韓国ロッテグループが運営する総合EC(電子商取引)サイト大手「ロッテドットコム」が、日本市場に参入した。日本法人のロッテドットコムジャパンが美容品専門のECサイト「ロッテスタイル」を4月21日に開設。韓流ブームに乗って注目度が高まる韓国コスメを中心とした美容品に特化して、日本市場の攻略を目指す。
日本ではなじみが薄いが、実は韓国のロッテドットコムは家電、アパレル、食品など様々な商品を取り扱う総合ECサイトで、2010年の年商は約586億円という韓国EC業界の大手。ただ日本国内では「楽天市場」や「Amazon.co.jp」といった総合ECサイトの勢力が強いため、韓国での総合EC大手の立場は捨て、あえて美容品に特化させる戦略をとった。
「競争が激しい日本市場で勝ち抜く競争力を身につけることも目的の1つ」と、ロッテドットコムジャパンの野村佳史常務執行役員は日本参入の狙いを語る。日本を足がかりに中国やインドネシアなどへも進出する考えだ。
日本国内の美容・化粧品通販にはDHC、ドクターシーラボ、ファンケルなど強力なプレーヤーが名を連ねる。資生堂も2012年4月に参入することを表明した。ただ、野村氏は「日本は化粧品市場の規模は大きいがEC化率が低い。特定のサイトによる寡占も進んでいない」と分析する。今後、化粧品のネット通販市場は拡大することが期待でき、参入の余地があるとみて化粧品を主軸にした美容品専門のECサイトの開設を決めた。
韓国ブランドの独占販売で差異化
ロッテドットコムジャパンは、韓国ブランドを中心とした商品戦略と、自社メディア強化戦略を掲げて日本市場を開拓する考えだ。
販売商品は独占的に扱う韓国ブランドの化粧品を中心に展開していく。韓国ロッテグループの百貨店や免税店においても、日本からの旅行客が韓国ブランドの化粧品をよく購入するなど、日本人からの人気が高いのがその理由だという。
例えば、韓国の化粧品ブランド「ドクタージャルト」はロッテドットコムジャパンが独占輸入販売の契約をしており、「ロッテスタイルの開設に合わせて日本初上陸となった」(野村氏)。

サイト開設時点では、韓国以外のブランドも含めて100ブランドを取り揃えた。今後も韓国ロッテと情報交換をしながら、日本人に人気の韓国コスメブランドを独占販売することで、ほかのサイトとの差異化を図っていく。年内には取り扱うブランドを200まで拡大する計画だ。
自社メディア強化戦略では、ロッテスタイルのサイトに美容に関するコンテンツを掲載して、ターゲット層である30~40代の女性の関心を引いて、販売につなげる。
美容雑誌に連載を持つ美容ジャーナリストなどに協力を得て、ロッテスタイル上にコラムを連載する。美容に関する書籍を複数発刊している斉藤薫さんなど、5人の美容ジャーナリストなどが参画している。彼女たちのコラムなどで商品を推薦して、サイト来訪者に購入を促す。

この2つの戦略を軸に据えた上で、日本のユーザーが購入しやすい環境の整備を今夏までに進める。5月10日にはケータイECサイトを開設。7月には日本の化粧品通販でも導入が進むチャットによるオンラインカウンセリングサービスを開始する。既にオンラインカウンセリング要員として化粧品販売の経験を持つ人材を採用して、チャット利用の研修をして準備を進めているという。
そして、夏前ごろから雑誌やネットなどで広告展開をするなど「オフラインとオンラインの両方でプロモーションをかなり厚くかけていく」(野村氏)。
ロッテの強すぎるブランド力が足かせに
来年以降にはアパレル関連商品にも品揃えを広げ、売り上げは2014年に300億円規模を目指す。しかしその目標達成には、“お口の恋人 ロッテ”という日本におけるロッテのイメージからの脱却という課題が重くのしかかる。
野村氏は「顧客層の中には韓国旅行によく行くため、ロッテが免税店や百貨店を展開していることを知っている人も多い。幅広いビジネス展開するロッテのイメージを少しずつ広げていきたい」と説明するが、菓子メーカーとしてのブランド認知が強すぎる故、このイメージを覆すことは容易ではない。
今夏に本格化させるプロモーション展開などで“コスメならロッテ”のブランドイメージを浸透させることができなければ、苦戦を強いられそうだ。