「近所のモスはもう売り切れてた><」「ようやく食べられた~@モスバーガー新橋二丁目店」--。ミニブログ「Twitter」上には、「塩バターチキンバーガー」を求めるツイートが頻繁に投稿されている。

 このメニューは、国内2位のバーガーチェーン「モスバーガー」を展開するモスフードサービスが昨年暮れの12月26日から開始した「アジア同時発売キャンペーン」で販売中の期間限定商品だ。2月7日まで日本・アジアの7つの国と地域の全1596店舗で投入し、「Go! Go! Asia!」の統一キャッチフレーズの下、同じテレビCMや店頭POPを使用して宣伝している。

昨年末から日本・アジア7カ国・地域で展開している「アジア同時発売キャンペーン」

 売れ行きは好調だ。同社Webサイトでは1月17日に、「予想を大幅に上回るご好評をいただき、一部店舗で終売または限定販売とさせていただいております」とアナウンスしたほど。「1日30個」など個数限定で販売する店舗でも早々に売り切れるため、食べ逃したモスバーガーファンがTwitterでまだ売っている店舗の情報を探し求めている。

 これは国内だけの現象ではない。同社海外営業部シニアリーダーの吉井靖範氏は、「台湾は日本以上のペースで売れている」と言う。

 キャンペーンの狙いは、モスバーガーがグローバルチェーンであることを国内外にアピールするほか、これを店舗単位で売上高前年比を競うイベントにすることで従業員のモチベーションおよびサービスクオリティを向上させることにある。優秀店舗のスタッフは他国の視察旅行に招待する。こうしたキャンペーンを企画し、盛況に推移していることから、アジア市場にかける期待の大きさが見て取れる。

 モスバーガーの海外店舗は、1991年に初出店した台湾が179店舗でトップ。次いで1993年進出のシンガポールが26店舗、以下、香港、タイ、インドネシア、そして昨年2月に初出店した中国は厦門(アモイ)に2店舗で計232店(2010年11月末時点)。海外売上高は約10%を占める規模に成長している。

 一方、国内の店舗数は1566店舗あった2001年3月期がピーク。ここ2年は純増に転じているが、不採算店の閉鎖やオーナー都合の閉店などで約200店減らして現在は1364店舗だ。現況の消費動向で既存店売上高を大きく伸ばしていくことはなかなか難しい。

日本はTwitter、台湾ではFacebook


 国内の経営改革の過程でテレビCM一辺倒の広告宣伝を見直し、2008年3月に立ち上げた「モスの携帯サイト」や、2009年8月に開設したTwitterアカウント(@mos_burger)など、新しいメディアを使った販促に乗り出した。

 昨年末で携帯サイトの会員は300万人に到達。昨年9月に公開したiPhoneアプリは2カ月で10万件のダウンロードがあり、iPhone利用の登録会員数は5万人を超えた。Twitterのフォロワー数も18万人に迫る勢いで、国内企業アカウントのフォロワー数ランキングでトップに立つ。販促費を減らして利益率を改善しつつ、CM削減による露出減をネット活用で乗り切った。

 モバイルやネットのクチコミなどデジタルの力で来店を喚起する手法は、海外店舗でも活用が始まっている。日本の取り組みをそのまま移転させたわけではない。吉井氏は、「現地のメディア事情に適した施策を展開するように、現地法人の考えを尊重している」と語る。

台湾で開設しているFacebookファンページ「摩斯漢堡『迷』倶楽部

 海外で店舗数最大の台湾では、Facebookのファンページ「摩斯漢堡『迷』倶楽部」を開設した。「摩斯漢堡」はモスバーガー、「」は中毒、「迷」はファンを表すので、「モスバーガー中毒ファンクラブ」といったところか。1年前の2010年1月20日、「第1段階の目標1万人!」という第一声でオープンしたファンページは、今年年明けにファン数10万人を突破した。

 台湾では、2009年下半期にFacebookが急速に普及した。キーワードごとに検索回数の増減の傾向が分かる「Googleトレンド」で台湾における「Facebook」の検索件数推移を調べると、その急増ぶりが分かる。人口が約2300万人の台湾で、2月時点のFacebook利用者は1175万人、利用率は約半数に達している。ネット利用の中心層である20~40代の大半はFacebook利用者だと言っても過言ではない状況だ。

 Facebookでは新商品を写真入りで紹介するほか、新店舗やリニューアル店舗、24時間営業店舗の案内、モスカードにたまったポイントで交換できる商品の説明、広告の印象についてアンケートのお願いなどを掲載。今回のアジア同時キャンペーンのテレビCMは動画投稿共有サイト「YouTube」にアップしてFacebook内で再生できるようにしている。また昨年10月には「MOS BLOG(モスブログ)」を開設し、瓶入りの「モス牛乳」のパッケージが台湾経済部のデザインアワードで金賞を受賞したことなど、長めの報告やレポート記事を掲載してFacebookからリンクさせている。

 1月21日には、Facebookファン数10万人突破を記念して「モスカフェ」ブランドの珈琲豆の割引クーポンを掲載し、アジアキャンペーンの集客を後押しする形になった。Facebookにはほぼ毎日のようにお知らせを投稿しており、記事1件当たり300~400件の「いいね!」、20~40件のコメントが寄せられる。

 「台湾では、日本ブランドは品質の高さと安心感で人気があり、『日式』という言葉が定着している。モスバーガーはその代表的な店として認識されている」(吉井氏)。日本企業も昨年秋口からファンページ開設が相次いでいるが、投稿に対する反響はこの水準には遠く及ばない。アジア同時発売キャンペーンで好成績を上げた背景にFacebookあり、と言えそうだ。

モバイルとソーシャルメディアでアジアに溶け込む


 吉井氏は、「アジアでは総じてモバイルの利用が活発。店舗数が一定の規模に達した国・地域からモバイルサイトやアプリの導入を検討したい。日本で取り組んできた経験が生かせる」と語る。当面、PCサイトを開設している台湾、シンガポール、香港エリアで導入が進みそうだ。

出店地域と店舗数(2010年11月末時点)

 一方、新規出店ペースは、まだ店舗数が少なく経済成長が期待できるタイ、インドネシア、中国で加速する。同社にとって中国は実は2度目の挑戦だ。1994年に上海に進出したが、合弁相手だった国際流通グループのヤオハンインターナショナルの破綻に伴い撤退した経緯がある。再上陸先は上海ではなく、足場を築いた台湾の真向かいに位置し、交流も深い福建省南部の港湾都市、アモイを選んだ。今後、福建省で約30店を出店し、浙江省、そして上海への復活をもくろむ。

 中国本土ではFacebookやTwitterの活用には制限がある。店舗数が増えるまではテレビCMも打ちにくい。それでも台湾のFacebook上のクチコミ人気を対岸のアモイに“上陸”させ、中国国内のSNSなどを通じて広めることができれば、本土でも台湾の成功体験の再現は不可能ではない。