サントリーがそんな不人気カテゴリーを、読ませるコンテンツに一変させた。2015年5月、同社の環境活動である「天然水の森」保全活動の認知拡大を目的に、特設サイト「サントリー天然水の森 人類以外採用」をオープンした。
採用サイトの体裁で、熊や鷹、野ウサギ、ミツバチからミミズ、シイタケまで、森にすむ動植物を“先輩社員”に見立てて、その1日を紹介している。天然水の森活動を率いる同社エコ戦略部チーフスペシャリストの山田健氏がサイト制作の会合に参加してレクチャーしたため、動植物の役割の記述はユーモアを交えながらも分かりやすく、勉強になる。
企画制作にはカヤック(鎌倉市)が加わった。「ミミズミチコ」と命名したミミズの先輩社員には、タレントの清水ミチコさんがTwitterで「何これ!ほぼ私の1日と同じ」と反応し、認知が上がった。Facebookでもシェア数は2万件を超える。
「水と生きる」を企業メッセージに掲げるサントリーは、2003年から森林の保全活動を続けてきた。その規模、13都府県18カ所で8000ヘクタール。企業ブランド強化のため、同社は2014年からこの保全活動の宣伝に注力している。テレビCMでは、缶コーヒー「BOSS」の広告塔である宇宙人ジョーンズを起用。そしてCMが届かない層に向けて作ったのがこの人類以外採用、というわけだ。
企業メッセージから正しく企業名を想起できる人の割合をランキングする「企業メッセージ調査」(日経BPコンサルティング)で、サントリーの「水と生きる」は前年までの15位前後から2015年は9位にジャンプアップした。上位はCMのサウンドロゴになっているメッセージが大半なため、サントリーの強さが際立つ。保全活動のアピールは、ミネラルウォーター「サントリー天然水」の想起にも貢献するだろう。本気のCSR活動の宣伝は、予算以上のリターンをもたらしそうだ。