テレビCMの出稿量とデジタル広告の出稿量とを一括把握できる新しい指標を日本アドバタイザーズ協会(東京都中央区、JAA)が開発していることが分かった。
まだ組織内で検討が続いている段階だが、内部では「テレビ・デジタル共通指標」と呼んでいる。JAAに加盟するメーカーや総合スーパー、ドラッグストアといった会員企業には、2018年1月29日にセミナーを開催して、正式に詳細を説明する予定だ。
棚割りにデジタルは考慮されず
JAAはこの新指標を、消費財メーカーが流通企業などと、新商品の取引量や店舗の棚割りについて商談する際の判断材料として使ってもらうことを想定している。現状、こうした商談ではテレビCMの出稿量を示すGRP(延べ視聴率)が、ほぼ唯一の指標となっている。その多寡だけで取引量が決まってしまう現実がある。
しかし若年層を中心に情報接触チャネルがテレビからSNSなどにシフト。新商品のプロモーションでテレビとネットとを組み合わせて設計、実施することはもはや珍しくない。
「デジタル施策の中身や量が、店舗への来店や商品の売れ行きを左右することもある時代なのに、デジタルがほとんど考慮されない状態で良いのか。そうした課題意識から、JAAとして対策を取ることにした」。新指標作成の責任者である小出誠デジタルメディア委員会委員長(資生堂ジャパンコミュニケーション統括部長)は取り組みの背景をそう語る。
では、この新指標とは具体的にはどのようなものか。その特徴は2つある。1つは「何人に、何回表示するか」というデジタル広告で使われる“ものさし”で、テレビCMのGRPを換算。デジタル広告の出稿量と合算することだ。既に調査会社ビデオリサーチの協力で都道府県別の換算表の作成を進めている。この換算表を使うと、例えば500GPRのテレビCMを出稿すると関東では◯人に◯回当たり、関西では×人に×回当たるというように算出できる。
もう1つは、対象にするデジタル広告を「YouTube」や「Instagram」「LINE」などで展開するネット動画広告に絞り、バナーやテキスト型の広告は含まないことだ。ネット動画広告の「尺」も考慮しない。6秒であれ、60秒であれ、動画が何人に何回当たるかのみをカウントする。ビューアビリティーも当面は考慮しない方針だ。新指標に関する議論をできるだけシンプルにして、流通企業などに受け入れてもらいやすくする狙いがある。
JAAは新指標への理解を進めるため大手総合スーパーなどと、既に、内々に交渉。デジタル広告をきちんと評価してつくった棚割りを実施し、それが売り上げに結びつくという実例を早期につくろうとしている。「デジタルを勘案したほうが効果的という理解が広がれば、中堅の流通や地方の企業などにも受け入れてもらいやすくなる」(小出氏)という思惑がある。早ければ2018年春実施の夏・秋向けの商談から、広く利用してもらいたい考えだ。