アマゾン ジャパンは自社EC(電子商取引)サイト「Amazon.co.jp」上で、自社で制作した動画を活用した玩具の販促策を始めた。従来もメーカーなどから提供される動画を商品ページに掲載していたが、メーカー制作の動画は宣伝を目的として制作されたものが多い。よりシンプルに機能や利用方法を伝える動画が必要と判断。自社での動画制作に取り組み始めた。
玩具の販促から動画を導入し始めたのは、消費者の購買行動に理由がある。家電製品は、ネットで買う際にも量販店で実物を見て、比較しながら購入するケースが多い。一方、玩具はネットだけで商品比較をして、実物を見ずに購入するケースが多いという。そのため、「想像していたより大きい」「これほど大きな音がでるとは思わなかった」といったレビューがAmazon.co.jp上の商品ページに寄せられるなど、ミスマッチが起こっていた。
もちろん、以前から、画像やテキストでなるべく詳細が分かるように商品詳細ページを作り込んでいた。ただ、「玩具によっては音や光を発するものもあるが、音量や光量などは画像やテキストだけでは伝わりにくい」(ライフ&レジャー事業本部おもちゃ&ホビー事業部の金津朋幸ウェブプロデューサー)など、十分に情報提供ができているとは言えなかった。
これを防ぐために、動画が活用できると踏んだ。動画なら、どのような音が出るのか、光はどう発せられるのかなど、実際の動作が伝えられると考えられた。また、料理を楽しめる玩具など、「使い方が難しい玩具の訴求にも使えると考えた」(金津氏)。
動画は自社内でスマホで撮影
動画の制作に当たっては、事前に用意したテンプレートに沿って、スマートフォンで撮影するだけで、動画が出来上がるサービスを導入した。テンプレートは男の子向け玩具、女の子向け玩具、そして積み木などの教育向け玩具でそれぞれ15~45秒と、長さの異なる12種類を用意した。「こうした商品説明の動画をきちんと見てもらうには、1分が限界」(金津氏)と考えて、1分以内に収めた。動画制作に当たって導入したのは、動画活用支援のフレイ・スリー(東京都港区)が提供するサービス「1Roll for Business」だ。
動画はすべて自社内で制作する。主に音や光を発するような玩具や、利用方法が複雑な玩具などを中心に対象商品を選定して、サイト上の販促企画などを立案する部隊がスマートフォンを使って撮影する。撮影機器はスマートフォンではあるが、「Amazon.co.jpを訪れる人はブランドの世界観よりも、どういう風に玩具が使えるかといった情報を求めているため、スマートフォンのカメラの画質でも十分だ」と金津氏は見る。
制作した動画は商品詳細ページのほか、販促企画ページなどにも掲載する。また、Facebookページなどのソーシャルメディアでも紹介することで、広く閲覧を促している。
動画の効果測定においては、類似商品で動画の有無による購入率などを指標として設定している。動画を掲載し始めてからまだ日は浅いものの、「掲載後の反応は非常に良い。メーカーが制作した動画などと比較しても、購入率が高いなどの結果につながっている」と金津氏は言う。
そこで、今後は卸やメーカーなどにも、同様の仕組みをアマゾン ジャパンから提供して、動画制作を依頼することも検討している。そうして、自社だけでなく、取引先も巻き込みながら、動画活用をさらに推進していく方針だ。