特集「シニアこそデジタルが効く」
【第1回】60代前半のネット利用率は2001年の20代以上、感度高いデジタルシニア
【第2回】アニメ動画でサプリメントを売るライオン、説得力、納得感がカギ
【第3回】シニアのつながり志向を生かすクラブツーリズム、SNSは会員25万人

 健康食品と並ぶシニア世代の消費支出といえば「旅行」。団塊世代の退職で盛り上がるはずの市場だったが、ホテルや航空会社のネット予約や、手数料が安いネット専業旅行代理店の台頭、社員旅行や出張など法人需要の減少によって、全国に支店網を擁する大手旅行代理店の経営環境は厳しさを増している。

 そんな中、シニア客を安定的に獲得しているのがクラブツーリズムである。この会社がユニークなのは、社名のとおり顧客のクラブ活動をサポートし、趣味の講座を主催して旅行需要を作り出している点だ。

 自らの趣味と団塊消費の取材を兼ねて「デジタル一眼レフ講座」に参加した経済評論家の西村晃氏が言う。

 「受講者は60代が中心。大半がリピーターで、写真家の先生と海外撮影ツアーへ出かける顔なじみだった」

 薄利の講座を軸にして大型の旅行需要を生み出す戦略である。

 ちなみに撮影した画像はみな自宅のパソコンでプリンター出力して講評会に持ち寄り、旅行の手配はネットで済ませるデジタル派だったという。

シニア向けSNS「趣味人(しゅみーと)倶楽部」は会員25万人超

 こうしたアクティブなシニア層がサークルというコミュニティを形成していることに目をつけたディー・エヌ・エーが同社に声をかけ、2007年暮れ、両社の共同事業としてシニア向けSNS「趣味人(しゅみーと)倶楽部」を開設した。会員数は現在約25万人。ツアー旅行中や、ツアー参加者の自宅に配送する300万部超の月刊会報誌「旅の友」などで告知して着々と会員を増やしてきた。

1日平均45件のオフ会

 このSNSには7000件弱のコミュニティがあり、2011年1月は1日平均45件のオフ会が開催された。クラブツーリズムWeb旅行センターの浅妻勇支店長は、「リアルの交流が活発な会員が集っているのが特徴」と説明する。50件を超えるクラブツーリズム公式コミュニティには、趣味嗜好に合ったツアー情報を掲載することで、ツアー申し込みにつなげている。

趣味人倶楽部」では旅行、アウトドアのコミュニティが人気

60代は「いつも友人や知人とつながっている感覚が好き」という傾向が高い。電通と東京大学大学院の橋元良明教授の「全国情報行動調査」より

 電通が東京大学の橋元教授と2009年6月に実施した「全国情報行動調査」では、「いつも友人や知人とつながっている感覚が好き」という“つながり志向性”が、50代を底にして60代になると40代を超える水準まで跳ね上がることが明らかになっている。シニア層のつながりを顧客基盤とする戦略は理にかなっていると言える。

 同社のツアー申し込みに占めるネット経由の比率は15%で、うち趣味人倶楽部サイトからの申し込みは10%程度にとどまっているという。

 浅妻氏は、「国内最大級のシニアSNSとはいえ、25万人という数字には満足していない。コミュニティの盛り上がりを旅行需要につなぎきれていない部分もまだまだある。会員数の増強と、「テーマ性のある旅」の企画力を高めていきたい」と話す。

「お子様の結婚相談」を打ち出すオーネット

 「年明け、盆明け、ゴールデンウイーク明け…。この3つの休み明けに資料請求が最も多くなる」

 楽天グループで結婚情報サービスを展開するオーネットの西口敦マーケティング部長は、資料請求数の季節要因についてこう説明する。「休暇に帰省した未婚の息子・娘さんが親のプレッシャーを受けて請求する格好。親御さんが独断で請求されるケースも増えている」(西口氏)。

 現在、結婚情報サービスを利用する中心層は30代半ばの団塊ジュニアだ。その親の多くは60代前半。若い男性の“草食化”が叫ばれる昨今、親世代に訴求する方が話が早いのも一面の真実である。

 この世相に対応して、オーネットもサイトのトップページで「お子様の結婚相談」というメニューを設け、「親御様向け」の説明ページを設置。他のページよりひときわ大きいフォントサイズでサービス紹介をしている。

 昨年8月には、盆明けの商機に合わせて、社内の結婚アドバイザー151人に聞いた「なかなか結婚しない子どもが結婚したくなるテクニック」をリリース。1位「親が歳をとってきたことを感じさせる」、3位「さりげなく結婚情報サービスのパンフレットを置いておく」など、子の背中を押す親向けのアドバイスを公開し、Yahoo!ニュースにも掲載されて話題を巻き起こすことに成功した。

自治体と組んで選ばれる存在に

 西口氏が親世代に訴求するために重視しているのが「信用力」だ。一口に結婚情報サービスといっても、実態は“出会い系”事業者となんら変わらない有象無象がネット上に数多くひしめいている。そうした中でオーネットを選んでもらうには、知名度と信頼性を高めておく必要がある。

 その点、「楽天」というシニア世代でも知っている企業グループに属していることは大きな優位性であり、アピールポイントだ。同社は検索連動型広告でも、説明文で「楽天グループ」を強調している。

 信頼性獲得のために現在、同社が積極的に取り組んでいるのが、自治体との協力・連携だ。自治体が主催する結婚支援事業の受託事業者となって、結婚セミナーや交流会、結婚相談サービスを実施する。現在、本社のある東京都品川区のほか、狛江市、府中市、調布市と共同でマリッジサポート事務局を運営している。

オーネットは自治体の受託事業者となって結婚相談サービスを実施

 「区報など自治体の広報誌に案内を載せると反響が大きく、すぐに定員に達する。認知度向上と告知コストの面でもメリットが大きい」(西口氏)。ネット上で選ばれる銘柄になるには、バナー広告などネット上の露出を高めるだけが能ではない。

 貯蓄も時間的余裕も消費意欲も持ち合わせている元気な団塊の世代も、70歳を超えると徐々に意欲が低減し、行動範囲も狭まる。それでもパソコン・モバイルを通じてモノを買う習慣が定着していれば、団塊の財布をアテにできる期間を引き伸ばすことができる。今こそシニアの消費意欲をデジタルで開拓するときである。

特集「シニアこそデジタルが効く」
【第1回】60代前半のネット利用率は2001年の20代以上、感度高いデジタルシニア
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