ファッション専業EC(電子商取引)モールで国内ナンバーワンの「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが、いよいよ中国市場に打って出る。同社の前澤友作社長がパートナーとして選んだのは、アリババグループなどと資本関係を持つソフトバンクの孫正義社長だ。「おこがましいかもしれないが、同じタイプの経営者だと感じた」と前澤氏。国内ファッションECの雄が、「同じタイプ」からほぼ全面的なバックアップを受けながら、中国有力ネット企業への幅広いリーチ、そして顧客へのパスを手に入れつつある。

 今年7月までにソフトバンクとの合弁会社「スタートトゥデイホンコン」と、その100%子会社「スタートトゥデイシャンハイ」(いずれも仮称)を設立する。そして9月下旬からECモールの運営を中国で始める予定だ。ネット通販市場が急拡大する中国でも、ファッション分野のネット通販ナンバーワンを目指す。ソフトバンクといかに中国市場を攻めるのか。前澤社長に聞いた。

いつ頃から中国進出を検討していたのか。

 リサーチを始めたのは2年ほど前からだ。様々な観点から中国市場の分析を進めてきた。今回の進出を決めたのは、昨年末にソフトバンクの孫正義社長にお会いしたから。意気投合してやろうということになった。

ソフトバンクと中国に挑むスタートトゥデイの前澤友作社長

 実は孫社長にお会いしたのは初めてだった。オーラがあり、かつパワーもある。描いているビジョンが大きく、志も高い。本当に尊敬できる経営者だと感じた。互いのビジネスモデルも理解していたし、やりたいことはすぐに共有できた。話し合いを始めてから合意まですごく早かった。おこがましいかもしれないが、同じタイプの経営者だと感じた。
 
 大変なのは、むしろこれからだろう。9月下旬のモール運営の開始に向けて、現場の頑張りに期待している。

ソフトバンクと組んだ理由は。

 ソフトバンクには中国で持っている素晴らしいアセット(資産)がある。ほとんどの(ネット系)有力企業に対して出資をしている。例を挙げれば、中国のネット通販最大手である淘宝網(タオバオ)を擁するアリババグループ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の人人網(レンレンワン)、最近ではオンラインテレビのPPTVにも出資している。それぞれの業界におけるナンバーワンに近い企業が、総力を挙げて応援していてもらえるという話だったので、我々としては組む相手として申し分ない。

物流拠点「ZOZOBASE」も中国に持って行くのか。

 日本と中国で物流の仕組みが異なるのは十分理解しているが、物流拠点も現地に作る。場所についてはまだ話せないが、9月に開始する段階には間に合わせるつもりだ。

スタート時点で、取り扱いブランドはどの程度そろえる予定か。

 これからブランドに対して声をかけていくが、200~300ブランドは集めたいところだ。孫社長にもそういう営業力、開拓力を期待されている。

 もし間に合えば、現地のブランドもスタート時に取りそろえたい。できれば中国で「とがっているブランド」を取り扱いたい。日本のブランドとのコラボレーションなども積極的に仕掛けていきたいと思っている。

中国でのプロモーションはどう展開していくか。

 我々のプロモーションの仕方次第で、日本のブランドの見え方が今後大きく左右されてしまうと考えている。とにかく「格好良く見せる」ということに関しては我々が得意とするところだ。とがったプロモーションとマスのマスプロモーションを組み合わせて展開していこうと考えている。派手にやるときはやる。

海外売上高をどのくらいに見積もっているか。

 現在、算定中だ。今期の商品取扱高である840億円という目標には、海外売り上げは入っていない。そこに、どれだけ上乗せできるのかはまだ未知数だ。

中国進出に先駆けて、多言語対応のグローバルサイト「ZOZOTOWN.com」も今年5月下旬に開設する。

 2011年3月期における海外向け売上高は1億円に上った。5月からのグローバルサイトでは中国語(簡体字、繁体字)、英語、韓国語に対応し、82カ国に配送できるようになる。決済手段はクレジットカード決済には対応せず、「PayPal」のみ対応する予定だ。

 大きな投資はしないが、海外におけるプロモーションも予定している。もっとも、このゾゾタウンドットコムが全体の売上高に与える影響はそれほどないと考えている。むしろ、ZOZOTOWNの商品を求める国はどこなのかを見極める、という意味合いが強い。需要を見極められれば、中国への展開と並行して別の国にも打って出ていくつもりだ。

東日本大震災による消費の冷え込みもある。海外では食品以外への風評被害も出てきている。なぜ今のタイミングなのか。

 中国市場におけるアパレル分野の風評被害は意識していない。実は、この中国進出は3月末に発表できる段取りで進めてきた。ただ、震災の影響もあり、今のタイミングに順延したという経緯がある。

 国内市場についての消費の冷え込みだが、我々の領域に関しては特に影響はないと断言していいほど、回復している。足下は震災前と同様、依然好調だ。ただ、ファッションブランドに聞くと、震災後の消費の冷え込みは多少なりともあったようだ。それも今では回復基調にあると聞いている。

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 前澤氏らが作っていく中国版ZOZOTOWNは、タオバオのプラットフォームを利用して開設する。また、タオバオが運営するECモール「淘宝商城(タオバオモール)」に、中国版ZOZOTOWNは出店もする予定だ。

 中国でZOZOTOWNのような営利目的のサイトを独自で開設するには、中国政府から「ICP経営許可証」などの許認可を取得しなければならない。「タオバオのECモール構築のプラットフォームを使うことで、取得の手間を避けつつ、中国市場での販売を始めることができる」(スタートトゥデイ)見通しだという。

 そして、中国での成功が見込めたタイミングで、本腰を入れるべくICP経営許可証の取得に動く狙いがあると思われる。運営に当たっては、ソフトバンク子会社のアリババ日本法人に全面的なサポートを受ける。

 スタートトゥデイホンコン設立と同時に同社にアリババ日本法人が5%出資し、ソフトバンクが44.9%、そしてスタートトゥデイが50.1%という出資構成となる。合弁会社の社長は未定。