「オムニチャネル推進」を大々的に掲げたが、その後取り組みが進んでいる様子がうかがえない──。実店舗を持つ小売業で、オムニチャネルが掛け声倒れになっているケースが散見される。そんな中、着実にオムニチャネル化を進めている1社がアディダスジャパンだ。
同社は2017年10月、自社EC(電子商取引)サイト「アディダス オンラインショップ」と「リーボック オンラインショップ」で、注文商品の店頭取り置き・決済サービス「CLICK & COLLECT pay at store」を開始した。また、EC購入商品の返品を店舗で受け付ける「CLICK & COLLECT return at store」も導入した。直営店81店舗のうち、69店舗で受け付けている。順次拡大し、全店で対応していく。
EC利用者の手順は次の通り。アディダスのECサイトで商品を選んで「カートに入れる」「購入手続きへ進む」をタップすると、「配送する」と並んで「アディダス店舗で受け取る」タブがあり、タップすると、その商品の店頭在庫がある店舗が一覧表示される。その中から受け取りに行きたい店舗を選び、支払い方法として「受取時店頭支払い」を選択する。あとは商品の準備ができた旨の通知が届き次第、店舗に足を運ぶ流れだ。
プロジェクトを指揮した同社Direct Consumer eコマース シニアディレクターのジェシー・スティーグ氏は、「今や店舗売り上げの95%は、ネットの情報収集が起点となって発生している。ネットと店舗を行き来するオムニ化した顧客の利便性、満足度を高めるため、カスタマージャーニーマップを見直しながら実店舗とECのシームレス化、サービスの拡充を進める必要があった」とプロジェクトの狙いを語る。
クロスチームを結成して議論
同社のオムニチャネルの取り組みで特徴的なのが、ECと店舗を別々の縦割り組織とせず、クロスファンクショナルチームを組んで議論していることだ。EC担当とストア担当がDirect to Consumer部門下でワンチームとなり、KPI(重要業績指標)を共有する。
店舗受け取りなどによって増えるスタッフの負荷について双方が理解し、軽減する知恵を出し合い、マニュアル化してトレーニングすることで、開始当初からスムーズにサービスを提供している。ECと店舗をまたぐ売り上げの計上、評価についても双方が議論し、合意を得ている。
店舗側のオペーレーションをリードする同社リテール-ストアオペレーションズ アドミニストレーションマネージャーの和田康氏は、「価格が高めの商品で、店頭支払いがよく利用されている」と手応えを感じている。全社売り上げの拡大を最終目標として、セクション間の相互理解を進める横断的なチーム作りが、オムニチャネルを進める上では重要と言えそうだ。