最後にご紹介するトレンドは、ネットのコミュニティーに参加する人々が持つ知恵や技術を共有して、ネットで助け合う「情報の共有・交換」だ。その一例として、無料の語学学習サイト「Lang-8」を紹介しよう。
誰もが必ず1つは持つ「言語」という情報スキル。それをシェアすることで、語学学習できるのがLang-8の特徴だ。このサイトでは、習得したい言語で日記を書くことが主な学習方法となる。日記を書くと、その言語を母国語に持つほかのユーザーが、文脈や単語の間違いなどを添削してくれる(図1)。

また、ユーザーが日本人であればLang-8のマイページには、日本語を学習しようと励む外国人ユーザーが書いた日記が表示されて、逆に日記を添削してあげられる。ユーザー間のコミュニケーションを通じて、語学学習できる仕組みだ。Lang-8の会員数は約21万人で、今も毎月1万人ずつ増え続けている。1日に投稿される日記の件数は1200件以上にも上る。
顧客ターゲットがピタリ一致
ユーザー同士が言語という情報スキルを活発にシェアするLang-8のサイト上でマーケティングを展開すれば、自社の製品情報もシェアしてもらえる可能性がある。それを実践するのが、英語学習の教材を販売するロゼッタストーン・ジャパンだ。
2010年12月からLang-8と共同でキャンペーンを実施している。ロゼッタストーンの英語学習教材は、英語のレッスンが収録されたCD-ROMとヘッドセットを組み合わせたもの。パソコンから流れる音声に続いて、発声することで英語を学ぶ。
Lang-8で英語を書いて学び、ロゼッタストーンの教材でしゃべることを学ぶ。そうすることで、学習効果は一層高まる。そんなメッセージを訴求するには、英語の学習意欲が高いLang-8のユーザーは、顧客ターゲットとしてうってつけだった。
キャンペーンは、Lang-8ユーザー100人にヘッドセットをプレゼントして、ロゼッタストーンのトライアル版「トライロゼッタストーン」を試してもらうことを狙った。
その体験談をキャンペーンページからTwitterに投稿してもらい、英語学習に興味の高いLang-8ユーザーのフォロワーへの情報波及を期待した。狙い通り、先着順だったヘッドセットのプレゼントは、応募開始から9日で100人に達した。
ロゼッタストーン・ジャパンコンシューマー事業部ディレクターの鈴木知行氏は「メーカーが自社製品の良さを声高に叫んだところで、製品の魅力は伝わりにくい」と指摘する。だからこそ、英語の学習意欲が高いLang-8のユーザーを中心に、ほかのユーザーやTwitter上のフォロワーに製品の体験談をシェアしてもらう方が、魅力が伝わると考えて企画を実行したという。
ユーザー同士が情報をシェアする場に企業が顔を出し、共有したくなる情報を提供して製品の魅力を伝えていく。そうしたBwithCのマーケティングは一層重要性を増しそうだ。