日本郵政グループの郵便事業会社(日本郵便)が2月、米国、カナダ、英国、オーストラリアなど英語圏4カ国と韓国に向けたEC(電子商取引)モール事業を開始することが本誌取材で明らかになった。日本郵便の業績は悪化の一途をたどっており、海外向けECモールを自社で手掛けることで、そこに生じる国際配送ビジネスの需要を喚起するのが狙いだ。
英語圏向けECモールは、日本郵便の中国向けECモール「JapaNavi」の英語版を用意することで展開する。このモールにはミズノ、ヤマダ電機など20社が出店済み。昨年12月にはベネッセコーポレーションや子供服のファミリア、今年1月にはカタログハウスと新規出店も相次いでいる。英語版が始まるのと同時に、このうち複数社が英語対応する予定だ。
出店企業は日本に在庫を持ち、注文があると日本郵便の国際配送網を通じて海外へ発送する仕組み。JapaNaviは販売先を中国から、シンガポール、台湾と拡大してきたが、英語版の開設で販売量とともに、日本から海外への物流量を増やして収益につなげたい考えだ。
日本郵便の2010年度事業計画によれば、通常郵便物の取扱数は2001年度の262億通をピークに年々減少している。また、宅配便も2008年度以降、成長が鈍化しているという。日本通運との宅配統合のために設立した子会社「JPエクスプレス」を解消したことに伴う損失の傷も深く、同社の2010年度の決算の見込みは、営業損失が1050億円、純損失は540億円となっている。
収支改善急ぐ一方で、国際配送に期待寄せる

日本郵政の斎藤次郎社長は1月7日の記者会見で、経営の改善策として従業員の給与・賞与の削減にまで踏み込む考えを示した。11日には2012年度の新卒採用の取りやめを発表しており、早期の収支改善を急いでいる。
こうした厳しい台所事情があるため、新しい市場として国際配送に同社は期待を寄せている。昨年11月に小口物流で中国郵政集団と提携し、日本のネット通販を利用する中国在住者向けに、国際スピード郵便(EMS)の料金割引や、低価格の新サービスを開発していく。ヤマト運輸が中国での宅配便事業に進出するなど、競争は激しさを増しているが、中国全土への配送網を持つ中国郵政との提携は、日本郵便にとって強力な武器となる。2008年8月に開設されたJapaNaviも、国際配送拡大の一翼を担う。
なお、JapaNavi英語版モールに出店する企業は、自社で英語の商品ページを制作する必要がある。簡易な自動翻訳機能なら日本郵便も提供しているが、完全な品質を約束するものではない。JapaNaviの出店料金は初期費用が20万円で、月額費用は5万円。売り上げに対して4.5%の手数料がかかる。