「海外での売上高を、全社売り上げの3割まで増加させたい」

 コーセーの国際事業部の越智寿営業部長は、海外市場へ大きな期待を寄せる。

 その背景には国内市場の成長鈍化がある。日本国内における2009年の化粧品市場は前年比7.8%減の1兆3902億円となった(経済産業省調べ)。今後も劇的な拡大は見込みにくく、海外事業の拡大が成長には欠かせない。先行する資生堂は、海外売上高比率が41%(2010年10~12月期の連結決算)を占める一方、コーセーは1割程度にとどまる。

 「成長のポイントは中国を中心とした中華圏になる」と越智氏はみる。矢野経済研究所によれば、中国の化粧品市場は急成長を遂げており、2010年は前年比29%増の800億元(約9600億円)になったと推定される。1~2年で日本の市場に肩を並べる可能性は高い。海外市場の中でも中国市場の攻略が必須となる。

 コーセーの中国売上高は、海外全体の3分の1を占める。これを毎年20~30%増のペースで成長させることを目指す。同社は化粧の専門家が対面でカウンセリングして、肌の状態などに合わせて最適な商品を薦める販売方法に強味を持つ。中国においても日本と同様に、百貨店や化粧品専門店に設置したコーセーのコーナーを主力の販売チャネルとして展開してきた。価格帯は3000~5000円の高級品が中心だ。2012年までに、専門店への出店数を現在の405店舗から1000店舗にまで増やす計画である。

コーセー初のEC事業は中国で展開

 専門店への出店数拡大に力を注ぐコーセーだが、店舗だけでは目標の成長率は達成できない。また、中国は国土が広く、1000店舗でもカバーしきれない。そこで着目したのが、日本では展開していないEC(電子商取引)だった。

 コーセーはまず、昨年3月に中国のオークションサイト「拍拍(パイパイ)」を使って試験的な商品販売を実施した。その成果から販売が見込めると見て、5月に中国最大のECモール「淘宝網(タオバオ)」に出店を決めた。

中国のインターネットユーザーの収入構成比(CNNIC調べ)

 タオバオ店では、中国製の1000~2000円という比較的安価な商品を中心に販売している。日本製の高級品を主力とする店舗と、中国製の低価格商品を主力に展開するタオバオ店の違い。そこには、中国のネットユーザー事情が背景にある。

 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)によれば、中国のインターネットユーザーは昨年12月に4億5000万人を突破した。ところが、ネットユーザーのうち月収が10万円を超えるような層は2.9%に過ぎない。月収が3万円を下回る層が66.8%を占める。これでは店舗で販売するような高級品を販売しても、購入につながる可能性は低い。また、ネットで高級品を販売しては、カウンセリング込みでの高級品というブランド価値を損ねる恐れもある。

 こうした中国のネット事情などを踏まえて、タオバオ店ではセルフメーキャップ商品を中心に扱っている。「富裕層の多い沿岸部では、“メード・イン・ジャパン”が強いが、地方では中国製でも品質が高ければ日本製にはこだわらないという意見もある」(越智氏)。

中国ユーザーに向けたページデザイン

 タオバオ店では、春節(旧正月)の時期に合わせたページデザインに変更するなど、1~2週間でトップページのデザインを変えて、何度もサイトを訪れてもらえるようにしている。また、利用促進を目的に、正月記念の割引キャンペーンなどを積極的に展開している。

 商品詳細ページの作りでも中国のユーザーの嗜好に合うように工夫を凝らす。商品情報だけではなく、商品の特徴や使用方法、ほかの商品と組み合わせて使う場合に使用する順番といった様々な情報を掲載している。情報量は多い方が中国のユーザーからの信用度が高まるためという。

タオバオに出店するコーセーのページ http://kose.taobao.com/

 また、タオバオ店を「テストマーケティングの場」としても活用している。化粧品市場は成長段階であり、まだ成熟していない。そのため、日本国内には市場があっても、中国にはまだ浸透していないカテゴリーの商品もある。

 例えば、「ネイチャーアンドコー」というブランドの「ピュアフェイシャルソープ」という、きめ細かい泡立ちで洗顔できるせっけんがそれ。「化粧水などのスキンケア商品へのニーズは高いが、高級せっけんのような商品は、まだまだ中国ではニーズが低い」と越智氏は言う。そこで、タオバオで試験的に販売して、店頭での本格展開への手応えを探るわけだ。

 タオバオ店は開始してから1年未満のため、まだ売り上げ規模は大きくはないが、「昨年の目標はクリアした」(越智氏)。売り上げは順調に伸びているようだ。

 今後、ネットでカウンセリングをして高級品を販売するという可能性もありえなくはないと越智氏は言う。そのときには、ブランディングという意味合いも兼ねて自社サイトが必要になると考えている。そこまで投資すべきかどうか。百貨店、化粧品専門店に続き、ネットが第三の販売チャネルとなり得るか。2011年の成果を検証して、向こう3年間の展開を考えていく。

 コーセーでは企業ブランディングのためのデジタル広告も積極的に活用していく考えだ。既にデジタルサイネージを活用した広告の配信や、ブランドサイトの構築に取り組んでいる。

「雪肌精」のコーセーから総合ブランドへ

 デジタルサイネージは、ターゲット層であるOLに訴求するためにオフィスビルの中に出稿している。場所を絞ることで、「(テレビなどに比べて)安価な広告費でターゲットに情報を届けられる」(国際事業部国際企画一課の稲見卓哉氏)との狙いだ。「今後はブログでクチコミを誘発させるような施策にも取り組んでいきたい」(同氏)と意欲を見せる。

企業ブランドを強く打ち出すデザインにカウンターを刷新

 企業ブランディングに力を入れる理由として、コーセーが昨年からマーケティング戦略を転換したことが背景にある。それまでは「『雪肌精』ブランドのコーセー」というイメージを打ち出す戦略を取っていたが、昨年9月から高級ブランド「エスプリーク プレシャス」を中国でも展開し始めたことを機に、コーセーという「企業ブランド」をより強く打ち出すように方針を変えた。

 今後の売り上げ拡大には、様々なブランドのファンデーション、口紅、マスカラなど、化粧をする上で総合的にコーセーの商品を使ってもらうことが必要だ。それには、雪肌精という1ブランドではなく、コーセーという企業ブランドを訴求した方がよいという判断だ。

 今年の秋には、エスプリーク プレシャスよりもさらにワンランク上のブランドの展開を予定している。雪肌精のコーセーから、化粧品ブランドのコーセーへと中国市場でのイメージを転換して、より幅広い商品を購入してもらうために、デジタルをフル活用していく考えだ。