する「Smylish(スマイリッシュ)」。

 クーポンを受け取った友人は、キャンペーンの対象店舗で店員にクーポンをケータイなどで表示して見せると、肌のカウンセリングを受けた後に、人気商品の化粧液「メタボライザー」や洗顔せっけんなどを詰め合わせたギフトセットをもらえるという流れだ。

 クーポンを持参しなくても、店舗でカウンセリングを受ければサンプル品をもらえるが、「ギフトという名目上、通常のサンプルではがっかりされてしまう。この企画専用に用量の多い特別なセットを用意」(イプサの山口耕平事業戦略部長)して満足度の向上を意識した。

 今回のキャンペーンは試験的な色彩が濃いため、数字面の大きな成果はまだ上げていない。キャンペーン期間中に223人がTwitter上で友達にクーポンを送り、そのうち16人が来店した。ギフトの引き換え期間の5月31日までに、「現在の2倍くらいが引き換えてくれることを期待する」と、イプサの山口氏は言う。

 それでも、見込み客の獲得コストは、これまでの雑誌広告などに比べてはるかに安く済むことが分かった。「1人当たりの獲得コストは数百円」と山口氏。ギフトセットの原価を考慮に入れても、見込み客を1人獲得するのに2~3万円がかかった店舗誘導目的の雑誌広告とは雲泥の差だ。

資生堂の戦略にどう生かす?

 イプサがネット利用の店舗集客に取り組むのは、メーン顧客層が20代で親和性が高いことに加えて、主要販路の百貨店への来店客数が減少していることがある。危機感を抱いたイプサは、昨年9月から自社EC(電子商取引)サイトを刷新して、チャットによるオンラインカウンセリングサービスを始めるなど、販売チャネルを強化した。

 とはいえ、イプサの強味が専門家によるカウンセリングで最適な商品を勧める点にあることには変わりない。ECサイトはあくまで、店舗展開していないエリアなど、店舗まで足を運ぶのが困難な顧客に向けたものであり、オンラインの利便性ばかりを強く打ち出しては、強味が弱味に変わりかねない。だから、店舗へ集客して、カウンセリングを受けてもらうことにこだわる。

 今回のキャンペーンでも、店舗でカウンセリングを受けることをギフトセット取得の条件にしたのはそのためだ。Twitterで友人に勧めるくらいだから、クーポンの送り手は、イプサのファンや既存顧客が中心になることが想定できた。だから、クーポンの受け手にカウンセリングの魅力なども紹介してくれる可能性があり、「良質な見込み客の獲得」(山口氏)が期待できるというわけだ。

 親会社の資生堂は来年4月、ECモール「ビューティープラットフォーム」(BPF)をスタートする予定。イプサの試験的な取り組みを見ながら、資生堂のECモール戦略の詳細が次第に固まっていくことになるだろう。

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