ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長

 「今はネット、しかもソーシャルネットワークの時代。誰でも参加できて、しかも世界中の人と情報交換をできるサイトにしたい」

 ユニクロは2月17日、SNS「Facebook」などと連携した、スナップ写真の投稿キャンペーン「UNIQLOOKS(ユニクルックス)」を全世界で同時に始めた。その記者発表会で、ユニクロ親会社のファーストリテイリングの柳井正会長兼社長はUNIQLOOKSに対する期待をそう語った。

 柳井社長はソーシャルメディアの利用が広がった現状を「個人が新聞社であり放送局」と言い表す。Facebookを通じて世界各国にクチコミを広め、ユニクロのグローバルブランドの価値を高める。同時に、EC(電子商取引)サイトへ誘導して販売促進を狙う意欲的な取り組みだ。世界で一番評価されるファッションコミュニティを目指すという。

 世界一のSPA(アパレル製造小売業)を目指すユニクロは、世界の主要都市に大型店舗をオープンさせ、着々と拠点を広げてきた。昨年後半には台湾、マレーシアと成長著しいアジア地域への出店も強化している。「2014~15年には海外事業の規模が国内を上回る」(柳井会長兼社長)見通しだが、ユニクロ事業の全売上高に占める海外売上高の割合はまだ10.7%にとどまる。UNIQLOOKSは今後の成長の鍵を握る施策の1つとなる。

消費者と共創するキャンペーン

 同社は、これまでもブランディングのためにネットを積極活用してきた。「国境を超えて、際限なく情報を広げられるWebというメディアの活用は必要不可欠」(グローバルコミュニケーション部商品マーケティング&コミュニケーションチームの松沼礼リーダー)との考えからだ。

 ユニクロの服を着た女性によるダンスと時計の機能を組み合わせた「UNIQLOCK」や、ネット上に仮想行列を作り話題を広げる「UNIQLO LUCKY LINE」といった施策を展開し、高い評価を得てきた。

 しかし、UNIQLOOKSはこれらの施策と一線を画す。

 これまでのキャンペーンは、質の高いクリエーティブによりユニクロの世界観を一方的に提示するものが中心だった。UNIQLOOKSはユニクロのファンが自身の商品の着こなしを投稿して評価し合うコミュニティとなり、“生きた”ファッションカタログを作り出すことを目指す。ファンが国境を超えて集まる場所を作り共に盛り上げる戦略だ。「B to C」(消費者に向けて商品を売る)ならぬ、ソーシャルメディア時代に最適化された「B with C」(消費者と共に商品を売る)型キャンペーンへの挑戦ともいえる。

 松沼氏は「ユニクロの洋服が世界中で着られていることを示したい」と狙いを語る。ユニクロは、昨年9月から「MADE FOR ALL」を世界共通のコーポレートメッセージとして、広告などで強く打ち出している。そのメッセージには、「国籍、性別、年代、職種に関係なく、あらゆる人にとって高品質で低価格の商品を提供する」という意味が込められている。UNIQLOOKSは、MADE FOR ALLのアパレルブランドであることを伝える重責を担う。

 UNIQLOOKSは、ユニクロの服を1点以上含めたコーディネート写真をユーザーから投稿してもらう、投稿型キャンペーンだ。ユーザーが写真を投稿するには、Facebookのアカウントが必須となる。ユニクロの日本法人が投稿された写真を全て確認した後に、キャンペーンページに掲載する。

 Facebookと連携する目的は、世界へUNIQLOOKSを波及させるためだ。同企画では、サイトへの掲載が完了すると、投稿者のFacebookアカウントにある「ウォール」(掲示板)にも投稿した写真が掲載されて、投稿者のFacebook上の友達に情報が広がる。

 スナップ写真がFacebook上で広まれば、それまでユニクロに興味のなかった人に、その友達を通じてユニクロの商品を提案できる。

投稿写真から商品販売へ誘導

UNIQLOOKSのWebサイト

 自社ECサイトを展開する日本、英国などでは、UNIQLOOKSは販売促進の役割も担う。

 写真投稿時に商品名も入れてもらい、掲載写真からその商品の販売ページなどへリンクを張る。スナップ写真の投稿者が着ているユニクロの商品を買いたいと思った人をECサイトに誘導して、購入に結びつける。投稿写真が増えればそれだけ、商品ページへの誘導は強化され、強力な集客、販促ツールとなるわけだ。

 とはいえ、ユーザーにとって、自分の着こなしの写真を投稿するのは勇気がいる。ユニクロは国・地域対抗のコンテストをして、投稿のモチベーションを高める仕掛けを考えている。

 松沼氏は「一過性ではなく、長期間続けることで、コミュニティを盛り上げていく」とも言う。将来的には、集まったスナップ写真をリアル店舗にあるデジタルサイネージ(電子看板)へ表示したり、ユニクロのTシャツ専門ブランド「UT」のモデルに起用したりといった展開も視野に入れる。

 UNIQLOOKSは企業とファン、ファン同士、そしてファンと見込客をつなぐコミュニケーションの場となる可能性を秘める。そうした活動で世界中にファンが広がれば、海外事業の成長速度は一気に加速するだろう。