新生児の名前ランキングも明治安田生命の案件だ。同社の生命保険加入者を対象にした「生まれ年別の名前調査」は、2017年で29回目を迎え、また生まれ年別名前ランキングは大正元年(1912年)生まれからのデータを保有しており、資料価値が高い。

明治安田生命「2017年生まれの子供の名前」
明治安田生命「2017年生まれの子供の名前」
誤差の算出式
誤差の算出式

 ただし、ランキングの見方は注意を要する。2017年生まれの男の子8300人を調査した結果、人気の名前1位は「悠真」「悠人」「陽翔」で各37人。4位の「湊」は34人。9位の「陽太」「大和」は27人だった。母数8300人からすると、1位といえども率にしてわずか0.45%。200人に1人もいない水準である。そして9位は0.33%だった。0.45%と0.33%──、なんだか誤差のように思えてくる。

 誤差の例として分かりやすいのがテレビの視聴率だ。標準誤差を求める式に当てはめると、600世帯調査から算出した視聴率10%は、±2.4%、すなわち7.6~12.4%の間で誤差が生じうる。従って、視聴率10.2%の番組Aと9.8%の番組Bは、10%の大台を挟んで明暗が分かれているようで、実は同条件で再調査すれば逆転する可能性は十分にある。一喜一憂するような差ではない。

 名前ランキングの出現率も、同様に誤差を算出できる。式に当てはめると、1位の0.45%は±0.15%で0.30~0.60%の間、9位の0.33%は±0.13%で0.20~0.46%の間。重なっている部分が多く、1位と9位でもひっくり返る可能性がある。

 ランキングを見ると、前年(2016年)まで2年連続8回目のトップという「大翔」が、2017年は18位(22人、0.27%)に。女の子の名前でも、前年まで2年連続4回目のトップの実績を持つ「葵」が2017年は14位(29人、0.36%)と大きくランクダウンした。トップクラスでも0.2~0.4%台という出現率が僅差で並ぶ名前をランキング化するとブレが出やすい。名前のバリエーションが大幅に増えたことを実感できるデータでもある。

 最後に、ユニークだった調査リリースを2例、挙げておきたい。

送料自由の設定額は「東高西低」

自由に設定してもらった送料を都道府県別にランキング
自由に設定してもらった送料を都道府県別にランキング
「#タビジョ」タグで写真を募集。ランキング企画や、公認タビジョによるお薦めスポット紹介などを展開
「#タビジョ」タグで写真を募集。ランキング企画や、公認タビジョによるお薦めスポット紹介などを展開

 一つは、ZOZOTOWNが実施した「送料自由化」の結果発表リリース。商品購入時に、送料を0~3000円の範囲で顧客が自由に設定できる「送料自由化」実験を2017年10月に行い、設定された送料の平均額と、0円を選んだ人の割合を発表した。

 中でも興味深かったのが、都道府県別の平均送料ランキングだ。一番高く指定したのは福島県(111.73円)で東北勢が上位を占めた。反対に最も安かったのは奈良県(86.05円)、次いで大阪府(88.68円)と関西勢が目立つ。これがニュース化され、送料に対する意識、関心が高まったタイミングで、ZOZOTOWNは送料一律200円を打ち出した。

 もう1つは旅行大手エイチ・アイ・エス。2015年のバレンタインシーズン、世界の絶景17カ所の写真を掲げて、プロポーズされたい場所の人気投票を実施。モルディブやタヒチといった人気どころを抑えて、星で満たされた美しい夜空を世界遺産に申請しているニュージーランドのテカポ湖が1位になった。この結果を受け、ニュージーランド航空と共同でツアー企画が実現し、人気ランキング企画が売り上げを立てるに至った。

 その後も同社は、「#タビジョ」のハッシュタグ付きで旅先での写真投稿を募り、人気投票をしたり、公認タビジョがおすすめスポットをランキング形式で紹介するなど、コンテンツを強化している。

 日本マーケティング・リサーチ協会は2017年11月、「インターネット調査品質ガイドライン」を公表した。スマートフォンからの回答を前提に、「回答所要時間は10分以内を推奨」「巨大マトリクスは使わない」「設問はシンプルに」などを挙げている。調査リリースを手がける企業担当者は、目を通しておきたい。

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