ローソンの店頭に設置されているデジタルサイネージ「東京media」が3月26日から条件付きで放映を再開した。東京mediaは、東京23区内にあるローソン305店舗で展開しているもので、設置ディスプレイ面数は396面に上る(3月1日時点)。東京電力福島原子力発電所の事故による電力不足から、東京mediaは震災翌日の3月12日以降、放映を自粛していた。

放映を再開したローソンのデジタルサイネージ「東京media」

 ローソンとアサツーディ・ケイ(ADK)、NTTドコモの3社が設立した東京mediaの運営会社、クロスオーシャンメディア編成本部の三浦郁太郎氏は説明する。

 「当面4月11日まで、午前11時30分から午後1時30分までの2時間限定、2画面を設置する店舗では1画面のみ使用、ディスプレイの輝度を通常の1500ルーメンから800ルーメンに落とすなど、節電に最大限配慮した上で再開を決めた。映像の背景を白にして動画を減らしたことで、輝度を落としてもあまり暗く感じないように工夫している」

 今のところ「節電しないのはけしからん」といった類の苦情は1件も寄せられていないという。

 再開に当たっては、3月下旬になって気温の上昇とともに暖房需要が減少し、電力需給の逼迫状況が緩和されつつあることを考慮した。11時30分からの2時間という時間帯を選んだのは、「お昼休みに一旦、電力使用が下がるため」(三浦氏)。かつ、弁当を買う来店客でサイネージ前の通行量が増える時間帯であることも決め手となった。

 東京mediaの46インチディスプレイの消費電力は、同サイズの家庭用液晶テレビ1台とほぼ同程度。“電気食い虫”というほどのものではない。それでも再開には気を遣った。

 4月4日時点で、サイネージ上での一般CMは放映しておらず、放映コンテンツは、共同通信の震災関連ニュース速報、東京mediaに寄せられた震災関連の応援メッセージ、ローソンの義援金募集の案内などに限定している。 一般CMは、反応を見ながら4月12日以降に投入する予定だ。

 夏場に冷房需要が増え始めた頃、再び停止を検討する可能性があり得るが、「電力供給の状況を勘案して決める予定」(三浦氏)としている。

 デジタルサイネージは、大画面ディスプレイでの放映で目立つがゆえに、実際の使用電力以上に“節電圧力”を受けやすい。東京mediaに限らず、デジタルサイネージが夏場も放映を継続するには、ニュースや停電情報などを適宜交えることで、街行く人に「有用な情報源」と認識されることが不可欠になりそうだ。