中国西安市にあるスポーツ用品大手ミズノの店舗が、昨年10月に尖閣諸島問題を巡る反日デモで襲撃を受けたのは記憶に新しい。過剰在庫の圧縮や、不採算店舗の統廃合など、中国事業の再構築を進める最中の出来事となった。

 ミズノは2009年夏に中国事業の見直しを決め、従来の拡大路線から1店舗当たりの収益性を高める路線へと転換した。2008年夏の北京オリンピックを商機とみて店舗数を約900まで増やしたものの、ミズノブランドが浸透せずに苦戦を強いられたのだ。

テスト販売ならタオバオよりJapaNavi

 収益性を高めるために不採算店舗を統廃合して、半分近い約500店舗まで圧縮した。中国の店舗を減らしたことで、アジア全体の2010年7~9月の売上高は前期比で9%減の40億円となった。その一方で、利益率は上向き傾向にあるという。

 同時に、ネット通販によるテストマーケティングを展開することでも収益性向上を図っている。ミズノは、中国最大のEC(電子商取引)モール「タオバオ」に加えて、日本郵政グループの郵便事業会社(日本郵便)が運営する中国向けのECモール「JapaNavi」に出店している。

 JapaNaviは、日本郵便が日本から海外への物流量を増やして収益を拡大することを狙って開設したECモールだ。現在、20社の企業が出店しており、2月には米国など英語圏への配送も始めた。現時点ではアクセスの大半は中国からで、1日当たり数万人の来訪者を数える。

 売り上げ拡大が目的なら1日数千万人が訪れるタオバオへの出店で十分とも考えられるが、ミズノがJapaNaviに出店するのには別の狙いがある。商品ニーズを調査するためのテスト販売の場として活用しているのだ。

JapaNaviに開設したミズノの公式ページ

 JapaNaviでは出店企業が公式ページを開設することで、日本国内に商品在庫を置いたままで中国に向けて販売できる。本来、中国国内で商品を販売する場合、例えテストマーケティングだとしても、流通へ出す前に中国政府による商品の審査などがあるという。ニーズが読めない商品にそこまで手間をかけるのは効率が悪い。

 JapaNavi上で販売するなら中国での審査は不要だ。ミズノは今後中国で展開を予定する商品のテスト販売のためにJapaNaviに出店しているわけだ。

 同社が現在店舗で販売しているのは、普段使いも想定して中国向けに開発したスポーツウエアなどが中心。一方、JapaNaviでは店舗には無いウオーキング専用シューズなど本格的なスポーツ用品も含めた108商品を扱う。

 今後は、中国国民の間でスポーツへの関心が一層高まる可能性が高いと同社はみる。JapaNaviでの販売データは随時、ミズノの中国法人と共有して本格展開のチャンスを探っている。スポーツ用品市場が大きく拡大するまでにJapaNavi発のヒット商品を生み出すことができれば、ミズノの中国事業は再度、拡大路線へと乗せることができるだろう。

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