【2】CRM:買い忘れ防止を訴求、離脱率は半減

 LINEビジネスコネクトを利用して既存の顧客データベースと接続することで、LINE公式アカウントではできなかった、性別や年代ごとのメッセージの出し分けが可能になる。しかし、それが必ずしも効果的とは限らない。

 商業施設運営のルミネはLINEビジネスコネクトを活用する一社。導入当初はどう活用するのが効果的か、さまざまな手法でメッセージを配信した。例えば、女性に限定したメッセージ配信などにも取り組んだ。ただ、こうした出し分けによる効果は芳しいとは言えなかったという。

 その理由をEコマース事業部の石津美乃里氏はこう分析する。「受け手からすれば、そのメッセージが自分宛に出し分けられているかどうかは分からない。結果的には通常の配信に加え、通数が増えたと感じてしまう」。それは、むしろ体験としてマイナスになっている可能性もあった。

ルミネはECサイト「アイルミネ」上でお気に入り商品に“変化”があったら、LINE公式アカウントを通じてメッセージを配信する
ルミネはECサイト「アイルミネ」上でお気に入り商品に“変化”があったら、LINE公式アカウントを通じてメッセージを配信する

 そこで現在は、顧客の行動に合わせて、一人ひとりにメッセージを出し分けている。具体的にはルミネのECサイト「アイルミネ」上でお気に入りに追加した商品が残り1点になったり、価格が下がったりしたときに、LINEとルミネの会員IDを連携している顧客に対して、LINE公式アカウントを通じて自動的にメッセージを配信し、知らせている。顧客の行動を起点とすることで顧客が望む情報の発信につながる。

 また、こうしたアラートはLINEとの相性も良い。LINEがコミュニケーションツールの中心となっている顧客の多くは、メールの閲覧を後回しにしがち。せっかくメールで再入荷の通知を受け取っても、確認するころには売り切れているといった事態も起きやすい。一方、LINEであれば、すぐに確認してもらえる。実際、LINE公式アカウントのメッセージは配信後1分以内に訪問者が急増するのに対し、メルマガはなだらかにアクセスが増えるという。

 そのため、緊急性の高いメッセージであるほどLINEはその効力を発揮する。ルミネでは、顧客行動を起点としたメッセージを配信した場合、同じ内容であればメールよりもLINEのメッセージのほうが、購入率は2倍高い成果につながっている。

 野菜の通販サイト「Oisix」を運営するオイシックスも、緊急性の高いメッセージを配信する目的で、定期宅配サービス「おいしっくすくらぶ」を利用する既存顧客に絞り、LINEビジネスコネクトを利用している。

継続率向上を狙ったオイシックス

 おいしっくすくらぶは、毎週木曜日に、希望に合わせた食材の詰め合わせ商品が用意されて、メールで案内が届く。注文の締切日までなら食材の種類や個数を自由に変更できるが、変更を忘れると最初に用意された商品がそのまま届く。この「注文忘れ」が最も顧客体験を損ねてしまう。さらに解約時のアンケートの結果から、注文忘れが解約の1つの要因となっていることも分かっていた。つまり、注文忘れを防止すれば、継続率が高められると考えられた。その手段として着目したのがLINEビジネスコネクトだ。

 導入するうえで懸念されたのは、既存の顧客の何割がOisixの会員IDとLINEを接続してくれるかどうかだ。接続数が増えなければ、個別のメッセージを配信しても大きな効果は見込みにくい。ところがふたを開けてみれば、「想定以上に接続する人が多かった。注文忘れを防ぐために、LINE経由でメッセージを受け取りたいというニーズが高かった」とCMO(最高マーケティング責任者)の西井敏恭氏は説明する。

 「とりわけ、過去に注文忘れを経験している顧客ほど率先して接続している」(EC事業本部ユーザー・エクスペリエンス室の白石夏輝室長)というから、LINEが緊急性の高いメッセージの受け取り手段としていかに重宝されているかがうかがえる。現在、おいしっくすくらぶの会員約12万人の半数が、OisixのIDとLINEを接続しているという。

 LINEと接続している会員には、注文の締め切りの1日前に、まだ注文を確定していない場合にLINE経由でその旨を告知する。LINEビジネスコネクト導入後は継続率が1.2倍に増加。R O I(投下資本利益率)は、LINEビジネスコネクトにかける予算と同額を新規顧客獲得に投下した場合と比較して、約2倍と大きな成果につながっている。

 オイシックスは次なる一手として、LINE Ads PlatformとLINEの機能「プロフィール+」を連携した顧客獲得施策の実行に意欲を見せる。プロフィール+とは、LINE利用者があらかじめLINE上で氏名や住所といった情報を登録しておくことで、ECサイトなどでの会員登録時に入力の手間を省けるもの。つまり、このプロフィール+と連携して、広告からLINE上で会員登録まで完了できるようにして、最初からLINEで接続された会員を獲得しようというわけだ。ただ、プロフィール+は2016年10月に提供が始まったばかり。「登録者数はそれほど多くない」(LINEの田端氏)のが実情だ。今後、オイシックスはプロフィール+の利用者の拡大など頃合いを見計らって取り組んでいく。

 とはいえ、マーケティングのすべてをLINEに委ねるべきではないだろう。Webサービスは栄枯盛衰を繰り返してきた。日本においても、この10年ほどで「mixi」「Twitter」「Facebook」と消費者のコミュニケーションの場は移り変わってきた。LINEといえども盤石とは言い切れない。オイシックスの白石氏は、「共存ではあるものの、やはり優先順位はLINEより自社アプリ」と言う。そのバランスを見極めながら、LINEの持つ価値を最大限に引き出す手腕が求められるだろう。